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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 14-2(泉視点)

2016年12月30日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 それから諒と侑奈とオレの三人は、いつも一緒にいた。
 登下校も毎日一緒。そして、放課後も毎日のように侑奈のうちに遊びにいった。

 三人でいる時間は穏やかでとても心地がいい。三人三様に好きなことをしていられる。

 侑奈は他の女子みたいにキャンキャンうるさくないところがいい。オレ達と波長が合うようで、一緒にいてすごく楽だ。それに何より顔が可愛いところが気に入っている。人形みたいで見ていて飽きない。


「優真、侑奈ちゃんのこと好きでしょ!?」
「うん」

 姉達に聞かれて素直にうなずくと、二人は、きゃあっと声をあげた。

「やっぱりね~可愛いもんね?」
「これでお母さんも安心するね!」
「?」

 お母さんが安心するって、何?

 聞くと姉達はアハハと笑って、

「お母さん結構本気で優真のこと心配してたからさー」
「あんたずっとお隣の諒君にベッタリだからー」
「優ちゃんがそっちの道に行ったらどうしようって」
「そうなったら……」

 きゃ~~とまた笑う姉達……

 意味が分からない……

「そっちの道って何?」
「そっちはそっちよ~~」
「まあとにかく侑奈ちゃんなら安心!」
「頑張ってね!」
「???」

 姉達の言うことはよく分からないことが多い。

 でも、侑奈を「好き」ということは、歓迎されることなんだ、ということは分かっていた。

 さすがにオレも5年生なので「恋愛」というものが世の中にあるということくらい知っている。そして、それは、男子は女子に、女子は男子に抱く感情だということも分かっている。

 だから、諒に<一目惚れ>したと思ったのは間違いだってことも分かってる。諒のことが大好きで大好きで、ずっとずっと一緒にいたいって思っているオレのこの気持ちが「恋愛」ではないってことも分かっている。だって諒は男だから。


「泉は好きな女子いる?」

 学校でクラスメートに聞かれた時、すぐに頭に浮かんだのは侑奈だった。侑奈は他の女子とは違う特別な子。だから、

「オレはユーナだな」

 そう答えたら、みんなに、おーとか、わーとか騒がれて、がんばれーと言われた。「好きな女子」がいることは、すごいこと。大人っぽいこと。いない奴はガキ。そんな感じ。

 だから、お母さんが安心した、というのは、よくわからないけど、とにかくいいことのようだ。


「諒は? 好きな女子は?」
「…………よくわからない」

 ある時、諒にコッソリ聞いてみたら、諒は慎重な様子で言った。

「一番好きなのは優真なんだけどな」
「ばーか」

 可愛い可愛い諒。グリグリと頭をなで回してやる。

「そんなのオレだって諒が一番好きだけどさ~それは違うだろ~男なんだからさ~」
「そうだよね」

 くすぐったそうに笑う諒。頭を撫でられて嬉しそう。昔から全然変わらない。

「オレは侑奈にしたぞ。侑奈、顔が可愛いからな」
「ふーん。そっかあ……」

 すごいなあ、優ちゃんは。もう好きな人がいるんだあ、と、尊敬の眼差しで見上げてくる諒。やっぱり諒は可愛い。大切で大好きでたまらない。いつまでも一緒にいて、いつまでも守ってやりたい。オレが守ってやるんだ。


 そう、思っていたのに……

 6年生初めの身体測定で、諒がオレよりも3センチも背が高くなっていることが発覚した。背の順も、諒が一番後ろ、間に一人挟まって、3番目にオレ、になってしまった。

 その後も、諒は一人だけ時間の進みが早くなったみたいに、どんどんどんどん背が伸びていった。成長痛で膝が痛くて、体育を見学することが何度もあったくらいだ。

 そして、4月からずっと続いている風邪みたいな症状が、声変わりによるものだと気がついたのは夏になってからだった。元々そんなにお喋りではない諒は、声がひっくり返ることを気にして、ますます話さなくなってしまった。

 華奢だった肩のラインも妙にしっかりしてきて、儚げだった面差しも大人びてきて……

(………どうしよう)

