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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 ・目次・人物紹介・あらすじ

2017年02月18日 00時00分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘
(2016年11月3日に書いた記事ですが、カテゴリーで「嘘の嘘の、嘘」のはじめに表示させるために2017年2月18日に投稿日を操作しました)

目次

1(泉視点)
2(浩介視点)
3-1(侑奈視点)
3-2(侑奈視点)
4-1(浩介視点)
4-2(浩介視点)
5-1(諒視点)
5-2(諒視点)
5-3(諒視点)
6(浩介視点)
7(泉視点)
8-1(浩介視点)
8-2(浩介視点)
8-3(浩介視点)
9(侑奈視点)
10(浩介視点)
11-1(諒視点)
11-2(諒視点)
12-1(浩介視点)
12-2(浩介視点)
12-3(浩介視点)
13-1(侑奈視点)
13-2(侑奈視点)
13-3(侑奈視点)
14-1(泉視点)
14-2(泉視点)
14-3(泉視点)
14-4(泉視点)
14-5(泉視点)
15-1(浩介視点)
15-2(浩介視点)
16-1(諒視点)
16-2(諒視点)
17(浩介視点)
18-1(泉視点)
18-2(泉視点)
18-3(泉視点)
18-4(泉視点)
18-5(泉視点)
18-6(泉視点)
19-1(侑奈視点)
19-2(侑奈視点)
19-3(侑奈視点)
20(浩介視点)
21-1(諒視点)
21-2(諒視点
22(浩介視点)・完



人物紹介・あらすじ


桜井浩介(さくらいこうすけ)
26歳。身長177cm。高校教師。担当世界史。子供向け日本語教室のボランティアも続けている。
表は明るいが、裏は病んでいて、慶に対する独占欲は相当なもの。母親の束縛に苦しんでいる。


渋谷慶(しぶやけい)
26歳。身長164cm。研修医2年目。浩介の親友兼恋人。
道行く人が振り返るほどの美形。芸能人ばりのオーラの持ち主。だけど本人に自覚ナシ。
可憐な容姿に反して中身は男らしく、口が悪く手も足もすぐ出る。


一之瀬あかね(いちのせあかね)
26歳。身長174cm。中学校教師。浩介の友人。
人目を引く超美人。同性愛者。女関係はかなり派手。
大学の時から、浩介の両親の前では、浩介の恋人のふりをしている。
(『自由への道』では名字「木村」でしたが、大学卒業と同時に親が離婚し「一之瀬」になりました)

 
✳年齢は4月初めのもの。慶はすぐに27になります。


高校二年生の冬、無事に両想いになり付き合いはじめた慶と浩介。
大学時代、浩介の母親とイザコザがあり、浩介の両親の前では、表向きは別れたことになっている。

慶の仕事が忙し過ぎて、なかなかゆっくりは会えないけれど、会えた時にはラブラブ凝縮している日々を送っていた。そんな中、一本の電話が……


今から15年くらい前。慶達が27歳(若い!)になる年のお話です。
浩介視点を軸に、浩介の教え子である高校二年生の泉・侑奈・諒を加え、計4人の視点でお送りする予定です。


泉(いずみ)君
身長174cm。顔、かわいい猿系。クラスのマスコット的存在。兄1人姉2人妹1人、祖父母も同居の大家族育ち。しし座O型。


侑奈(ゆうな)ちゃん
身長168cm。母親がアメリカ人で、小1~小4までアメリカで暮らしていたため、英語ペラペラ。ハーフ美少女。忙しい父親と二人暮らし。


諒(りょう)君
身長185cm。涼しげなイケメン(……あ、当時イケメンって言葉ないか……)。大人っぽいモテモテ男子。共働きの両親と三人暮らし。お手伝いさんがいる。


-------------------------------


お読みくださりありがとうございました!

とうとう書きます。浩介の暗黒時代。でもあまり暗くはしないでなるべく明るく、サクッと終わらせる予定です。

泉君達は、昔ノートに書いていた時代からぼんやりとは存在していたので、こうして書くことになるとは……と感無量です。

本日、朝7時21分からはじまる本編「嘘の嘘の、嘘」どうぞよろしくお願いいたします!


-------------------------------


更新していないのにも関わらず、クリックしてくださった方、見にきてくださった方、本当に本当にありがとうございます!皆様の優しさに励まされ、新作に取りかかることができました。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 22(浩介視点)・完

2017年02月17日 11時26分25秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 2月下旬。ライトが出場する地域対抗のバレーボール大会を見にいった。

 65歳以下はアタック禁止、という変なルールがあるため、まだ17歳のライトが得点を決めるということはほぼなかったけれど、よく動いてボールを拾いまくり、キレイなトスを上げて点数獲得につなぎ……とにかく大活躍でチームを優勝に導いたため、文句なしでMVPに選ばれた。

「慶君のおかげだよーありがとー」
「いや、お前が頑張ったからだよ」

 抱きついてきたライトを、珍しく押し返さずに、ポンポンと背中を叩いてあげている慶。ちょっとモヤッとするけれども、ライトが慶の鬼の特訓に耐えて頑張ったのは事実だから我慢我慢……。

「渋谷さんのおかげって?」
「なんか相当しごかれたって言ってたぞ」
「え、渋谷さんってバレー部だったんですか?」

 同じく応援にきていた、泉優真君・高瀬諒君カップルに聞かれ、「ううん」と首を振る。

「元々はバスケ部なんだけど、スポーツ全般なんでも得意なんだよ。高校の時もバレー部に間違えられるくらいバレーも上手だった」
「へえ……」

 運動に縁なさそうな顔してるのに意外。
 背小さいのにね。

 コソコソと言っている二人の声が、慶の耳に入らないことを祈るばかりだ……

「これで心置きなく出発できるよー」
「おお。頑張れよ」

 ライトが今度は慶の手をぎゅーぎゅー掴んでいるので、さすがに我慢の限界で二人の間に割って入る。

「ライト、出発はいつ?」
「明後日!月曜日だし、見送りは無しで大丈夫だよ?」

 ニコニコのライト。その吹っ切れたような表情にホッとする。



 昨年の11月、ライトは父親に会うために渡米した。

「10年以上ぶりに会ったのに、全然懐かしくなかったんだよねー」

 一ヶ月後、帰国してすぐに報告にきてくれたライトは、嬉しそうに笑って言った。

「新しい奥さん、父ちゃんよりも年上のデップリ太ったオバサンでさー、なんかやたら陽気な人で」
「へえ」
「会った途端に『My sun!』とか言ってギューギューしてきてさー。えーオレ、オバサンの息子じゃないしー!ってメチャメチャ引いたー」

 そう言いながらも、顔は笑ったままだ。

「それで父ちゃん、一緒に住もうって言ってるんだよねえ」
「アメリカに?」
「うん。子供いないらしくて、それでってのもあるみたい。でも、ねえ? ほらおれ、2月のバレーボール大会も出なくちゃいけないしね?」
「…………」

