創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

月の女王-11

2014年07月31日 15時59分03秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』7冊目のノートから、要約と抜粋。


 放課後、香・夕子・妙子でファーストフード店に。イズミは夏休み明けの修学旅行の説明会があったため、クリスと白龍だけが少し離れた席で香たちのことを見守っていた。

 香の封印について話すクリスと白龍。
 白龍曰く、香の深層心理にある変化をこばんている何かがなくなれば完全にとけるはず。それが何かはわからないけれど「キョウコ」というのに関係がありそうだ。
 キョウコのわだかまりがなくなれば封印はとけるけれども、逆に言うと、薄れてきているキョウコのわだかまりが復活すれば、また元に戻ってしまう可能性も高い。

 夕子と妙子と三人で楽しそうにはしゃぐ香。
 その姿を見ながら、クリスと白龍が心配する。
 妙子はリンクス=ホウジョウの仲間であることに間違いはない。ここまで妙子と仲が良くなっている香の気持ちを考えると・・・。

 白龍の瞳にふと遠くを見つめる光がともる。
「信頼していたものに裏切られるのはつらい」と・・・。

↓↓↓

「人を信じるのがこわくなる。自分すらも信じられなくなっていく。立っている地が崩れるように・・・」
 こめかみのあたりを両手でおさえ、白龍は静かに首を横にふった。
「あんな思いを姫には味あわせたくない・・・・・・」
「白・・・龍・・・」
「・・・・・・なんて、な」
 ふと顔をあげ、白龍は照れくさそうに、
「君と話しているとどうも感傷的になってしまうな・・・」
というと、手を洗ってくる、と席を立った。
「・・・どおしよう・・・」
 白龍の背中を見送りながら、クリスは一人ごちた。
「ふいうちだよなぁ、反則だよ・・・」
 うらめしげにいい、頭を抱えこむ。
 白龍が心の内を話してくれたことは大変嬉しい。
 嬉しいけれど・・・・・・
(何ていうだろうか・・・)
 この自分を。彼の家族を死にいたらしめた男の甥である自分を。
(・・・・・・白龍)
 何もかも打ちあけよう。そうすれば・・・分かってもらえるだろうか・・・。
「クリス?もう出るぞ?」
 いつの間にか白龍がトレーを持って立っている。
「・・・・・・ああ」
 立ちあがりながら密かに決意する。
(すべてを話そう・・・本当のすべてをだ)
 黙ったまま、クリスは白龍の後をついていった。

↑↑↑

 夕子と別れ、妙子と香の二人になった帰り道、同じ学校の女子生徒が、他校の生徒に絡まれているところに遭遇する。助けに入る妙子、クリス、白龍。
 その場はそれで終わったのだが・・・・・・。

 香はいったん家に帰り、イズミと合流してからクリスの家にいくことになった。本格的に能力の特訓をしたいらしい。

 部屋着に着替えたクリスと白龍は、リビングでコーヒーと香たちを待っていた。
 クリスは意を決して、白龍に話そうとする・・・が、何度もならされるインターホンの音に中断させられた。
(タイミングよすぎ・・・)
と、ソファにへたり込むクリス。しかし・・・


↓↓↓

『おっお待ちくださいっ』
 あわただしい高村の声に飛び起きた。
 嫌な予感がする。
「どうしたっ高村っなにが・・・」
 いいかけて言葉をとめた。リビングのドアを勢いよく開け、入ってきたのは・・・
「カッカトリシアッ」
『クリストファー!会いたかった!』
 きれいな縦巻きロールの金髪に、海の底のような深い青の瞳をもった小柄な少女が飛び込んでくるなりクリスに抱きついた。
『ちょ、ちょっとまて、カトリシアッ離れろっ』
 わたわたとクリスが慌てまくる。
 そこへ・・・・・・
「おじゃましまーす。玄関あいてたから勝手に入ってきちゃった・・・と、あれ?」
 香とイズミがカトリシアを見て立ちすくむ。
「か、香っ」
(タイミング悪すぎっ)
 ザーッと血の気が引いていくのが感じられる。
『・・・・・・『香』?』
 クリスの言葉にピクリと反応して、少女が香を振り返った。
『ふーん・・・・・・あなたが『斉藤香』・・・』
 上から下までじっくりと見ると、くすりとばかにしたように小さく笑い、
『へえ・・・『月の姫』なんてたいそうな名前の人だからけっこう期待してたんだけど・・・たいしたことないのねぇ』
「え?」
 早口の英語なのでまったく聞き取れない香。
『カトリシアッ』
 クリスが声を荒げるのにもかまわず、カトリシアは香の横にいるイズミを見上げると、
『目をそらしていたって分かるわよ。古沢イズミでしょう?古沢は何をしているの?自分の娘が月の戦士だなんて、報告があがっていないわよ。テーミスの血を持つすべての者に命令は下っているのに・・・これは裏切り行為だわ』
『・・・・・・父には知らせていません』
 イズミがうつむいたまま答えると、カトリシアが肩をすくめた。
『ふーん。そう・・・・・・。で、こちらの人が辻白龍ね。あなたはしょうがないわね。命令を知らなかったんでしょう?だって父親が・・・・・・』
『カトリシアっッ』
 顔色を変えてクリスが怒鳴りつける。しかしカトリシアはおかまいなしにクリスに微笑むと、
『ねぇクリストファー、どうして自分が月の戦士だって教えてくれなかったの?わかっていたら日本になんて来させなかったのに・・・』
『・・・・・・帰れ、カトリシア』
 怒りをこらえてクリスが言う。
『オレを、本気で怒らせるな』
 冷たく言い放ち、カトリシアのお供についてきている黒服の男二人を振り返ると、
『カトリシアを連れて帰ってくれ、今すぐ』
『し、しかし、クリストファー様っ。私どももマーティン様よりきつく言いつけられてまいりました。クリストファー様を連れて帰ってくるよう・・・』
『・・・・・・お前ら死にたいのか?』
 低くいうのに男二人は縮みあがった。クリスの能力は痛いほどよくわかっている。
『カッカトリシア様・・・』
『わかったわ。今日のところは帰ります』
 妙に大人びた表情でカトリシアは告げた。
『でも覚えておいて。クリストファー。あなたは必ず私のところに戻ってくる。必ずね』

