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BL小説・風のゆくえには~須藤友と友達の話(後編)

2020年03月20日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

【須藤友視点】

 年齢イコール恋人いない歴

 なんて奴は自分の周りに何人もいる。親に言わせると、23歳でそれは「自分たちの頃ではありえない」らしいけど、今は別にそんなの普通。恋人なんかいなくても、人生楽しく送れてる。

「ゲームの中の女の子が可愛すぎて」

と、言うのは、大学卒業間近に、引っ越しの短期バイトで知り合って友達になったタツミだ。
 タツミは僕と同じ歳で、見た目はクールな雰囲気で背も高くてかなりカッコいいのに、年齢イコール彼女無しで、二次元にしか興味がない。厳しい親の元で色々制限を受けながら育ってきたため、大学に入って一人暮らしをはじめた途端、たかが外れてしまった、と本人は言っている。

 でも、三次元に興味ないからといって、性的欲求がないわけではない。

「これエロ過ぎー。もうずっと勃ちっぱなし」

と、ゲームをしながらヘラヘラと言うタツミに、

「じゃ、ゲームしてる最中、僕が抜いてあげよっか?」

と、もちかけたのは、友達になって半年くらいした頃。
 僕はゲイであることを隠しているので、あくまで「男友達の酒の上での悪ノリ風」に言ってみたんだけど、タツミもノリでオッケーしてくれて……。僕的には大興奮でタツミのそれを弄くり回したら、結構良かった!そうで、それ以来、時々、タツミの部屋に泊まらせてもらうお礼、ということにして、抜いてやってる。かれこれ8か月になるので、もう何回したか分からない。

 一度、口でしようとしたら、

「さすがにそれは無いなー」

って言われたから、そこまでは出来てないんだけど……その時は「冗談に決まってんじゃん」って誤魔化したけど……僕的にはフェラもかなり興味あるんだけどなあ……

(そのうち、やってやる

 なんてことを密かに思っていた。
 タツミは、黙ってると取っ付きにくい感じだけど、中身はいつでも呑気で適当でヘラヘラしてる。好きなアニメが同じなことで友達になっただけあって、趣味が合うから一緒にいて楽しいしラクだ。

 このままずっとこんな風にダラダラとのんびり一緒に過ごせたらいいなあと思ってたんだけど……


「オレ、彼女出来たんだよー」

 土曜日、いつものように泊まりに行ったら、タツミにヘラヘラ言われてしまった。

「さすがにお前に抜いてもらってるなんて彼女に言えねーから、今日で最後なー」
「あ……っそう」

 じゃあ、最後にフェラやらせてよ。……って言葉はどうにか飲み込んだ。友達としてのタツミを失いたくない。

「んじゃ、泊まりも最後かあ」
「彼女来てない時は来ていいぞ?」
「急に来られたりしたらヤだからいいよ」
「そうかー? まー、お前も彼女作れよー二次元ばっかみてないでさー」

 なんて、ヘラヘラ言うタツミ。人の気も知らないで……。

(いや、別に、好きだったわけじゃないけど)

 そう。僕は別にタツミを好きだったわけではない。ただ、性の興味を満たしてただけで……

(だから悲しくなんかない)

 悲しくなんかない。
 そう思いながら、最後のタツミをこねくり回してやった。

**

 その翌々日の月曜日の朝、駅で偶然、渋谷先生に会った。

(うわ……)

 直視に耐えられないくらいのキラキラオーラを振りまいてる……
 一ヶ月ほど前、ロッカー室の前で佇んでいた渋谷先生とは大違いだ。

 渋谷先生とは訳あって、数日間だけ、荷物置き場を共有することになったおかげで、個人的に話をする機会が増えた。

 一ヶ月前の先生は、何だか憂いを帯びていたんだけど(それはそれで色っぽくて良かったんだけど)、そのあとしばらくしてから何かあったのか、段々段々、吹っ切れたように、キラキラが復活してきて……今日はさらに、最強だ。