 せっかく母親の再婚相手ともうまくいって、一緒に暮らしはじめたところだったのだ。
 でも、アメリカでの出来事を話すライトはいまだかつてないほど楽しそうで……。本当はアメリカで暮らしたいのではないか、という感じがする。
 父親ともすっかり意気投合したらしい。いまだに父とは恐怖心からろくに話もできないおれとは大違いだ。


 日本の母親の元に残るか、アメリカの父親のところに行くか。ライトの心は揺れ動いているようだ。でも、オレが言ってあげられることは一つだけ。

「誰か、じゃなくて、自分がどうしたいか、で決めなよ?」
「うん………」

 珍しく真面目な顔をして肯いていたライトだったけれども……


 冬休みが明けてから、ライトは「決めたよ!」と、ケロリと言ってきた。

「失恋したから、アメリカに行くことにしたよ!」
「…………え?」

 一緒に話を聞いていた慶も、「はあ?」と眉を寄せた。

「なんだそりゃ?」
「え!?知らないの!?ユーナちゃん、泉君のお兄さんと付き合うことになったんだよ!オレがアメリカに行ってる間に、急接近したらしくてさー、いやーもー超ショック!」
「…………」

 全然ショックを受けているようには見えない。

「ライト……」

 ようは、アメリカ行きの理由を「失恋」だと周りに思わせたい、ということだ。父を選んだ、ではなく、失恋したから日本にいたくないのだと……。残される母親のことを思っての、無理矢理な理由付けだ。

(優しいな……ライト)

「でね、二人にお願いがあるんだけど」

 パンっと手を合わせたライトが言ったことは、「バレーボールの練習」と「英語とスワヒリ語の練習」だった。

『スワヒリ語は、おじいちゃんおばあちゃんに会いに行く時のためにね』

 そうスワヒリ語で言って笑ったライトの瞳からは、以前のような鬱屈した光はまったく感じられず……

「母ちゃんと日村さんがね、いつでも帰っておいでって言ってくれたんだよ」

 その漆黒の瞳はキラキラしている。

「だからオレ、行ってくるよ」
「……うん」

 帰る場所がある。行く場所がある。それは人に勇気をくれる。

 おれは……おれには、帰る場所はない。


***



 その日の夜、慶がうちに泊まりにきてくれた。翌日の研修会の会場がうちからの方が近いらしい。

「もー! お前しつこい! さっさとしろ!」
「………」

 最近、どうしても前戯が長くなる。慶の体中に唇を落として、慶のすべてにしるしをつけたくなるのだ。慶のことを閉じ込めておきたい、自分だけのものにしたい、という欲求の現れなのかもしれない。でも、そんな暗いおれの欲求なんか知らない慶は、ムードも何もない言い方でその先を求めてくる。

「だいたいなあ、おれ明日研修会なんだから、さっさと寝ないと、居眠り……っ、あ…んっ」
「………」

 慶を口に含めると、文句を言う声に喘ぎ声が混ざりはじめた。口で扱きあげながら、指での侵入をはじめる。

「バカ、浩……っ、そんな……、んん」
「…………」

 感度よく声をあげる慶……。今、この瞬間、この人を支配しているのはおれだ、と思える。

「浩……っ、指じゃなくて……、んっ」

 要望に応える形で一気に貫くと、慶がぎゅうっとしがみついてきた。

「浩介……っ」
 背中に立てられた爪の痛み。慶の中に入りこんで一つになる……。

「慶……」
 この瞬間だけは、おれだけのものだ、と思える。


***


(ホント……綺麗な顔してるな……)

 寝ている慶の頬をそっと撫でる。白い肌。スッとした鼻梁。小さめの口。長めの睫毛。完璧な美貌。このまま閉じ込めて、どこにも行かせたくない……

(……なんて、できるわけがない)

 そんなことは分かっている。医者になるという夢に向かって頑張っている慶。それを応援したい気持ちに嘘はない。嘘はないけれど……

(おれは……)

 ふいに、今日のライトの様子が目に浮かんできた。
 バレーボール大会は夕方に終わり、その後、ライトは祝勝会があるから、と、チームメートのおじさん達と連れだって行ってしまった。すっかり地域の方にも可愛がられているようだ。新しい家族とも、ずっと前からの家族のように仲が良くて……

「浩介先生、ありがとうございました」

 嬉しそうに、ライトの母がおれにお礼を言ってくれた。

「先生のおかげで、ライト、心を決められたって」
「いえ、そんな。僕は何も……」

 それはおれなんかのおかげじゃなくて、ライト自身が決めた道。そしてそれを信じて支えてくれるお母さんのおかげ……

「あっちで高校に通うって張り切ってて。侑奈ちゃんより可愛い女の子ゲットするんだって」
「それは難しいなー」

 横で聞いていた泉君が、ハハハッと笑った。

「まず、ユーナより可愛い女の子なんて、そうそういないし!」
「それは優真の好みの話でしょ」

 ムッとしたように言った高瀬君に、「あ」とライトの母が手を打つ。

「そうだ。侑奈ちゃんの彼って、泉君のお兄さんなんだよね?」
「そうそう。泉兄弟はあの手の顔が好きって話です」

「あらー、じゃあ、泉弟君もお兄さんに侑奈ちゃんを取られちゃったってことだ?」
「いやいや」

 冷やかすように言ったライト母に、泉君は楽しそうに手を振ってから、ぐっと高瀬君の腰を引き寄せた。

「オレには後にも先にも諒しかいないから」
「え」

 きょとんとしたライト母。パッと顔を赤らめた高瀬君。

「え、そうなの?」
「そうだよ?」
「え、ホントに?」
「うん。ホントに」

 ニコニコで肯く泉君。

「ライトもユーナより可愛い女の子、とか言ってないで、ちゃんと好きな子ができるといいな」
「………そう、ね。うん、そうだね……」

 ライト母は、自分を納得させるように、しばらくうんうん言っていたけれども、

「みんな、幸せにならないとね」

 そう結論つけるように言って、ふわりとほほ笑んだ。


「………」

 母の顔だな、と思う。子供を見守ってくれる母。意思を尊重してくれる母。おれの母親とは大違いだ。


『今からでも遅くないから弁護士の資格を取りなさい』

 頭に蘇る、母の言葉……
 正月に実家に行った際にも、くどくどといつもと同じ話をされた。

『勉強する時間がないというなら、先生なんかやめてうちに戻ってきなさい。あなた一人養うくらい出来るんだから』
『あなたには先生なんて向いてないわ。中学にまともに通えてない子が先生なんて無理に決まってるでしょう?』
『あの頃、私がどれだけ苦労したか……毎日勉強教えてあげて、テストの時は学校まで送ってあげて……覚えてないの?』
『あなたのためを思って、毎日毎日……』

 言われる度に、昇華できているはずの小学校中学校時代の黒い記憶がよみがえってきてしまう。クラスメートに罵詈雑言をあびせられ、腹とか太腿とか目立たないところを集中的に殴られたり、モノを投げつけられたり……家に帰れば、母に部屋に閉じ込められて、勉強させられて……