 オレは焦っていた。
 諒がオレの腕の中から出ていってしまいそうで……嫌だ。


***


 6月下旬。体育の水泳授業の初日。

 クラスのバカな奴ら数人が、諒の着替え用のタオルを取り上げようとしていることに気がついて、あわてて助けにいった。

 諒の下半身は、オレ達とは違う大人びたものに変化していたので、みんな興味津々なのだ。

「そんなに人のもんみたいんなら、オレの見せてやろうか~?」

 そういってふざけて皆を追い払い、何とか守ってやれたけど、諒はほとんど泣きそうだった。

 その後の水泳の時間中も、奴らは、イヤらしい話をして盛り上がっていて、

「やべ~~女子の水着姿みてたら、オレ~」
「オレもオレも!」

 ゲラゲラ笑いながら股間を押さえたりしていて……。

 諒はオレの横に逃げてくると、オレの腕をぎゅっとつかんで、

「ああいうの、ヤダ」

 ボソッと言って、唇をかんだ。
 諒は下ネタが嫌いだ。そして、自分の体の変化もものすごく嫌がっている。オレも早く同じになって安心させてやりたいのに………

 でも、こればかりはどうしようもない。
 兄ちゃんに聞いた通り、好きな女の子(オレの場合は侑奈だ)のことを考えながら、自分で擦ってみているけれど、気持ち良いような気はしても、期待するようなことは何も起こらず………


 そうこうしているうちに夏休みが始まった。
 昨年同様、三人で侑奈の家で宿題をしたり遊んだり、プールにいったりしていたら、だいぶそんな変な悩みも忘れることができた。

 諒のうちに泊まりにもいった。今年は、諒の両親が長期の海外出張で帰ってこないとかで、昨年よりももっとたくさん泊まることができた。こうして、ずっとずっと一緒にいられることが、何よりもすごく嬉しい。


 そんな中………
 その瞬間は、突然やってきた。

 その思いは、オレの中にストンと落ちてきたのだ。


 諒のことが好き。
 恋愛感情として「好き」。


 それは違う、諒は男なんだから「好き」なわけない。そう何度も否定しようと思ったけれど、体は正直だ。


 あの時、一緒のベッドで寝ている諒を寝ぼけて抱きしめていることに気がついて……
 そうしたら、腕の中にいる諒が、なんだか妙に色っぽくて……

(………もっと強く抱きしめたい)
 そう思った瞬間、ジワリと下半身に熱が集まったような感覚がきた。

『やべ~~女子の水着姿見てたら、オレ~』
 そう言ってふざけて股間をおさえていたクラスメートの姿がふっと頭に浮かぶ。

(ちょっと待てよ……まさかこれが勃つとかそういう……)

 なんで今? なんで……
 思いつつも、諒のオデコがギュッとオレの胸におしつけられていることに、ドキドキしてきてしまう。

(諒………)

 可愛い可愛い諒……
 ずいぶん背が高くなってしまったけれど、それでもやっぱりオレにとってお前は守ってやりたい相手で……ずっとずっとそばにいたくて……こうして抱きしめていたくて……

(………)
 ますますウズウズするような感覚が増えていく。

(……触りたい)
 けど、今、手を動かしたら諒にバレてしまう……

 でも、でも、でも……

「………諒」
 思わず声が出てしまい、あ、と思ったが遅かった。

 諒はなぜか、びくっとビックリしたように体を震わせると、オレの腕から抜け出して、部屋から出て行ってしまった。

(なんで……?)

 しばらく、ぽかん、としてしまったけれど、思いついてハッとする。

「……まさか、バレた?」
 オレが今、勃ちそうになったことがバレたんだろうか……?

『ああいうの、ヤダ』
 あの日、下ネタを言って笑っていた奴らのことを、眉を寄せて見ていた諒の言葉を思いだす。

「まずい……」
 絶対に言えない、こんなこと。 

 というか、そもそも、この現象はなんだ。なんで諒を見て、諒を抱きしめて、勃ちそうになってんだオレ。おかしいだろ。諒は男なのに……

「………あ」
 諒が戻ってくる音がしたので、慌てて諒の寝るスペースに背を向けて横になる。いつもは仰向けに寝るのだけれど、仰向けたら勃ちそうなのがバレそうなので、横になってすこし身をかがめて隠すようにする。