「おはよう!」
「………っす」

 だから、眩しすぎるって……

 キラキラにクラクラなりながら何とか頭を下げると、渋谷先生が可愛く小首を傾げた。

「なんか元気ないけど大丈夫?」
「あー、いやー……」

 元気ない……か。それはやっぱり、タツミのせい……なのかなあ…

 話を広げたい気持ちもあって、何となく話を盛って言ってみる。

「あのー失恋したっていうか……」
「え、そうなんだ」

 聞いてごめん、と頭を下げてくれた渋谷先生。何かちょっと気分よくなってきて、言葉を続けた。

「あの……ずっと友達してきた奴に、彼女出来たって言われちゃって……」
「そっか……」

 それは辛いね……と心から同情したように言ってくれた先生。もしかして、そういう経験あるんだろうか……

「先生もそういう経験……」
「あるよ」

 アッサリと頷いた先生。こんなイケメンを振るやつなんて……と思ったけれど、相手がノンケだったらそういうこともあるだろうな……と思いきや。

 突っ込んで聞いてみたら、先生はそのノンケの友人を諦めず思い続けて、一年以上かけて振り向かせたそうで……

「すごいなあ……」
「いや、まあ、たまたま……」

 照れたように頬をかいて「運が良かったんだよ」なんて言ったけど、その相手と今も付き合ってて一緒に住んでるっていうんだから、もう、何ていうか……

「幸せですねえ…」
「あー……」

 引き続き頬をかいてる。……幸せ、否定しないし。ホント、幸せそうだし……

「先生はその人が好きなタイプだったんですか?」

 聞いてみると、先生は「うーん……」と困ったようにうんうん唸りはじめた。
 で、首を傾げたまま、うーん……と言っている間に病院に着いてしまった。何となく立ち止まって、先生を見返す。

「タイプじゃなかったんですか?」
「うーん……女の好きなタイプは考えたことあったけど、男の好きなタイプなんて考えたことなかったなあ……」

 こめかみに指を置いて、先生がいう。

「須藤さんはその人が好きなタイプだったの?
「…………」

 タイプって良く分からない。
 渋谷先生みたいな綺麗な人とあわよくば、とも思うし、院長みたいな大人の色気満載な人に可愛がってもらいたい気もするし……

 タツミは……

「タイプとかじゃなくて……単純に一緒にいてラクというか」

 何も考えずにボーッとしていられて。

「一緒にいると楽しいというか」

 楽しいと思うことが同じだから、余計に楽しくて。

「それから……」

 それから……

「一緒にいたい、とか?」
「…………はい」

 コクリ、と頷くと、

「そっか」

 渋谷先生はフワリと微笑んで……

「それが好きってことだもんね」

と、優しく、優しく、言った。


**


 それから一ヶ月後、タツミから「家に泊まりに来い」と誘われた。彼女ができた、と言われたあの日以来、連絡は取ってたけど、会うのははじめてだ。

(ちょっと、ドキドキする……)

 本当は会いたかったけど、我慢してたから余計に…なんて思ったけど。

(あれ?)

 タツミの間の抜けた顔みたら、ドキドキは引っ込んだ。

(………渋谷先生。やっぱり「好き」とは違うかもデス……)