『お前は本当にできそこないだな』

 登校拒否を起こしたおれの元に面談にきた担任の先生が帰った直後、おれに向かって吐き捨てるように言った父の刃のような言葉は、今でもおれの胸に刺さったままで……


 二度と、あの場所には行きたくない。あの人達には会いたくない。でも行かなければ、何をされるか分からない……だからおれは、小さく小さくなって、嵐が過ぎるのをただ耐える……


(帰る場所があるから、旅立てる……)

 そんなライトを羨ましく思う。おれには帰る場所はない。慶が帰る場所だと、思えていた時期もあったけれど、それは違う。

(慶には自分の場所がある)

 そこはおれがいる場所ではない……




 翌朝、まどろみの中で、慶が準備している気配を感じた。でも、目を開けることができなかった。出て行く慶の後ろ姿を見送るのは辛い……ということもあるけれど、昨晩涙が止まらなかったので、おそらく目が腫れているからだ。こんな顔、慶に見せるわけにはいかない。

「じゃあ、行ってくる」
「………」

 枕元で聞こえる慶の声にも気が付かないふりをする。仕事に行く恋人を見送ることもしないなんて最低だ。

 しばらくして、ドアが開く音、鍵が閉まる音がした。部屋の中が静まり返る……

「………」

 天井を見上げ、大きくため息をつく。

(いってらっしゃいってキスをして、慶が恥ずかしそうに笑って……って、どうしてそういうことができないかなあ、おれ……)

 でも、笑顔で見送る演技をするには、精神的余裕がなさすぎて……と、ますます凹みながら天井をボーっと眺めて……数分後のことだった。

「!」
 いきなり鍵が開く音がして、慌ててまた横を向く。忘れ物だろうか?

 ガサガサと人が入ってくる音がする。それから、なぜか手を洗う音、うがいをする音、カチャカチャとベルトを外すような音……

「????」
 我慢できずにそちらを向くと……慶がスーツから部屋着に着替えているところだった。

「……慶?」
「あー……さみー……」

 慶は着替え終わると、布団の中に入ってきて、おれの腕の中にすっぽりと収まった。

「外、結構寒いぞ」
「??? 慶? 今日研修会……」
「あー」

 慶はぐりぐりとおれに抱きついてきながら、ボソッといった。

「サボりだサボり」
「え?!」

 サボりだなんて、そんなこと初めて……っ

「どうして……っ」
「あー………」

 慶は、うーん……と言いながら、おれの目にそっと触れてきた。そしてジッと見つめてくる……

「あ………」
 もしかして、おれの目が腫れてることに気が付いて……。
 そんなのダメだ。慶の迷惑になることだけは絶対したくなかったのに……っ

「あの、慶……っ」
「別にどうもこうもねえよ」

 慶はおれの言葉を遮ってふっと笑うと、

「お前と一緒にいたかっただけだ。なんか文句あるか?」
「………っ」

 慶の優しい声……

「たまには嘘ついたっていいだろ」
「慶……」

 たまらなくて、ぎゅっと抱きしめる。また、涙が出てきてしまう。

 慶が、いてくれる……

「慶……」
「ん」

 指で涙を拭ってくれ、頬を撫でてくれる慶。

「おれ今日、腹の調子が悪いことにしたから、うちから一歩も出ないからな」
「うん」
「外、出歩いて誰かに会ったらマズイからな」
「うん」

 こつんとオデコを合わせる。

「ずっとベッドの中にいるか」
「うん」

 そっと唇を重ねる。

 慶と一緒にいたい。慶を離したくない。どこにも行ってほしくない。おれだけを見ていてほしい。
 そんな本音、奥に奥にしまいこんで、全然大丈夫。おれは慶のこと応援してるよ。忙しいことも理解してるよ。って顔をしないといけないけど。

「慶……」
「ん」

 今日だけは、許して。本当の顔させて。

「慶、ずっと一緒にいて?」

 明日からはちゃんと、嘘、つくから。




---


お読みくださりありがとうございました!

「嘘の嘘の、嘘」終了でございます。最終回なのに安定の暗さの浩介!
作中2002年2月24日(日)。今からちょうど15年ほど前のお話でした。
この約半年後のお話が「その瞳に*R18」になります。

「その瞳に」の後の話も書きたいし、慶たちの同級生溝部君の恋物語も書きたいし、泉×諒の番外編も書きたいし、書きたいものは、まだまだまだたくさんあるのですが、諸々あり、しばしお休みしようと思います。

期限を決めないとダラダラしてしまうので、とりあえず3月1日には必ず何かしらアップします。
……と書いておけば自分を追い込めるので書いておきまーす^^

gooブログには、どのページを何人の方が読みにきてくださっているということを見られる機能がありまして。
それを見る度に、わー私以外でも読んでくださる方が!とものすごい感動しております。
私の中にしかいなかった彼らを知ってくださる方がいらっしゃる……なんて幸せ。なんて喜び。本当にありがとうございます!

私の中では彼らはリアルに存在しているもので、先日も慶実家→浩介実家のサイクリングロードを自転車で走りつつ、あー彼らは高校生の時にここの川べりに座ってたんだなーと一人ニヤニヤしている怪しい人と化しておりました。

なんて話はおいておいて。

「嘘の嘘の、嘘」お付き合いくださいましてありがとうございました!
今後とも「風のゆくえには」シリーズよろしくお願いいたします!

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
よろしければ、次回3月1日に、どうぞお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 21-2(諒視点)

2017年02月15日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


*今回R18です。具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*



 彼が最後までしてくれないことを、ずっと気にしていたオレに、侑奈がとんでもない情報をくれた。

「泉、諒がエッチ上手だって話を聞いちゃったらしくて、すっごい気にしてるんだよ」
「………え」

 な、なんだ、それは?! 誰だそんなこと言ってるの! って、したことある女子なんて何十人もいるから分からない……っ

「話聞いたの、9月のことらしいんだけど……」
「…………」
「泉のことだから、それからビビってやれてないんでしょ?」
「…………」

 侑奈、何でもお見通し……

 でも、この約4ヶ月、彼はオレの前ではそんな素振りを見せたことは一度もない。小学生の時みたいに甘やかしてくれて、大切に大切にしてくれていた。

 侑奈の友達に告白されたときも、大喜びはしたものの、きっぱりはっきり断ってくれたし。

 一昨日も「美容師になる」って言ったオレを心配して桜井先生のところに駆け込んでくれたし……

 挿入はしないまでもイチャイチャはたくさんしてくれて、それで一緒に気持よくなったりしてて……上手いとか下手とかそんなの……

「こないだ、私にまで『諒って何分くらいもった?』なんて聞いてきてさ……」
「え……」
「それ気にするってことは、泉、すごい早いの?」
「…………」
「…………」
「…………」