↑↑↑

「今の女の子、誰?」
 予想通り、香が口に出した。会話が全編ネイティブイングリッシュだったので、話の内容はまったく分かっていない。クリスが返答に窮していると、
「クリスの叔父の娘、つまりいとこですよ」
と、今までずっと黙りっぱなしだった白龍が説明しだした。ぎょっとしてクリスが白龍を見上げる。
 白龍は淡々と、彼女は世界的に有名な『ホワイト=コーポレーション』総裁の娘であると説明する。
「すごーい。どうりであんたも金持ちなわけね・・・」
と納得する香。

 高村が、香とイズミにケーキ作りの手伝いを頼み、二人を台所に連れて行く。

 残されたクリスと白龍。

↓↓↓

 クリスは覚悟を決めて白龍と向かい合った。息をのみ、言葉を出す。
「・・・・・・白龍、オレ・・・」
「知ってたよ」
 さらり、と白龍はいい、テーブルの上のコーヒーを取り上げ静かに飲み下す。
「知ってたって・・・・・・」
 言葉の意味を取りかねて聞き返すと、白龍は目をふせたまま言を継いだ。
「これだけの金持ちでLA出身となったらホワイト家関連の人間だと考えるのが普通だろう?しかも君は『クリス』と名乗った。ホワイト家当主の姉エレン=ホワイトの長男の名前が『クリストファー』」
「・・・・・・」
「しかも君と一緒に住んでいる高村さんの名前は『高村芳和』、ホワイト家筆頭秘書官の名前が『高村芳信』。・・・・・・偶然も三度重なれば必然、と言ったのは君だよ、クリス」
「知って・・・知っていてお前・・・」
 思わず絶句する。白龍はゆっくりカップを元に戻し、印象的な瞳をこちらに向けた。
「だからといって君が仲間であるのには何の問題もない。今までの君の言動を見ていて分かっているつもりだ。君は僕と同じ考えを持っているんだろう?」
「白龍・・・・・・」
「確かに、家族を死に追いやった奴らは許せない、でも、君には何の責任もないんだからな。憎むのはお門違いだろ?」
「白龍・・・・・・」
 目をめいいっぱい見開いて、白龍を見上げる。黒い深い瞳にはいつも通りの澄んだ色がゆらいでいる。
「白龍・・・オレを信じてくれるのか・・・?」
「・・・・・・」
 ふっと白龍は笑ったようだった。
 胸の奥のつかえがとけていくのが分かる。
「ありがとう・・・」
 小さく、心をこめてクリスはつぶやいた。

---------------------

 眠いのでちょっと休憩。。。
 半分いってないし・・・・・・。

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月の女王-10

2014年07月31日 01時33分59秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』6冊目のノートから、要約と抜粋その3。


 香の能力発動のおかげで、イズミと白龍が自由になる。
 体制を立て直し、反撃!と思ったが、
「またくるよ」
「香ちゃん、またねー」
と、余裕の微笑みのリンクスと、無邪気な笑みのスタンがバイクで逃走。

 アーサーも遅れてようやくやってくる。
 アーサーもうちで一緒に住んだらどうか、とクリスが提案していると、
「約束の時間に遅れちゃう!」
と、香があわてて駅に向かおうとする。