 なんて色々思ってる僕をよそに、部屋に上がって早々、タツミがアッサリと言った。

「オレ、彼女と別れた」
「え、もう?」

 早っ! と言ったら、タツミはいつものようにヘラヘラと「うるせー」と言って、押入れの中に潜っていった。

「何やってんの?」
「封印解くから手伝ってくれ」
「封印?」

 何だ?と思ったら、エロゲーやらDVDやらが入ったダンボールを押し出してきて……

「並び順、お前に任せた」
「…………」

 なるほど。

「じゃあ、僕のお気に入り順にしちゃおっかな」
「おー頼んだ」

 ヘラヘラヘラ、としたタツミ。
 このヘラヘラとまた今までみたいに一緒にいられるんだ……

 なんだかホッとしたというか、心の奥の方が温かいというか……

 なんていう僕の気持ちなんか知るはずもないタツミが、ダンボールからDVDを出しながら言った。

「夜、鍋にするからなー」
「夏に鍋?」

 あいかわらず適当。ちょっと笑ってしまうと、タツミもニッと笑った。

「鍋が一番ラクだから一番好きなんだよオレ」
「…………」

 一番ラクだから一番好き、か。

「……そっか」
「おお」
「そうだね」
「だろ?」
「…………」
「…………」

 何となく……見つめあって……

 キス、とかにはならない。だって僕達は友達だから。

「あ、これ、懐かしい。これ観たい」
「おーいいなー」

 好きなDVDを一緒にみる。

「トモ、鶏と鮭どっちがいい?」
「えーどっちも捨てがたいなあ」
「じゃあ、今日鶏鍋で明日石狩鍋な」
「明日も鍋か」

 明日も一緒にご飯を食べることが当然で。

「タツミ」
「あ?」

 呼ぶと振り向いてくれる。

 友達。友達だから……

「……失恋のやけ酒付き合うよ」
「おー頼んだ」

 ヘラヘラっとしたタツミを抱きしめたくなったけど、我慢することにした。
 

-----

お読みくださりありがとうございました!
長々と失礼しました💦
この二人、そのうちなし崩しにやることやりそうですな〜。
須藤君、フワフワしてるけど複雑ではないので書きやすかったです。

そして、慶君。20歳近く年下の子を相手にしてるので、いつもと話し方とか全然違う。なんか大人だ。
そして余談ですが。最強キラキラだったのは、同窓会でカミングアウトした直後の月曜日だったからだと思われます。お幸せな人です。

ということで……

お休み中もクリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当に本当にありがとうございます!

またいつの日か……

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BL小説・風のゆくえには~須藤友と友達の話(前編)

2020年03月17日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

不安な状況が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

次に書くのは「2つの円」のその後の話、もしくは、浩介父とその友人の話、と思っていたのですが、悩んだ結果、過去話をしようかな、と思いまして。
で、ふいに思い出したのが、慶の勤務先の病院の事務の男の子。

長編『〜あいじょうのかたち』23で、慶が勤務先の病院でカミングアウトしたことに対し、

「大半は表向きは好意的に受け取ってくれたけれど、皆が皆そうだったわけではなく………。
 あからさまに避けてくる人、嫌みを言ってくる人、逆に「実は自分も……」とこっそり打ち明けてくる人、様々だそうだ。 」

と、浩介が説明しておりまして。
その「実は自分も……」と打ち明けてきた人です。
一応、端役でもそれぞれ設定あるもので……
慶よりも2センチ背が高い、目がクリッとした短髪でオデコ出てる男の子(子っていっても、就職2年目の23歳)

これ、2015年5月のお話でした。あれから5年近く経つんですね!ビックリ。
時が経つのは早いものです。

ということで、こんなことがありました、のお話です。



【須藤友視点】


 渋谷慶先生がゲイだと、掲示板にかかれて以来、院内はその噂で持ち切りになった。

 数日後、本人が認めて、今まで隠していたことを侘びたことで、小児科看護師を中心とした女性陣は、ほぼほぼ全員、好意的に受け入れた感じになった。でも、男性陣の中には良く言わない人がチラホラいて……。渋谷先生の人気を妬んで、ここぞとばかりに悪く言ってる人もいるみたいだけど……。

 そんな男性陣の数人が、院長の元に文句(?)を言いにいったところ、

『渋谷を辞めさせたい奴は、渋谷くらい顔が良くて腕もいい小児科医を連れてこい。そしたら考えてやる。まあ、そんな奴は日本中探してもいやしねえけどな』

と、院長が言った、らしい。その話を聞いて、胸がドキドキしてきたのは気のせいじゃない。

(院長と渋谷先生って、やっぱり……)