「あ、ごめん」
 侑奈は真面目な顔をして手を振ると、

「聞きたくないから言わないで」
「………うん」

 言わない。
 早いか遅いかと言われれば、早い、のかもしれない。けど……。

「まー、泉、基本的に単純だからさ。泣き落としでヤルまで持ち込んで、終わったあとに、すごい良かったってめちゃめちゃ誉めてあげれば、大丈夫になるんじゃない?」
「…………」

 さんざんな言われようだ……
 侑奈は楽しげに言葉を継いだ。

「明日はクリスマスイブだし、誘ってみたら~?」
「………侑奈は明日は?」
「さあ?」

 思わせぶりに、うふふ、と侑奈が笑ったところで、チャイムが鳴った。彼だろう。

「はーい」
 楽しげに侑奈が玄関に向かうのを眺めながら、ボヤッと思う。

 誘ってみたら……か。
 ちょうど、明日から3日間、両親は帰ってこないと言っていた。あの人たちは、毎日忙しくて、家にいることは少ないのだけれども、変な時間に帰ってきたりするので、迂闊に彼を泊まらせることはできないのだ(いや、普通に泊まるのは全然大丈夫なんだけど、するのは危険……)。でも明日は大丈夫……

「諒」
「………ん」

 入ってくるなり、こたつに座っているオレの頭を撫でてくれる彼。甘やかされてるな、と思う。

「あれ? お兄さん」
「こんにちは」

 続けて入ってきたのは、優真のお兄さん。

「侑奈ちゃん、これお土産」
「わ、ありがとう~」

 侑奈が嬉しそうに箱を受け取って、そのまま台所で話しこんでいる。そういえば、こないだ4人で遊園地行った時も、侑奈とお兄さん、仲良かったもんな………。

(もしかして、明日の侑奈の予定って……お兄さん?)

 そうだとしたら嬉しい。優真のお兄さんなら安心だ。
 侑奈の楽しそうな声を聞いていたら、勇気がわいてきた。

(よし。オレもがんばろう……)

 勇気を出して、誘おう。

「優真……っ」
「ん?」

 心が挫ける前に一気に言う。

「明日の夜、泊まりにきて。うちの親いないからっ」
「あ、そうなんだ。ラッキー。いくいく」

 こちらの緊張をよそに、彼はケロリと言う。

(こういう言い方するっていうことは、しないってことか……)

 そう思ってガッカリしていたのだけれども……

「明日、クリスマスイブだし。せっかくだから最後までやろうな?」
「え………」

 侑奈達に聞こえないように、耳元でコソコソっと囁いてくれた彼……

「ジェルついてるゴム買ったから、持っていくな?」
「…………っ」

 自分でも、赤くなったことが分かった。

「いい?」
「…………うん」

 うなずくと、彼も照れたように笑って、こたつの中で繋いだ手にぎゅっと力をこめてくれた。



***


 翌日……

 一緒に夕飯をとって、ケーキも食べて、それぞれシャワーも浴びて、準備もして……

「ちゃんとするの、久しぶりだな」
「うん」
「上手く出来なかったらごめんな」
「そんなこと……っ」

 抗議の声をあげようとしたけれど、抱きすくめられ、言葉をとめた。肌と肌が溶け合ってしまいそう……

 たくさんのキスの嵐の後、彼が「入れていい?」と直球で聞いてきたので、こっくりとうなずいて、ゴムを着けてあげた。わざわざ買ってきてくれたなんて、嬉しい………

「諒……」
 ぐっと太股の裏辺りを掴まれ、押し上げられ、緊張感が走る。でも、そうとは見せないように細心の注意を払いながら、彼にうなずいてみせる。

「……入れて?」
「…………」

 遠慮がちに、熱いものが入り口にあてがわれ……そのままズブズブと入ってきた。

「………っ」
 約4か月ぶりの熱……。初めてした後からは、自分でする時に指の数を増やしてするようにしていたので、太さの対応はできていたつもりだけれども、本物はもう少し太くて、それになにより熱くて、長さもある。内臓を抉られる感じがする。でも、このお腹の中に入っていく感じが、彼自身を受け入れている、と思えて、胸がいっぱいになって、やっぱり涙が出そうになる。

「諒……痛い?」
「ううん」

 本当は痛いけど、平気なふりで首をふる。

「優真の、気持ちいい」
「……そっか」

 笑ってみせると、彼はホッとしたように息をはき、

「……動かしてもいい?」
「うん」

 ぐっとオレの腿を持つ手に力が入った。そのまま、律動がはじまる。

(………っ)
 彼のものが固く力強くオレの中を行き来する。彼と一つになっている実感が持てる。こらえるように、眉を寄せている彼の表情にもそそられる。痛みですら喜びに代わる。

 それからしばらくの律動の後……

「………んんっ」
「……っ」

 中の熱量が更に高まり、小さな呻き声と共に、彼がブルッと震えた。

(ああ良かった……イケたんだ)

 彼が絶頂を迎えた様子にホッとする。確かに早いかもしれないけれど、そんなの、早いってことはオレですごく感じてくれてるってことなんだから、嬉しさしか湧いてこない。オレの中でイってくれる彼が愛おしくて、愛おしくて、たまらない。

「優ちゃん……好き」
「諒……」

 彼は繋がったまま、オデコにキスをくれた。ああ、幸せ……

「あ……っ」
 ズルり、と引き抜かれ、声が出てしまう。本当に本当の正直を言えば、もっと繋がっていたかったけれど……、でも、体の負担を考えたらこれで充分だと思う。中で感じるのは、まだ無理だ。そう、思ったのに……

「諒」
「ん?」

 彼がなんだか思い詰めたような顔でこちらをみている……

「優ちゃん? どうし……、んんっ」

 言葉を続けられなかった。彼の左指がオレの中におもむろに侵入してきたからだ。

「あ……んんっ」

 変な感じ。中で蠢いている、彼の、指……。声が勝手に出てしまう。

「諒……」
「優ちゃ……っ」

 切ないような、彼の瞳……。じっとこちらを見たまま、指を抜き差ししていて……

「気持ちいいとこ、ある?」
「え……あ、んんっ」

 探るように指を動かされ、ビクッとなる箇所でこらえきれずに声を上げてしまう。

「ここ?」
「分……かんないっ」
「そっか」

 そう言いながらも、彼の指は動き続けていて……

(………あ)
 そして、気が付いた。いつの間に、彼は自分のゴムを取りさっていて、そして……

(……っ)
 その光景に、全身の血が一点に集中して、自分のものが立ち上がってしまった。

(優真……自分で、してる)

 左手はオレの中を擦り続けていて……
 右手は一度放出して力を失った自分のものを、扱いて力を持たそうとしている。
 少し細めた瞳は、オレのことをジッとそらさず見ていてくれて……

(あの時……)
 オレと侑奈がやっている音を盗み聞きながら、隣の部屋で自慰行為に耽っていた彼の姿を思い出す。あの時天井を見上げていた彼が、今はオレを見ながらしてくれてる……