↓↓↓

「ちょっとまて!」
 走りかけた香を慌ててクリスが呼び止めた。
「なによ?」
「お前、よーく落ち着いて考えてみろ。あのな・・・」
 一瞬だけ白龍に視線を移し、承諾を求めてから話しはじめた。
「昨日も言ったけど、妙子はあやしい」
「だから・・・・・・」
「最後まで話をきけ。まず、妙子が転入してきたその日、お前は妙子とテニスをしていて、『妙子が』ボールを外に出してしまって、空き地にいって襲われた」
「それは・・・・・・」
「それに昨日、『妙子が』着替えるのが遅くなって更衣室に残っていたところをさらわれた」
「・・・・・・・・・」
「そして今日。『妙子に』呼び出されて出かけるところにこの騒ぎだ」
「・・・・・・偶然だよ」
 ぽつりといった香にクリスは冷静な口調で、
「偶然も三度重なれば必然と考えるのが当然だ。だいたい妙子は初めからお前に執着しすぎていておかしいと思ったんだ」
「だってそれは、小さいころ遊んだことがあるって・・・・・・」
「それ、なにか証拠があるのか?お前は覚えていないんだろう?妙子がそう言っているだけであって・・・・・・」
「妙子さんが嘘をついてるっていうの?!」
「だから・・・・・・いてっ」
 なだめようと伸ばした手を思い切りはたかれた。
「あんたこそなんか証拠があって言ってるの?!」
「だから三回も・・・・・・」
「それは偶然だって!」
「偶然じゃないっ」
「偶然っ」
「偶然じゃないっ」
「偶然よっ」
 叫んだのと同時に、ばんっと金の光が立ち上り、クリスに直撃した。
「うわわわわっ」
 クリスがバランスを崩しかけたのを白龍があわてて支える。
「サ、サンキュー。白龍・・・・・・」
「あんた、いきなりなんで転んでるの?」
 眉をよせて香がいうのに、クリスはムキになって、
「おー前っ!自分でやっておいて何言ってんだよっ」
「私、何もやってないわよ」
「やったっ」
「やってないっ」
「やったっ」
「やってないっ」
「やったっ」
「だから、やってないっ」
 再び金の光がクリスに向かって走り出す。
「うわわわっ」
「クリスッ」
 とっさに白龍とイズミがバリヤーをはったが、それを軽く破って、光の矢はクリスの足元で爆発した。
「いってーーーー!今のすっげー痛かったぞっ」
「そ、そんなこと私に言われても・・・」
「何もしてないとは言わせないぜっ香っ」
「え?えええ?私が?今の??」

↑↑↑

 そうこうしているところに、高村が車でやってきた。
 香の母からの伝言で、妙子が今日は来られなくなってしまった、と・・・。

「ほらっ三度目の偶然はなくなったじゃないのっ。二回くらいの偶然で人の友達悪く言わないでよねっ」
「はいはい私が悪うございましたっ」

 軽くあしらって、妙子との用事がなくなったのなら、みんなで海に行こう、と提案するクリス。
「スクール水着しか持ってないから嫌」
という香に対し、
「別にいいよ。初めから期待してないし。どうせお前の水着姿なんてたいしたことない・・・・・・」
と余計なことを言って香を怒らせたクリス。香の光の矢をあやういところでかわしながら逃げ回る。

 第一の封印がもう少しで解ける・・・



 翌日、香は妙に機嫌がよかった。
 連れていかれた海で、クリス・白龍・イズミ・アーサーにより、能力の引き出しの儀式が行われたのだ。

↓↓↓

「そんなこと私できないよっ」
「できる。今のお前にならできる」
 やけにきっぱりとクリスは言い、香の右側に立った。左に白龍、前にイズミ、後ろにアーサーがそれぞれ立つ。
「目をつむれ。心を真っ白にしろ」
「そんなこと言われても・・・・・・」
 いいかけて、やめた。
「・・・・・・あ」
 流されるような勢いで熱いものが伝わってくる。足元からどくどくと力がわきでてくる。
「!!」
 それが頭のてっぺんまでのぼりつめたとき・・・・・・
「香っ」
 くらり、と倒れこんだ。がっしりとクリスの強い腕が香を支える。
「・・・・・・いっつーーー」
「大丈夫か?!」
 のぞきこむ青い瞳があまりにも近かったので、香はぎょっとして飛び離れた。
「だ、大丈夫じゃないわよっ。何よっ今のはっ」
「何って・・・そうだな・・・」
 クリスは空き缶を拾うと、3メートルほど離れた岩場に置き、
「あの空き缶、吹き飛ばしてみろ」
「はあ?!そんなことできるわけないでしょ?!」
「できるよ。オレにだってできるんだから」
 言いながら手をかざすと、ぱんっと青い光が飛び出し缶をふきとばした。
「ほら、な?お前もできるって」
 缶を元に戻し、やってみろ、とうながされると、
「そんなこといってもねえ・・・」
 見よう見まねだ、と思って、クリスがしたように手をかざし、空き缶をにらみつけると、
「えいっ」
 かけ声と共に、がしゃがしゃがしゃっという音が響き渡った。
「あれ?」
 確認してみると、缶は元の位置にあるのだが・・・
「あっれえ・・・」
 その横にある岩が粉々に砕けていた。
「オレ、お前のこと怒らすのもうやめよっと・・・・・・」
 ぽつりとクリスがつぶやいた。

↑↑↑

 その後、訓練をしてなんとかコントロールは身につけられたけれども、そうするとパワーが激減してしまうという問題点にぶつかった。だが、激減といっても、今まで遭遇した『手』の化け物を退治するくらいには問題がないパワーはある。
「これでオレ達が四六時中守っている必要もだいぶなくなったな」
と、クリスに保障されて、香は単純に喜んだ。今まで自分だけが皆の足手まといになっていたことがかなりの重荷だったのだ。