 院長自らがスカウトしてうちの病院にやってきた渋谷慶先生。完璧な美形で、芸能人みたいなキラキラオーラを放っている上に、仕事もできて、社交的で明るくて優しくて。色が白くて、小柄で、人形みたいで、男女問わず、渋谷先生に見惚れてしまう人は多い、というか、初見で見惚れない人はまずいない。

 院長は、50過ぎならではの男の色気が溢れ出てる人で、絶対的な指導者の貫禄があって、それでいて、朗らかで、全然気取っていなくて、職員全員の名前を覚えてくれていて気さくに声をかけてくれて……

(お似合い……だよなあ)

 はあ……とウットリとため息をついてしまう。

 院長はどちらか分からないけれど、渋谷先生は本当に本物のゲイらしい。テレビの中と、ネットの向こう以外で、本物に出会えるなんて思ってもみなかった。

(この病院で働いてて良かった)

 しみじみとそんなことを思っていたところ、後ろでコソコソ話している声が聞こえてきて、書類探しの手を止めた。

「二人、出来てんじゃねーの」
「うわ、それって……」

 迷惑そうな声。背中がヒヤッとなる。

(やっぱりこういう風に言われるんだ……)

 理解がすすんできたとはいえ、まだまだ、偏見は根強い。もしかしたら、50年くらいたって、世の中がジェンダーレスの教育をされてきた人間ばかりになったら、こういう偏見もなくなるのかもしれないけど……それまではこうして息をひそめているしかないのかなあ……

(って、そのころには、僕、73歳かあ……)

 全然、想像がつかない。……と、

「何言ってるんですか? 先生方」

 刺々しい声に我に帰った。看護師の西田さんだ。

「院長にはご家庭があるし、渋谷先生にだってお相手が」
「相手がいるっていってもさ」

 ふっと鼻で笑った石橋先生。

「恋愛対象がオレらってことに変わりはないでしょ。オレ狙われるかもしれないから気をつけないと!」
「は!?」

 そばで聞いていた看護師軍団が一斉に抗議の声を上げた。

「自分が相手にされるとでも思ってるんですか?!」
「石橋先生になんか誰も興味ないですよ!」

 図々しい!とか有り得ない!とか、ただでさえ「イジラれキャラ」の石橋先生、言われ放題だ。でも、

「何だよ、ひでー言われようだなあ」

 そう言いながら、ちょっと喜んでる風の石橋先生。……マゾなのかな。

 マゾは良くて、ゲイはダメ?

 何なんだろうなあ……。

 嬉しそうな石橋先生を見ていたら、先ほどとは違うため息が出てしまった。

**

 その日の帰り、偶然、ロッカー室の前で渋谷先生が突っ立っているところに出くわした。

「渋谷先生?」
「え?!」

 声をかけると、ビックリした風に振り返った渋谷先生。抜群に可愛い。噂によるとアラフォーらしいけど、全然みえない。

「どうしたんですか?」
「いや……その……」

 先生は言いにくそうに口籠りながら、僕を見返した。

「ロッカー室、中に誰かいるか見てもらっても……いいかな?」
「?」

 何で?と思ったけれど、とりあえずノックして、開けて入ってみた。誰もいない……

「誰もいません……けど?」
「良かった。ごめん、悪いんだけど、ここでドア開けて待っててくれる?」
「?? はい……」

 頭の中、ハテナでいっぱいだ。
 でも、渋谷先生とは仕事では何度も話したことあるけど、プライベートで二人きりで話すなんて初めてで、ラッキー!ってテンション上がってきた。

(間近の渋谷先生、やっぱメチャメチャ綺麗だなー。顔小さいなー)

 ……なんて、感動を噛みしめるよりも早く、

「ごめん、ありがとう。助かった」

 渋谷先生がジャケットを手に慌てたように出てきた。

「須藤さん、仕事終わり?」
「あ、はい」

 渋谷先生は誰のことも「さん」付けで呼ぶ。僕的にはせめて「須藤君」とか、仲良くなって「とも君」とか「とも」とか呼んでもらいたいところなんだけど……

 って、これ、今まさに、お近づきになるチャンスじゃん!