 震えてしまう。この光景……オレの倒錯的な妄想を現実化したもの、そのものだ。……もうこれだけでイってしまいそうだ。

(優真……)
 優真が欲しい。その手にしているものを、入れて? オレの中に入れて……

「優ちゃん……」
「諒……もう一回、いい?」
「………っ」

 うんうん、と激しく肯いてしまう。
 彼はオレから目も手も離すことなく、器用にコンドームの袋を口を使って開け、右手だけで自分のものにかぶせた。そして、左手を引き抜くと同時に、その熱いものを中に押し込んできた。ジェル付きのゴムのおかげもあって、すんなりと中に入っていく。

「………あ……っ」
 さっきよりも、さらに、熱い。たぶんオレの中もすごく熱くなってるんだ。

「諒……っ」
「んっ」

 緩やかに律動をしながら、右手がオレのものを扱いてくれる。中からも外からも、刺激が強すぎて頭に血がのぼってくる。

「優ちゃ……っ」
「すっげえ、ダラダラ……」

 オレの先走りでクチャクチャといやらしい音がする。優真、嬉しそう……

「気持ちいい?」
「ん……んんっ」

 うなずくことしかできない。彼は満足したように肯くと、思いきり腰を打ち付けてきた。

「あ……っ」
 痛さと快感と、彼の熱と、彼の嬉しそうで気持ち良さそうな顔と、色々なものが混ざりあって、快感がこわいくらいの勢いで迫ってくる……っ

「優……っ、も、ダメ……、イクッ」
「うん」
「優ちゃ……っ」

 思わず、彼の左手をぐっと掴む。彼はそれを握り返してくれながら、優しく言ってくれた。

「諒……イって?」
「あ……優……っ」

 その声に促され、奥まで突きあげられ、手でも扱きあげられ…………、追いたてられるように理性を手放した。

 あああああ……っと抑えきれない声と共に、白濁が彼の腹にブチまかれる。

(気持ちい……っ)

 今まで何度となく経験してきたのに、それと比べ物にならないくらいの快楽の頂点。彼のものを咥え込んだところがドクドクと波打っている。

 と……

「諒……もうちょっとしていい?」
「え……あ、んんんっ」

 彼が再び律動を開始する。そのまま後ろを刺激され続け、頭が真っ白になっていく。

「諒……」
「優真……っ」

 そのまま何度も名前を呼び、彼にしがみつき……もう一度絶頂を迎えたような気がするけれど、何がなんだかわからなくて、覚えていない。ただ、ものすごく気持ちよくて……そして、彼がものすごく嬉しそうだったことは覚えている。


***


 目を覚ますと、彼の腕の中にいて……彼が愛おしそうにオレのことを見ていることに気が付いた。

「優ちゃん……?」
「うん」

 チュッと額にキスしてくれ、優しい手が頭を撫でてくれる。

「ちょっとだけ寝てたな。もうすぐ12時だけど、風呂入るか?」
「うん……でも、ちょっと待って……」

 キュッと彼に抱きつく。素肌の触れ合いが気持ちいい。

「足とか、なんか、ダルくて……」
「そっか。大丈夫か?」

 ギュッと抱きしめ返してくれる。ああ……こんな幸せ、あっていいのかな……

「優ちゃん……」
「ん?」
「すごい気持ち良かった」
「……そっか」

 それなら良かった、と安心したようにうなずいた彼。
 その後、一人言のように「ホントだったな……」とつぶやいたので、「何のこと?」と聞いたところ……

「いや、桜井が……」
「桜井先生?」
「うん………」

 別に言わなくてもいい話なんだけど……っていうか、言わない方がいいのか……? そう、ブツブツ言ってから、驚くべきことを教えてくれた。

 彼は自分が早いことをことをずっと気にしていて……先月、桜井先生に相談、したのだそうだ。そうしたら、オレに男同士のやり方を教えてくれた時と同様に、先生は淡々と対処法を教えてくれたらしく……

「よくそんなこと教えてくれたね。さすが天然先生……」
「大学の時にそういうのに異常に詳しい友達がいて、その人から色々聞かされてたんだって」

 欠点は、テクニックでカバーしろ、というのがその人の口癖で、早いのなら、指と回数でカバーしろ、と言っていた、という……

「もしかして、優真、練習、した? 片手の……」
「………」

 イタズラそうに笑った彼。肯定ということだ。すごくスムーズに片手でゴムをつけられたのは、練習の成果だったんだ……

「あー、呆れてるな?」
「そんなことないっ。感動してるっ。おかげで、すごくすごく気持ち良かったよっ」
「そっか」

 くすぐったそうに笑った彼が愛しくてたまらない。
 オレが、なんでしてくれないんだってイジイジとしていた間、彼はオレを満足させるために練習までしてくれてたんだ。嬉しい。嬉しすぎる。

「まあでも、まだまだこれからだ。まだまだ頑張る」

 彼がそう言いながら、首筋にキスをくれた。したばかりなのに、ズクリと体の中心が熱くなる。

「オレのライバルはお前だからな」
「なにそれ……んっ」

 ゆるゆるとまた扱きはじめられ、声が出てしまう。オレも手を伸ばし、そっと彼のものを掴む。

「女ども、こぞって、お前は上手だって言ってたぞ」
「……そんなことないのに」
「…………。あるかどうか、分かんないからさ……」

 彼は真面目な顔になり、ボソッと言った。

「あと4年たったら……お前やってみるか」
「? 何を?」

 4年? 何の話?

「あのー……お前、初体験、中1の夏だろ?」
「うん」
「オレは、高2の夏。だから4年」
「んんん???」

 意味が分からない。

「だから4年って?」
「だからー、4年後なら、オレとお前は同じになるだろ?」
「……?」

 経験値、という意味かな?

「うん。そう……だね?」
「だから……4年たったら、同じになるから、その頃までにはオレもお前と同じくらい上手くなってる予定だから」
「うん」
「だから、その時、比べてみようって話だよ」
「?? んんん?」
「だからー……」

 彼の顔がみるみる赤くなっていく。
 4年たったら、お前やってみるか……って言ったんだよな……。やってみる。やってみる。お前やってみるって……

「……え」

 やってみるって……、オレが、やるってこと?!

