創作小説屋

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ベベアンの扉(1/22)

2006年09月24日 00時17分42秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
(ずいぶん変わったな)
 六年ぶり―中学校一年生の時に引っ越して以来―に見る生まれ故郷は、競技場ができて活気づいてきた隣町に影響されてか、田畑の数が劇的に減少し、駅前に大型スーパーまでできていた。
 生まれ育った家までの道のりも違う町かと錯覚するほど変わっている。似たようなマンションや家が所狭しと立ち並んでいる。
「養鶏場がない!」
 思わず声をあげた。小学校のころよく買いに行かされていた古臭い養鶏場は、洒落たアパートに変身していた。
「ベベアンの木もなくなってる……」
 ふと小学生のころの思い出の一つがよみがえってきた。
 それは母に頼まれ養鶏場に卵を買いにいった帰り道のことだった。
 養鶏場の周りはすべてキャベツ畑なのだが、その中にすっくと柿の木が一本たっていた。道に程近いところにあるため、熟れた柿が道に落ちて悪臭を放っていた。
 その柿の木に人が登っていた。脱色した髪に太いズボンをはいた、いわゆる『不良』と呼ばれる外見をした男子高校生だった。ぼんやりとしていて視線が定まっていない。柿の枝に腰をかけ足をぶらぶらしている。
 私は足早にその前を通りすぎようとした。が、いきなり柿を足元に投げつけられ、驚いてそちらを見上げた。
 男と目が合った。充血した目だった。
 突然、男が叫んだ。
「ベベアン! ベベアン!」
 そして……男は忽然と姿を消した。
 周りはキャベツ畑で隠れるところはどこにもない。本当に消えてしまったのだ。
 投げつけられつぶれた柿に小さな虫がたかりはじめたころ、ようやく我に返って帰路へとついた。
 このときの話は誰にもしていない。しても信じてもらえないと思ったのだ。


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更新していないのに見に来てくださった方々、本当にありがとうございます。
そして本当に申し訳ありません。
申し訳ないので、今書いている話の初めだけ載せさせていただきました。
原稿用紙40枚分くらいの話になる予定で、現在20枚目まで書き終わっています。
ですので、予定としては一週間後にはアップ始められるはず・・・。
更新が遅くなってしまって、申し訳ありません。
今後ともお見捨てなきようよろしくお願いいたします。

コメント (4)
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