 今日は大掃除。機嫌良く、一人で焼却炉にごみ出しに向かった香。
 そこで、広樹親衛隊の連中に取り囲まれる。先日謝ってきたメンバーとは違い、派手な子が多い。
 あることないこと言われる香。しらーっとしている香に業を煮やし、手をあげようとした親衛隊の手を後ろからつかむ妙子。
「あたしの大好きな香ちゃんに手をあげようとするなんて・・・許せないわ~」
 ターゲットを妙子に変えてつっかかってくる親衛隊を、軽くあしらってしまう妙子。
 親衛隊が退散したあと、お礼を言った香に対し、

「お礼なんていうことないわよっ。あたしはあたしのためにやったんだからっ」
「妙子さんのため?」
 きょとんと聞き返すと、妙子は香の手をつかみ、
「そうよっ。あたし香ちゃんにもしものことがあったら死んじゃうものっ死ぬのやだから香ちゃん助けたのっ」
「何それ?」
 眉をよせた香に妙子はやさしく微笑むと、
「だからようするにっあたしは香ちゃんが大切なのっ」

 香はあらためて思う。自分を大切だといってくれる友人をどうして疑うことができるだろう。

「あ、夕子ちゃん教室戻ってきたよっ。ずーるいよねぇ。校庭掃除なんてゴミ拾いだけだったんだってっ」
「えーずるーい!私たちワックスまでかけてるのにっ」
「ねー!その上夕子ちゃんたちお菓子までもらって食べたんだってっ」
「がーーんっ今度は絶対校庭掃除がいいーーー」

 たわいもない会話。たわいもない一日。いつまでも続いてほしい、と願う香。


----------------

 ようやく6冊目終わった・・・
 冊が進むにつれ、写してる量が増えてるような・・・

 まだ携帯がない時代なので、高村さんが香母の伝言を伝えにくるんですね~。
 いまだったら、メールとかラインとかだよね・・・。


 個人的に、うおっと思ったセリフを最後に写してみました。

 ええ。校庭掃除がゴミ拾いだけでお菓子までもらえたって話です。

 学生生活から離れて長いので、忘れてたよーーーー。
 そうだよねーーー大掃除とか担当分かれたよねーーー。
 なんて、ちょっと昔を思い出して、うおーーと思ったので書いてみた。

 お菓子もらえたって話、本当にあったことだと思った。
 これ書いてる私、現役の女子高生だったのでね~~。

 まあ、わたくし、思いっきり「ハザマの世代」なもんで、
 女子大生ブームにも女子高生ブームにも乗れなかったんですけどね・・・・・・。
 「ハザマ」とはうまいことネーミングしたもんですな。

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月の女王-9

2014年07月30日 00時30分53秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』6冊目のノートから、要約と抜粋その2。


 妙子との約束の場所に行こうとする香を止めようとするが、香はまったく聞き入れない。
 しょうがないので、クリス・白龍・イズミもついていくことにする。
 黙々と歩き続け、広い街路樹の大通りにさしかかったときに、野球のボールが飛んできた。少年野球チームが公園のグラウンドで練習している。
 白龍が足元に転がってきたボールを取ろうと身をかがめた時、バイクの音が聞こえてきた。
 白龍が何かにはじかれたように叫んだ。