「ええええええっ」

 途端に彼の手の中にあるオレのモノが、熱を持ってぐんっと立ち上がってしまった。
 いや、そりゃ、オレも男だから、やりたい欲求がないと言えば嘘になるし、そういう妄想を今までしたことがないわけじゃないけどっっ

「あ、すっげーヤル気じゃん、お前……」
「だ、だって……っ」

 慌ててしまう。彼にそんな気があるなんて露とも思わなかったから……っ

「優真、嫌じゃないの? だって……」
「別に嫌じゃねえよ。っつーか、お前と侑奈がやってるとき、オレ、いっつもやられる妄想してたし」
「え?!」

 そ、そんなの初耳……っ ますます元気になってしまう。

「家でシコってる時は、やってるイメージなんだけどな」

 彼はニッと笑うと再び手に力を入れはじめた。

「まあ、とにかく4年後な。今だと勝ち目がないからヤダ」
「そんな、勝ち負けなんて……、あ、んんっ」

 グチャグチャと音を立てながら扱かれて、もうたまらない……

「桜井と渋谷さんも、両方してるって言ってたっていうからさ」
「ん………」
「オレたちも、そういうのいいかもって思って」
「うん……」

 目と目を合わせて、時々唇を合わせながら、お互いのものを高め合う。

 男同士だから、とか、背が高いから、とか、そういう見た目のことなんか取っ払って。
 今、ここにいる、彼を求めたい。彼に求められたい。嘘のない本能だけで。ずっと。ずっと……

「優真……好き。大好き」
「諒……」

 愛してるよ。

 彼は優しく言って、瞳にキスをしてくれた。


--


お読みくださりありがとうございました!
長々と失礼しました~。諒視点最終回でございました。
もうこの二人に関しては「お幸せに♥」って言葉しか出てきません。

勘の良い方は、お気づきだったかもしれません。この二人、はじめからリバになる予定でした(^-^)
きっと4年も待たずにリバになってるかと思われます。泉×諒が8割、諒×泉が2割、ってとこですかね。
あ、ちなみに、桜井先生(浩介)と渋谷さん(慶)は、浩介×慶固定です。諒を励ますためについた嘘が否定されないまま続いているだけです。浩介×慶固定ですが、襲い受け率高めです。

なんて、諒視点、思いっきり下ネタで終わってしまった~~っ。……まあいっか。
明後日、浩介視点で最終回、の予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 21-1(諒視点)

2017年02月13日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 彼の誕生日前日……

 彼がオレを抱いてくれた。

 それは、彼への誕生日プレゼントで、オレはこの日のために色々と準備をしてきた。でも……

「優ちゃん、ホントにいいの……?」

 この日も30分以上かけて準備をしたけれども、それでも不安でたまらなかった。

 分かってくれているとは思っても………もし、男のオレに対して彼が勃たなかったら……彼より背の高いオレを「抱く」というイメージを持ってもらえなかったら……そう思うと怖くて、電気もつけたくなかった。でも、彼はものともせず、電気をつけ、 

「何言ってんだよ。オレはお前を初めて見たときから、お前と結婚するって決めてたんだからな」

 そう言って、優しくキスしてくれた。
 体中、たくさん、触ってくれた。体中、たくさん、キスをしてくれた。夢にまでみた時間……

 そして……

「オレの初めては優真にあげるから」
 
 なるべく自然な形で騎乗位に持ち込んで、繋いだ手に力をこめた。ゆっくりと挿入を試みる。
 この日まで、何度も自分で彼のモノを妄想しながら指を入れたりしていたけれど、実際の彼のモノは、そんな生易しいものじゃなくて、そこが裂けてしまうのではないかというくらい熱くて太くて……でもその分だけ、実感がわく。彼が、入ってくる……

「入っ………た」
 体が彼に着いた。全部入った、ということだ。すごい熱……。
 彼が、オレの初めて。そして、これが、彼の初めて。オレが、彼の初めて。

 喜んでくれる……? そう思って彼の表情をみたのだけれども、彼は眉を寄せたままで……途端に不安が襲ってくる。

「優ちゃん………気持ち良くない?」
「何言ってんだよ?」
「だって……」

 言うと、彼は繋いだ手をギュッとして、

「こんなになってんの、分かんない?」
「あ……っ」

 下から思いきり突き上げられ、悲鳴じみた声が出てしまった。痛い……っ
 でも、そのまま、彼が何度も突き上げてくる。何度も、何度も。

(優真……)

 なんて充実感……。この痛みが、優真。優真がオレで固くなってる。オレで感じてる。今までたくさん心が傷ついてきたけれど、そんな痛みなんか上書きされる傷み。心全部体全部を抉られるような感覚。気が遠くなってくる。

 優真、優真がオレの中にいる……

「諒?!」
「………え」

 はっと我に返ると、律動をやめてこちらを心配そうに見ている彼の顔があった。彼が焦ったように言う。

「ごめん、オレ調子に乗って……っ」
「あ………」

 涙が出ていることに初めて気が付いた。慌てて「違っ」と首をふる。

「違う……」
 涙が止まらないけれど、精一杯の笑顔で伝える。

「優ちゃんが、オレの中にいる……」
「え……」
「それが、嬉しくて……」

 ぎゅうっと握った手に力をこめる。

「夢、みたい……」
「……諒」

 彼もふわっと笑ってくれた。

「お前の中、すっげー気持ちいいよ」

 え……

「ホントに?」
「うん」

 ああ……なんて幸せ。
 繋がったまま、唇を重ねてくれる。涙が伝っている頬にキスをくれる。

「大好きだよ、諒」
「優真……」

 大好き。大好き。優真……

「誕生日おめでとう」

 そういうと、彼は恥ずかしそうに微笑んでくれた。


***


 それから約4ヶ月……

(なんでかなあ………)

 ため息が出てしまう。
 その後、挿入までしたのは、その一週間後に、2回、だけなのだ。
 イチャイチャ、は毎日してる。その上、週2くらいは、お互いのモノを扱き合うまでのイチャイチャはしている。でも、挿入まで、は、ない……

(したくないのかな……)

 先週、直球で「しよう」って誘ったけれど、なんだかんだでうやむやにされた。

(やっぱり、良くなかったのかな……)

 そう思うと、落ち込んでくる……。
 でも、初めての時も、その後の2回も、彼はちゃんとイッた。ちゃんとオレの中でイッた。そんなに時間もかからず、ちゃんと気持ち良さそうに絶頂を迎えてくれた。女性と違って、出るものが出るので、演技じゃないことは確かなんだけど……

(するの、好きじゃないのかな……)

 でも、しょっちゅうイチャイチャをしかけてきてくれるので、触れあうことが嫌ということではなさそう……

(うーん……)

 オレは毎日でもしたいのに。痛いけど、でも、彼の欲望に追いたてられたいと思う。欲しいって目をした彼と繋がりたいと思う。………オレがおかしいんだろうか。でも、健全な中高生なんてそんなものじゃないのか……?

 うーん、うーん、と唸っていたら、

「何唸ってんの?」

 なんかあった? と、侑奈が声をかけてきてくれた。でも、これはさすがに相談できない……と思って黙っていたら、

「もしかしたら、その唸りと関係あるかも、の話があるんだけど?」
「え!?」

 何だって!?