 心臓の高鳴りを抑えながら、先生に問いかける。

「渋谷先生ももう帰りですか?」 
「うん」

 シュッとジャケットを着る姿、メチャメチャカッコいい。

 よし。頑張れ僕。頑張れ。と、自分を励ましながら、先生を見返す。

「じゃ、一緒に帰りませんか?」
「……え」

 またビックリしたような顔をした渋谷先生。だから可愛いすぎるって。同じくらいの身長なので、余計にその綺麗な顔が近くてドキドキする。

「僕、先生と帰る方向一緒なんです。せっかくだから」
「あ……そうなんだ」

 先生はニッコリとすると、

「じゃあ、一緒に帰ろう」

と、うなずいてくれた。やったー!っていうか、その笑顔、眩しすぎるー!

**

 帰り道、ロッカー室に入るのを躊躇していた理由を聞いてみた。はじめは誤魔化そうとした渋谷先生だったけれど、しつこく聞いたらようやく教えてくれた。

「おれがロッカー室にいるときには着替えたくないって言ってる先生がいるって聞いて……」
「え……」

 どうして、と言いかけて、引っ込めた。
 石橋先生のさっきのセリフを思い出したからだ。

『恋愛対象がオレらってことに変わりはないでしょ。オレ狙われるかもしれないから気をつけないと!』

 バカバカしい、と思う。誰もが対象なわけないじゃん……って、渋谷先生だって思ってるだろうに……

 渋谷先生が困った様子で続けた。

「小児科の診察室の中にスペース作ることにしたから、それが出来るまでは我慢してもらうしかないんだけど……」

 渋谷先生は、白衣を羽織っているだけで着替えてないから、置ける場所があれば充分なのだろう。

 だったら。

「先生、そしたら、それが出来るまで、僕のとこ使います?」
「え」

 僕のとこ?

 だから、そのキョトン顔、可愛すぎるって。という、ツッコミを飲み込んで、言葉を続ける。

「事務の中に倉庫あるでしょ? そこ入って右奥のとこ、僕、私物置いてるんです」
「そう……なんだ?」
「ロッカー室まで荷物置きに行くの面倒くさくて」

 昔の書類(そのうちデータ化する、といって、何年も放置されている)がダンボールに入って山積みされているスペースなのだ。棚にハンガー引っ掛けられるので、コートも置ける。

「ハンガー2個あるから、1個どうぞ」
「……いいの?」

 慎重な様子でこちらを覗き込んだ渋谷先生に、大きく、こっくりとうなずいてみせる。

「どうぞどうぞ」
「でも……」
「あ、噂のことなら気にしないでください」

 ビシッと手で抑えてみせる。
 お近づきになるなら、今、このチャンスをおいて他にはない!

「実は……」
「うん」

 ちょうど駅前の信号待ちで止まったところで、声をひそめて言うと、渋谷先生がこちらに身を寄せてくれた。ドキドキが止まらない。

 ドキドキしながら、僕は人生で初めてカムアウトをする! ネットではあるけど、実際の知り合いにするのは初めてだ。

「実は……僕も、ゲイなんです」
「え」

 渋谷先生、目を見開いて……

「……そっか」

 ふっと、笑った。
 その笑顔は何だか儚げで……

(似てるなあ……)

 僕の友達のタツミの好きなアニメのキャラクターに似てる……と思ったら、無性にタツミに会いたくなってきた。先週も会ったばかりだけど。


後編に続く。

-----

お読みくださりありがとうございました!
慶君、職場仕様なので大人しめな上に、カミングアウト問題で弱ってて、いつもと違い過ぎてこそばゆい〜💦

お休み中もクリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当に本当にありがとうございます!

後編はほぼ書き終わっているので、金曜日に更新できると思います。お時間ありましたらどうぞよろしくお願いいたします。

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