↓↓↓

「よけろっクリスっ」
「え?!」
 ふりかえる間もなかった。クリスはいきなり道路の並木にたたきつけられた。目に見えない力で。
「な・・・・・・?!」
 立ち上がろうとした目の前をバイクが通り過ぎた。
「香っ」
「きゃ・・・・・・っ」
 悲鳴があがる。香の前に立ちはだかった白龍が思い切りはね飛ばされ、香がバイクにかつぎこまれたのだ。
「あんの野郎っおいっイズミッ」
 香の横にいたはずのイズミをふり返る。
「イズミ・・・?」
 彼女は驚いた表情のまま硬直している。
「か・・・なしばり?!ちっ」
 一時停止状態になっているイズミの横をかけぬけバイクを追う。
「・・・・・・なるほどね」
 敵ながら感心してしまう。初めに感覚の鋭い白龍の注意を他にむけ、戦闘に適している自分を一番に攻撃し、それと同時に強固な結界を張ることのできるイズミを動けなくさせる。その隙に香を連れて行くという寸法だ。
「でもそうは問屋が卸さないってねっ白龍!」
 それを合図にバイクにはねられたはずの白龍が風に乗って跳躍し、バイクの前にまわりこんだ。
 白龍の作ったいくつもの竜巻がバイクの進行を妨げる。
「クリスッそっち行ったっ」
 バイクがUターンし、まっすぐにクリスの方に向かってくる。香は先日と同様、運転者の前に乗せられている。クリスは身構えると、
「香っ伏せろっ」
 突進してくるバイクにむかって大きく叫んだ。香が身をかがめた瞬間、
「くらえっ」
 かけ声とともに、握りこぶし大の石を運転者に向かって投げつける。それが勢いよく黒いヘルメットにぶつかり、バイクが転倒しかかるところを、
「香っ」
 すばやく飛びかかり、香を抱き上げ着地する。バイクは運転者を乗せたまま、クリスの前で転倒した。
「大丈夫か?香」
「う・・・・・・ん」
 肯きながらもガタガタ震えている香の肩を力強く抱きながら、クリスはバイクの主に向き直った。
「いい度胸してるな。昨日の今日で出直してくるとは思わなかったぜ。スタン=ウェーバー」
「・・・・・・だってねえ・・・」
 よっこらしょ、と立ち上がり、スタン=ウェーバーはヘルメットをぬぎ、ブツブツと、
「あーあぁ、メットへっこんじゃった・・・。どうしよう。これリンクのなのに・・・」
「メットの心配より、自分の身の心配をしたらどうだ?オレは二度も忠告してやるつもりはないぜ。昨日のようにただで帰すなんてことは・・・」
 カッとクリスの右手が青白く光る。
「しないからなっ」
「クリス、ちょっとま・・・」
 横にきた白龍が止める間もなく、勢いよくまぶしい光がスタンに向かって直進する。スタンはどういうわけか逃げもせず、構えもしないで、ただつっ立っている。
「なんでよけない・・・」
 いいかけたところで、ぱーんと光が分散した。スタンの前方一メートルのところで光がキラキラと舞い降りてきている。
「な・・・・・・」
「だから止めたのに・・・」
「え?」
 白龍の言葉にクリスが振り返ろうとしたとき、
「あんぐらいの力じゃオレの結界は破れないな」
 スタンの横にゆっくりと現れたのは、黒ずくめの格好をした男だった。短い黒髪がツンツンと立っている。
「あっ」
 男をみたとたん、クリスが叫ぶ。
「お前は確か・・・り、り・・・」
「リンクス=ホウジョウ」
 白龍が言葉をつなぐ。
「別名『ブラック=リンクス』。二十歳。父親は日本人。母親はイギリス系アメリカ人。基本的な超能力はもちろん、治癒能力まで持ち合わせている。菅原司に仕えて七年。10段階評価で9」
「って、高村のデータに入ってた奴だよな」
 白龍の記憶力の高さに感心しながら、クリスが肯いていると、スタンが興味深そうに、
「なぁなぁ、リンクが9ならオレっていくつ?」
「6。ついでにいうとオレ7」
「えーっなんであんたのほうがオレよりいいわけ?!」
「さぁ?顔がいいからじゃないか?」
 しれっというクリスに律儀に白龍が訂正を入れる。
「高村さんは能力の総合評価をしているのであって顔は関係ない。それにリンクス=ホウジョウの9というのは、治癒能力が評価点をあげているのであって、戦闘能力の評価だけいったら8だったはず」
「どのみちリンクがいっちばー・・・・・・」
「能力はオレの方が上だとわかっているのなら、いまさら暴力沙汰にする必要はないな?」
 スタンの嬉々とした叫びをさえぎって、リンクスが言い放った。
「姫をこちらに渡してもらおう」
「やなこった。能力で負けてたってこっちの方が頭数多いんだからそっちの方が不利だぜ」
 言い返したクリスに、リンクスは薄く笑い、
「お前が言っているのは、南の火使いと北の水使いのことか?彼らの助けは期待できないぞ。火使いは今オレの部下に足止めされているし、水使いはオレが術を解くよう指示しない限りあのままだ」
「イ、イズミくん・・・」
 硬直状態のままのイズミを見て香の顔色が変わる。
「さぁ、姫・・・こちらへ。あなたがこちらにいらっしゃればすぐに彼女の術を解かせます」
「あ・・・・・・」
「行くな、香」
 クリスは動きかけた香をとっさに制すると、
「能力があんたの方が上かどうかなんて、本当は実際戦ってみなけりゃ分かんねえだろっ白龍っ」
 香を頼む、と言いかけたが、白龍の様子に口をつむぐ。イズミと同様、動作の途中で止まっているのだ。
「オレは自分の実力もわきまえず無茶をする男ではないもんでね」
 悠然と笑みをつくり、リンクスは言葉を継ぐ。
「さぁ姫、こちらへ・・・。悪いようにはいたしません」
「・・・・・・」
 一歩踏み出した香の前にクリスは飛び出すと、
「冗談じゃねえよっ誰が行かせるかっ」
 カッとクリスの全身が青い炎に包まれる。
「やれやれ、だな。スタン、手出しするなよ」
 組んでいた腕をほどき、手をぶらぶらとさせると、
「後悔するぞ」
 一言とともに、リンクスから炎が立ち上る。炎の色は群青。クリスと同じ青系統ではあるが、大きさはクリスの比ではない。そのことにクリスは気付けない。ただひどい圧迫感を覚えるだけだ。
「・・・いくぜっ」
「ま、まってっ」
 跳躍しかけた背中にしがみつかれてクリスがつんのめる。
「な、なんだよ、香」
「だめだよ、勝ち目ないよ」
 必死な香の目を訝しげに見返し、
「なんでそんなこと分かるんだよ?やってみなけりゃ・・・」
「やってみなくても分かるっ。炎の大きさがケタ違いだもん。力の差がありすぎる」
 香は言い切ると、リンクスに向き直り、
「私、一緒に行きます。だからイズミくんと白龍君を元に戻して。アーサーさんも自由にして。それに・・・この人にも手を出さないで」
「香っバカ言うなっ」
「バカなのはあんたでしょっ」
 香はきっとクリスをにらみつけると、リンクスの方に歩いていく。一歩一歩と確かな足取りで離れていく。
「・・・・・・いくなっ」
 姫・・・・・・姫。必ずオレが守るから・・・。
 海辺の少女と香の姿が重なる。
「いかないでくれ・・・・・・」
 行かないで・・・・・・今、そこに・・・・・・。
「香!!」
 クリスは衝動的に叫び、飛び出した。右手に青い気をため、思いっきりリンクスに投げつけた、が、
「ばかが」
 決死の一撃を侮蔑の言葉と共にはねつけられた。リンクスがすっと左手を構える。
「大人しくしてろよ、ガキ」
 さして力を入れた様子もないリンクスの左手から光が放たれた。
「・・・・・・ぐっ」
 耐えきれず、クリスが後ろに吹き飛ぶ。香が顔色を変え、リンクスにつかみかかった。
「ちょっと!手出ししないでって言ったでしょ?!」
「したくはないんですけど、彼がそうさせてくれないもんでね。・・・ほら、まだ・・・」
 ふらりとクリスが立ち上がる。
「いかせねぇよ・・・」
 青い炎が光を増し包み込む。金の髪が重力に逆らってなびきはじめた。
「どうしましょうねぇ」
 残忍な瞳になりつつあるリンクスにゾッとしながらも、香は果敢に、
「やめてっ。手を出さないでよっ。ちょっとあんたもっ。私が私の意思で行くっていってるんだから邪魔しないでよっ」
「冗談じゃねぇ・・・」
 香の制止の声もむなしく、クリスは両手を前にかざすと、
「くらえっ」
 どかっという音がして光はまっすぐにリンクスに向かったが、ぶつかる前にジュッと消滅した。
「な・・・・・・」
「しょうがねぇなぁ・・・・・・」
 リンクスが群青の光を手にあつめ、腕を振り下ろす・・・・・・と思った時だった。
「やめてっていってるでしょ?!」
 香が叫んだ。
 瞬間・・・・・・・・・
「?!」
 爆風がおこった。黄金のまぶしい光があたり一面を照らし出す。
 風で木々がしなり、砂利が巻き上げられる。 
「か、かお・・・・・・っ」