 食いついたオレに侑奈が話してくれた話は、オレを途方に暮れさせるのに充分な話だった………。


--


お読みくださりありがとうございました!
って全然途中なんですけど、トラブル発生によりここまでで……

途方に暮れる話→ヒントは、諒君のこのセリフ。

「そんなに時間もかからず、ちゃんと気持ち良さそうに絶頂を迎えてくれた」

実は小心者で、その上、「カッコイイ諒」に対してはライバル心の強い泉君……かーらーのー…………。です。

ちなみに上記話の泉視点はこちらの2本でした。 → 18-5 18-6


トラブルが何かと言いますと……
土曜の夜、眼鏡をかけたまま寝てしまっていて、日曜日起きたら、

真っ二つになってました(^_^;)
テープで応急措置してかけても気持ち悪くなるし~~
でも、裸眼0.01(←すみません!訂正です!今日測ったら0.05でした!!)なので、かけないと何もできない~~
パソコンも使えずテレビも見れず、スマホも長時間は無理(>_<)

日曜日は朝から夜まで外出しなくてはならず、やむなくコンタクトで出ましたが、久しぶりのコンタクトで目がパシパシ……
とりあえず朝一で眼鏡屋さん行ってきます~~。

続きは明後日……できるかな(^_^;)眼鏡の出来上がり次第かもですがっっ……何卒よろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 20(浩介視点)

2017年02月11日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘

 もうすぐ2学期が終わる。
 2年生には進路希望調査の紙が配られたのだけれども……

「もーー!桜井先生!こいつなんとかしてー!」

 他には誰もいない社会科準備室に、泉優真君の叫び声が響き渡った。「こいつ」と指さされた高瀬諒君は隣でプーッと頬を膨らませている。

「なんとかして、って?」
「こいつ、美容師の専門学校に行くとか言ってるんだよー!」
「?」

 それがどうして「なんとかして」なんだ?

「なんで? いいんじゃない? 美容師。高瀬君似合いそう」
「いやそりゃ似合うけどさ! 理由がおかしいんだよ!」

 プンプン怒っている泉君の話によると……

 泉君が小さい頃から通っている床屋さんは、かなり高齢のおじいさんが一人で経営していて、今年いっぱいで店じまいをするらしく……

「だから他の床屋か美容院を探そうと思ってるんだけど、こいつが他の人にオレの髪の毛触らせるの嫌だっていって」
「だから、自分が美容師になって泉君の髪を切るってこと?」
「はい」

 こっくりと力強く肯く高瀬君。

「床屋のオジサンには、オレが美容師になるまでは、優真の髪だけは切ってってお願いしました」
「で?」
「いいよって快諾してくれました」
「そ、そっか……」

 すごいな高瀬君……
 確かに気持ちは分からないでもない。髪の毛を触らせるって何だか特別な感じがするもんな……

「ねーおかしいでしょ? こんなことで将来決めるなんて」
「こんなこと、じゃない! 大問題!」
「何が大問題だよっ。だから同じようなジジイのやってる床屋探すって言ってんだろ」
「だからダメだって!おじいさんでもゲイはいる!」
「ちゃんと奥さんがいるジジイを……」
「そんなの奥さんいたって信用できない!カモフラージュかもしれないし!桜井先生のあかね先生みたいに!」
「そんなこと言ってたら、どこにも行けないだろっ」
「だからオレが切るっていってるんだよ!」

 わーわー怒鳴り合っている二人……

「だいたい、お前、自分は美容院の綺麗なお姉さんに切ってもらってるくせに!」
「オレはどうでもいいんだよっ。優真はダメ!」
「なんで!?」
「全然タイプじゃない女子に告白されて、大喜びしてたくせに!」
「おっ前!それは初めてだったんだからしょうがないだろー!」

「………………」
 ああ、いいなあ……若いなあ……
 って、おれも10歳しか変わらないんだけどなあ……なんだろうこの初々しさ……

「桜井先生! ぽやーっとしてないで何とか言ってよ!」
「え、ああ……」

 泉君のツッコミに我に返る。

「いや……別にいいんじゃないかな、と思うけど? 高瀬君がなりたいなら、キッカケや目的なんかなんでも。あとは自分がどれだけ頑張れるかだよ」
「先生ー!」
「ですよねー?」

 ほらいったじゃん、と恋人を肘で小突く高瀬君も、しょうがねえなあ、と呆れた表情をした泉君も、とても幸せそうだ。ただの惚気話に付き合わされた感満載……

「そういう泉君は? 進路希望どうした?」
「あーオレは大学行ってもいいけどできれば国立って言われてるから、国公立クラスかなあって」

 うちの学校は、大学付属なので上に大学が付いている。そこそこレベルの高い大学だけれども、他学を受験する生徒の方が多く、学校側もそれを推奨している。(高瀬君のように専門学校に進むという生徒はすごく珍しい)

「おうちの和菓子屋さん継がないんだ?」
「兄ちゃんが継ぐからオレは用無し。店舗数増やすとかそういうことまったく考えてないから、二人も後継ぎいらないんだよ」
「そっか……」

 その家庭その家庭、色々あるんだな……
 うちの母も後継ぎがどうのと言うなら、あと2、3人子供を作ればよかったんだ。父はすぐにこんな出来の悪い息子は見限って、父の下でずっと働いてくれている庄司さんを後継ぎにって言っているのに、母は陰でくどくどくどくどと……
 
 などと黒い感情に支配されそうになるのを、寸前で引き返す。ここは職場。おれの居場所……


「あ、いいこと思いついた!」
 急に高瀬君がパチンと手をたたいた。

「オレも国公立で調査書出す! その方が一緒のクラスになれる確率上がるし!」
「あ……なるほど……」

 それは言えてる。

「国公立は毎年2クラスくらいだからね。二分の一の確率になるね」
「ねー先生、裏で手回して一緒のクラスにしてもらえないー?」
「それはさすがに無理だなあ」
「そこを何とか」

 二人に拝まれて笑ってしまう。

「二人は同じクラスになったことないの?」
「小学校は一クラスしかなかったからずっと一緒だったけど、中学高校ではなれなくて」
「一緒のクラスで文化祭とか球技大会とかやりたーい」
「こないだの修学旅行だって、クラス別コースだったから一回も会えなかったし……」

 それは気の毒に……
 おれは高校2年生の時だけ慶と一緒のクラスだったので、修学旅行も一緒にいけた。文化祭も球技大会も楽しかった……

「うーん……まあ、もしも、おれが3年生の担任を持てて、クラス編成に口出しできるようだったら……」
「うんうん!もしもそうなったらでいいから!」
「よろしくお願いします!」

 二人は来た時とはうって変わって、明るい顔で社会科準備室から出て行った。ドアが閉まってもなお聞こえてくる、二人の楽しそうな話声に心が温まってくる。

「いいなあ……」

 毎日一緒にいられる二人が羨ましくてたまらない。おれも高校の時はそうだったんだよなあ……
 高校2年生の今頃は……ああ、そうだ。ちょうど慶への恋心に気が付いて苦しんでいた頃だ。そしてクリスマスイブの前日、とうとう打ち明けて、それで……。
 それが10年前のこと。だから、明後日12月23日は、10回目の記念日なのだ。


***


 10回目の記念日、だけど……

「帰ってこない……」

 慶の部屋の中、ポツンと響く自分の声……

 今日は休みを取ってくれているはずだった。
 はずだったのに、どうしても出勤しなくてはならなくなった、と今朝連絡があり、そのまま音信不通……

(おれが慶を想うほどには、慶はおれのことを必要とはしていない)

 それは昔から分かっていることだ。おれは慶に依存している。慶がいなくては生きていけない。でも、慶はそうじゃない。慶はおれに依存なんかしていない。慶はおれなんかいなくても笑ってる。友達もたくさんいる。
 でも、慶がおれを好きなことは分かっているし、その愛は充分伝わってくる。おれはただ、慶に迷惑をかけているだけなのに。

(7年前だって……)

 7年前、おれの母が、慶のアルバイト先に押しかけ、結果慶はアルバイトを辞めることになった。慶の家族の職場にも押しかけ迷惑をかけたらしい。これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、表面上は別れたことにして、友人のあかねと付き合っているという嘘をつくことにした。

 でも、この作戦ももう限界だと思う。母は調子に乗って、祖母の告別式にも、夏の法事にも、あかねを呼びつけた。これ以上あかねに迷惑をかけるわけにもいかない。

『お正月にはあかねさんと一緒に帰ってきなさい』

 喪中だから新年の用意はできないけど、と昨日も母から電話があった。喪中だから挨拶に行かないでいいと思っていたのに……

 今もまた電話がかかってくるんじゃないかと思うと呼吸が苦しくなってくる。でも、慶から連絡があるかもしれないと思うと電源を切ることもできない。

「慶……終わっちゃうよ?」

 10回目の記念日……もうすぐ終わりの時間だ……

「!」
 にらんでいた携帯が震えてドキッとする。でも、電話ではなくメールだったので、あわてて開くと……

『ごめん。今から帰る』

 ただそれだけの、慶らしい短い文。
 どっと体の力が抜ける。涙が出てくる。
 慶……慶。会いたい。会いたかったよ……

「…………。なんて言ってる場合じゃない!」

 声に出して言って、自分にはっぱをかけた。慶の勤める病院の外門からここまでは徒歩5分。おそらくこのメールは更衣室で打ってる。そして、たぶん、慶は走って帰ってくる。そう考えると……

「5分、くらいか」

 慌ててカバンから教科書や資料集を引っ張りだし、ローテーブルの上に並べる。そしてレポート用紙に問題を書きはじめる。

 たぶん、慶は「ごめん」ってものすごい恐縮して謝ってくる。だから、「おれも仕事してたから大丈夫」って答える。全然、大丈夫って………


「ただいま!」
 予想通り、5分弱で玄関の開く音がした。バタバタとあわてた様子が伝わってくる。

「お帰りーお疲れ様ー」
「ごめんっごめんな!全然連絡できなくて」
「ううん」

 部屋に入ってきた慶に、ニッコリと手を振る。

「ケーキ買ってきてあるけど、今、きり悪いから、少しだけ待ってくれる?」
「お、おお。お前も大変だなあ」

 慶はほっとしたように言うと、手を洗いに洗面台に向かった。その後ろ姿に気付かれないように、小さく息を吐く。

(大丈夫……大丈夫。上手に嘘つける……)

 ずっと、ずっと待ってたなんて、絶対に思わせない。慶の負担になりたくない。

「何やってんだ?」
「冬休み明けのテスト。2学期の復習。明後日、他の先生と打ち合わせがあって」
「ふーん……」

 慶はおれの横にストンと座ると、白い頬をおれの肩にピッタリとくっつけてきた。その温もりが果てしなく愛おしい。

「あ、フランス革命。おれ、マンガで読んだなー」
「そうそう。なにげにマンガも侮れないよね。同じ作者の人がロシア革命を題材にしたマンガも書いてるんだけど……、って、慶っ」

 いきなり耳にキスをされ、体が震える。

「もー、邪魔しないでっ」
「気にするな。続けていいぞ?」

 わざと音をたてて頬に首に唇を落としてくる慶……もう、泣きたくなってくる。

「もー、分かったから。続きは明日にするから」
「ん」

 慶は満足そうにうなずくと、今度はチュッと唇にキスをくれた。

「今日はせっかく10回目の記念日だからな!」
「うん……そうだね」

 うん。そうだよ……

「ケーキ、食べる?」
「おー。サンキューなー」
「コーヒーでいい?」
「うん」

 慶は離れるのが惜しいかのように、コーヒーとケーキの用意をするおれの背中にぎゅーっとくっついたままだ。

「慶?」
「ん」
「どうしたの?」
「ん」

 オデコをグリグリとしている感触がする。

「お前のこと堪能してんの」
「何それ」

 笑ってしまう。

「堪能?」
「うん……」

 前にまわった腕をポンポンと叩くと、ようやく腕の力を緩めた慶。

「おれ、明日も朝からで、そのまま泊まりだから……」
「…………」

 今日は日曜日。振替休日で明日も休みだ。でも慶には日曜も祝日も関係ない。明日、今日出勤した分、休みになったりしないだろうか、と少し期待していたけれど、やはり仕事ということだ。
 落ち込みそうになるところをどうにか踏みとどまって、明るく提案する。

「じゃあ、明日のお昼、お弁当作って届けようか?」
「え!ホントに?やった!」

 慶はものすごく嬉しそうに叫ぶと、するりと前まで回ってきた。

「ハンバーグ!ハンバーグ!」
「うん」
「あとなーちくわのチーズ巻いてるやつ」
「うん」
「あとー……」
「うん……」

 言いながら、軽く唇を重ね、それからコツンとおでこを合わせる。

「とりあえず、ケーキ食うか」
「うん」
「美味そうだな」
「うん」

「お前、うん、ばっかり」
 くすくす笑いながら、二人分のコーヒーを運びはじめる慶の後ろ姿……。それを見つめるうちに、黒い気持ちが体中を渦巻いていく……

(仕事なんか休めばいいのに)
(今日一緒にいられなかったんだから、明日一緒にいてくれればいいのに)
(どうせおれなんかより、仕事の方が大事だもんね?)

「慶……」
 閉じ込めて、どこにも行かせないようにしたい。おれだけのものになればいい。

「ん? なんだ?」
「…………」

 振り返った笑顔。おれだけのものになればいい。なればいい……

「………。砂糖とミルクいる?」
「いやーさすがにこの時間にケーキ食うだけでも罪悪感あるのに、コーヒーに砂糖までは入れらんねえ」
「だね」

 にっこりと笑って、ケーキをのせた皿をテーブルに運ぶ。

「10周年~~、これからもよろしくね」
「おーよろしくなー」

 コーヒーカップを持ちあげて微笑みあう。

「うわーうめー、なんだこの濃厚なチョコ!」
「よかった。慶、こういうの好きかなって思ったんだ」
「さすが10年付き合ってるだけあるなーよく分かってる!」
「でしょー?」

 嬉しそうな慶。愛しい慶。大好きな慶。

 ほら、大丈夫。おれは上手に嘘がつけている。
 この笑顔を守るためなら、あなたと一緒にいられるためなら、おれはどんな嘘でもついてみせる。


----


お読みくださりありがとうございました!
浩介視点、安定の暗さ!
本当は、20諒視点、21浩介視点、で終わり、のはずでしたが、やっぱり一つ挟むことにしました。

続きは明後日、諒視点最終回(たぶん)です。その後にもう一回浩介視点、で終わる予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

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