↑↑↑

とりあえずここまで写してみた!!
今まで全然戦闘シーン写してこなかったからさ。
一つぐらい残しておこうかな、と・・・。

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月の女王-8

2014年07月29日 01時02分44秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』6冊目のノートから、要約と抜粋。



第三章 思惑

 荒涼とした海辺で少女が一人たたずんでいた。黒いつややかな髪。やさしい瞳。はかなげな影。さみしそうに両腕を広げている。
(泣かないで)
 必死に呼びかける。彼女に聞こえるだろうか。
(泣かないで。一人じゃないから)
(オレがいるから・・・必ず守るから・・・)
 少女はふいっと背をむけた。そしてゆっくりと歩き出す。
(行かないで。今、そこに・・・・・・)
 手を伸ばし、彼女の肩に触れようとすると、
(・・・・・・!)
 彼女が消えた。残されたのは自分一人。
(・・・・・・姫)
 守りたい。命をかけて。守りたい。・・・だから。
 だから、今、そこに・・・・・・あなたのそばに・・・・・・。

「クリスッもう9時半っ。いいかげんに・・・」
 耳元で聞こえる聞き覚えのある声にクリスはぼんやりと目を覚ました。
「・・・・・・白龍、か?」
「いつまで寝てる気だ?!もう三回目・・・」
 ふと言葉をとめ、クリスをのぞきこむ白龍。
「なに?何か言ったか?」
「・・・・・・だから」
 クリスはごそごそと布団から這いでると、白龍の腕をつかみニッコリと、
「おはようのキスしてって言ったのっ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 十秒ほどの沈黙のあと・・・・・・
「いってーっ!なんだよっ本気で殴ることないだろー!!」
「殴られるようなこと言うからだっ」
 耳まで真っ赤になった白龍と頭をおさえたクリスが言い合いをしながら部屋からでてきた。
「おはようございます。クリス様。よいお目覚めで」
「・・・・・・高村。お前がちゃんと起しにこいよ。白龍じゃ・・・生傷が絶えない・・・」
 殴られたところをさすりさすりクリスがいう。白龍はツンっとコーヒーのお代わりを飲んでいる。
「まあとにかく朝食を。その前に着替えてきてください」
「えーめんどうくさい・・・いいだろ別にパジャマのままだって。誰が迷惑するわけでもないし・・・」
「いいえ。私が困ります」
 高村がきっぱりと言い切り、真顔で、
「クリス様にパジャマ姿でウロウロされると思わず襲いたくなるじゃないですか」
「・・・・・・」
 もはや何も言うまい、と白龍は決めたらしい。一方のクリスは、
「そぉだなぁ。オレも朝っぱらからそんな体力ないからそれは困るなあ・・・」
 などとブツブツ言いながら着替えに部屋に戻って行った。
「で?我らがお姫様はお目覚め?」
 記録的な素早さで着替えをすませ席についたとたんクリスが口を切った。
「もうとっくに。7時前には」
「そーれは休みの日だっていうのに早いねえ。能力のお目覚めもそんくらい早けりゃいいのにねぇ」
「・・・・・・」
 コーヒーに砂糖をドバドバ入れるクリスを気味悪そうに白龍が見つめる。これだけ甘党でありながら、モデル並みの容姿をキープしていられるクリスは、相当運動量が激しいということか。
「・・・そろそろやばいんじゃなかったっけ?予言の日は香の十八歳の誕生日の十日後だから、あと・・・」
「今日を入れてあと六日。それまでに『第一の封印』をとかなくては『第二の封印』がとかれたときに、その力をおさえきれなくて命を落とす可能性もある」
「・・・・・・」
 スクランブルエッグ相手に悪戦苦闘していた手を止め、まじまじと白龍を見上げ、
「そんなきっぱりはっきり・・・」
「事実だ。それにそんなことにならないために僕達がいるんだろう。万が一、『第一の封印』がとかれる前に予言の日がきてしまった場合は、僕達の誰かが受けとめればいい。能力の性格からいって僕かイズミさんのどちらかかな」
「でもそれって、むちゃくちゃ危険なんだよなぁ?」
「やむをえないだろう。それにそうなる前に斉藤さんの封印をとけばいいんだ。といっても、これはなかなか難しいな。封印をかけているのは今では斉藤さん自身なんだから」
「・・・うん。まずよいなあ、このままじゃ・・・」


↑↑↑

 高村が本庄妙子に関する報告書を持ってくる。
 母親が織田家の血筋だということだ。
 香に伝えて離れるように言わなくては・・・と相談している最中にイズミから電話。

 白龍がイズミからの電話に出ている隙に、高村がクリスに耳打ちする。
「カトリシア様の下の者が数人こちらにきているようです。それとジーン様がおそらく・・・。そうなる前に白龍君に話したほうがいいと思いますけど?」と。
 頭を抱えこんでクリスが言う。
「あいつの家族、ホワイト家の犠牲になってるんだぜ。オレがホワイト家中枢の人間だって知られたらこのままじゃいられない・・・」

 電話を切った白龍が血相をかえて飛び込んでくる。
「斉藤さんが、本庄さんに誘われて出かけるそうですっ」
「ワナに決まってんじゃねえかっ」
 あわててベランダから飛び降りる二人・・・。


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夏休みのためなかなかパソコンの前に座れません。
とりあえず、ここまで!アップしちゃいます~~。

もう8まできてしまった時点で、「小説ネタ帳」カテゴリから独立すべきな気がしてきた。
そのうち変えよう・・・。(変えました)
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月の女王-7

2014年07月27日 00時53分01秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』5冊目のノートから、要約と抜粋その2。



 放課後、クリスの家をイズミと共に訪れた香。
 今日のように自分をかばって誰かが怪我をしたりしたら嫌なので、目覚めさせたいと言う。
 クリスとアーサーは見張りに出たため、白龍とイズミが教えることになる。

↓↓↓

「では、簡単なものからはじめましょう。斉藤さん、『気』というものをご存じですか?」
「気功術とかの気?」
「ええ。僕達が使っているのはそのようなものです」
 ボッと白龍の右手に白い光がともった。
「精神の集中によって自分の中にあるエネルギーを結集させ、そして外に出す・・・」
「へええ。きれいねえ・・・」
 感嘆の声をあげた香に、白龍は深く肯くと、
「見えるんですね?これが」
「え?どうして?だって・・・」
「普通の人には見えないんです。これは」
「あ・・・・・・そうなんだ」

↑↑↑

 香は白龍が白、クリスが青、アーサーが赤のオーラを持っていることを分かっていた。
 イズミが深い漆黒のオーラを持っていることも見ることができた。

 香は神経を集中させ、左手からオーラを出そうとするが・・・
 意識が遠ざかり、昔の記憶がよみがってきた。
 キョウコという少女が現れ、香の右手を引いて歩いていく・・・

↓↓↓

『ねえ、カオリちゃん、シンユウって知ってる?』
 振り返りニコリと笑うキョウコ。
「シンユウ?」
『うん。すっごく仲良しの友達のこというんだって』
「へえ・・・そうなんだ」
『だから私達も、シンユウだね』
「シンユウ・・・うん。そうだね」
 くすくすっと笑いあって・・・・・・そして・・・・・・
「キョウコちゃん?」
 つないでいた手が離れていく。いつも右側を歩いていたキョウコが・・・
『カオリちゃんと仲良くしない方がいいよ、キョウコちゃん』
 放課後の教室。ドアの陰にかくれてきいた自分の悪口。
『どうして?』
『香ちゃん、変、なんだよ。人の心がわかるの』
『うそだあ』
『本当だって。幼稚園一緒だった子がみんな言ってるんだよ。カオリちゃん変だって』
『ふーん・・・』
 いたたまれなくてかけだした。長くて暗い廊下。一人ぼっち。寂しくて・・・
『カオリちゃん』
 キョウコがいつものように呼びかけ、手を差し出している。
「キョウコちゃん・・・」
『いこう』
「うん・・・」
 右手から伝わってくるキョウコの想い・・・
『カオリちゃんはシンユウだもん・・・』
「キョウコちゃん・・・」
 涙が出そうになったのをこらえるため目をつむった。そして再び目をあけると・・・
『カオリちゃん、ごめんね』
 キョウコの苦しそうな顔・・・
『今日からヒトミちゃんたちと一緒に帰るから』
「どうして・・・?」
『・・・・・・』
 目をそらすキョウコ。流れ出る心の声・・・・・・。
『だってカオリちゃんと仲良くしてるとあたしまで仲間外れにされるんだもん・・・』
「・・・キョウコちゃん」
『カオリちゃん、変だっていうし・・・。一緒にいるとあたしまで変になるってヒトミちゃん言ってたもん・・・・・・』
「キョウコちゃん、私・・・変じゃ・・・」
 はっとキョウコが顔をあげた。
『カオリちゃんっ。今、私の考えてること読んだの?!』
「あ・・・・・・ちがう、キョウ・・・」
『やっぱりヒトミちゃんの言ってたこと本当なんだっ』
「キョウコちゃん・・・」
『カオリちゃんは変なんだっ』
「キョウコちゃん・・・・・・私っ私・・・・・・」
 離れていくキョウコの影・・・。
「私、変じゃないよっキョウコちゃんっ」
 真っ白な世界にこだまする自分の声。
「キョウコちゃんっ。キョウコ・・・・・・」
 果てしない孤独・・・・・・壊れていく世界・・・・・・。

↑↑↑

 香は意識の集中から戻ってきてもぼんやりとしていた。
 そこへクリスとアーサーが戻ってくる。
 一気に明るい雰囲気になったことに、白龍もイズミもほっとする。

 次は白龍が見張りに出て行く。

 アーサーが席を離れた隙に、クリスがアーサーのいつも持っている手帳を勝手に見る。
 中には緑の瞳のきれいな女性の写真が・・・・・・

 戻ってきたアーサーに誰なのか聞くと「マリア。とても大切な人」と返事が返ってきた。
 少なからずショックを受ける香。

 そこへ白龍から信号が送られてきたため、イズミとアーサーがベランダから飛び降りた。
 残された香とクリス。
 クリスは香に「アーサーのこと好きなのか?」と直球で聞いてしまう。

「好きっていうか、憧れてたの」と香。
 でも、写真をみて諦めがついた、という。
 こんなにかわいい彼女がいるなら、私なんかが叶うわけない、と。

 それに対し、クリスは思わず「そんなこと、ない。香はかわいいよ」と言ってしまう。
 ひるんだ香に、ゆっくりと顔を寄せようとする・・・が、途中で我に返り、
「なーんちゃってっ」
と、冗談ですませる。香が怒り、その場は収まる。
 クリスはいったん部屋からでて、「やっぱりちょっと・・・きついな・・・」とつぶやく。

 その少し前、見張りに出た白龍。
 敵らしき影を追い、風を放つと、その先で女性の悲鳴が上がった。
 近づくと、凛とした美しい女性が一人・・・
 怪我をしたらしい彼女に思わずハンカチを差し出す。
「どうして?あなたは私の敵・・・」
 問われたが返答できない。
 確かに敵なのに、傷つけてしまったことを後悔している・・・・・・。

 イズミとアーサーが近づいてきていることに気がつき、
「逃げてっ」
 とっさに口に出して自分でも驚く。
 立ち去ろうとした彼女に、名前を聞く。
「・・・名前、は?」
「桔梗」
 ふわりと微笑み、彼女は闇の中に吸い込まれていった。

「白龍、どこだ?!」
 イズミの問いに、白龍は答える。
「すみません・・・逃がしました・・・」
「そうか・・・気にするな」
「・・・・・・」
 逃がした、では逃げられたともとれるんだな、と白龍はぼんやり考えた。


 ワッフルをめぐり、クッションを投げ合って戦う香とクリス。
 止めにきた高村の言葉から、高村の初恋の人がクリスの母エレンであることを聞く。
 エレンが十年前に事故で亡くなったことも聞き、ぶしつけなことを聞いたことを謝る香。

 会話の流れから、自分に自信があるんだね、とクリスに言う香。
 クリスは「そりゃ当り前。自分が自分に自信を持たなかったら、他のどこの誰がオレに自信もつんだ?」と。
 香は自分に自信ない・・・と話す。
 クリスは「だからお前かわいいって」「守ってあげたいって感じ」と、今度は少々ふざけた感じにいう。
 照れも通りこして呆れる香。

 話の流れから、妙子の話題に。
「オレと妙子のどっちを信用する?」の質問に、
「妙子さん」と即答の香。ガクッとするクリス。

「だってあんたウソばーっかり言ってるんだもんっ」
「じゃあ、妙子がウソをついてないって言い切れるのか?」
 妙子のことを信用しているのか、と問われ、「信じてる」と答える香。


↓↓

「信じてる、よ」
「あ・・・・・・っそ」
 なんか変、な表情をしてクリスが言う。
「なんでそんなこと聞くわけ?」
「別に・・・ただ妙子がなんのためにお前に近づいたのかわかるまでは・・・」
「・・・どういう意味よ?」
 ずいっと身を乗り出す。クリスは一瞬つまったが、
「妙子はあやしい。信用しないほうがいい」
「理由は?」
「理由は・・・その・・・」
 口ごもったクリスに香はピシャリと言い切った。
「理由も分からないのにそんなことできない」
「・・・・・・」
 何もいわず紅茶を飲むクリスの横顔を香はどうもすっきりしない気持ちで見上げていた。


↑↑↑



ふーーーーーーーーーーーーーーーー
ようやく第2章終わった・・・次から3章。


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