 しばらくしたら、諒が布団に入った気配がした。
 諒の熱量、諒の息使いが背中から伝わってきて、愛しい気持ちが溢れて、衝動が抑えられなくなり、こっそり下着の中に手を入れてみた。

(……あれ?)
 今まで何度挑戦しても上手くいかなかったのに、今回はしっかりとした芯を持ち続けることに驚く。

(侑奈………じゃない)
 頭の中に思い浮かぶのは、侑奈の白皙ではなく……  

(諒……)
 諒の笑顔、諒のぬくもり、諒の声……

 諒は男なのに、だから違うのに。そう何度も否定したけれど、否定してもしても、打ち消す強さで熱を持ち続けるオレのもの……

(ああ、そうだよなあ……)

 ストン、と落ちてくる思い……
 それはずっと前から知っていたのに、ずっと気がつかなかったこと。気がつきそうになっても全力で否定してきたこと。


 諒のことが、好き。


 やっぱり出会いの<一目惚れ>は間違いじゃなかったんだ。

(………でも)

 この気持ちは絶対に誰にも知られるわけにはいかない。だって、諒は男なんだから……


---


お読みくださりありがとうございました!

上のお話の、諒視点が「5-1(諒視点)」になります。

今日が今年最後の更新でした。今年一年、本当にありがとうございました。
おかげさまでとってもとってもとっても幸せな一年となりました。
また来年もよろしければ、何卒何卒!!よろしくお願いいたします。
次回明後日……って、元旦!ですが、しれっと普通に続きを更新させていただく予定でございます。

皆様良いお年を……
今年一年本当にありがとうございました。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 14-1(泉視点)

2016年12月28日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘

☆今回、1984年生まれの泉と諒の小学校時代のお話のため、作中、1991年からはじまります☆

---


 それはまさに<一目惚れ>の瞬間だった。

 小学校の入学式の2週間前、隣に引っ越してきた一家がうちに挨拶にきた。
 その男の子は、すごい美人のお母さんの後ろに隠れるように立っていたのだけれども、挨拶するために無理矢理前に出されて……

「たかせ、りょう、です」

 泣きそうになりながら、なんとか名乗ったその姿を見た時……

(オレが守る!)
 何かに突き動かされるように、そう思った。

「オレ、泉優真! よろしくなっ」

 元気よく言うと、ウルウルした目で見上げられ……

「ゆうま……くん?」

 ふわっとした笑顔が広がり……

 それは、雷に打たれたような、という形容がピッタリの衝撃。

(オレは将来、こいつと結婚する!)

 こいつを一生守ってやる。

 そう、心に誓った。


 それから毎日毎日、一緒にいた。学校も1学年一クラスしかないので同じクラスになれた。これから6年間ずっと一緒だ。

 新築の諒のうちには「汚したり壊したりしたら困るから行っちゃダメ」と母からキツく言われたので滅多に行けず、うちには、5歳年上の兄を筆頭に3歳年上の姉、2歳年上の姉、6歳年下の妹がいてうるさいし狭いのでいられない。

 だから大抵、近くの公園で遊んでいた。雨が降っていても、トンネルの形をした遊具の中で二人でくっついて座って、黙って雨の音を聞いてるだけでも幸せだった。

 あまりにも寒い日は、児童館に行った。児童館のオレンジ色のカーペットの上で寝転んで、一緒に図鑑を見たりした。サバンナの動物たちの写真を見て、いつか二人で行って本物を見てみたいね、なんて話したりした。

「優ちゃん」

 諒はオレのことをそう呼んだ。頼りきった目でオレを見上げる諒が可愛くてしょうがなかった。
 諒はオレがいないと心配そうにキョロキョロして、オレの姿をみつけると、心底ホッしたような笑顔を向けてくれる。その顔が見たくて、わざとはぐれたり隠れたりすることがあることは秘密だ。


 こうして幸せな日々が1年を過ぎた頃……

「バカじゃないの?」
「ホントバカ」
「バカ優真」
「救いようもないバカ」

 ある日、姉二人にケチョンケチョンに言われた。言われることには慣れているけれど、今回ばかりは納得がいかなくて「何でだよっ」と噛みつくと、姉達は呆れたように言った。

「男の子同士は結婚できないの。そんなことも知らないの?」
「ビックリするくらいバカだね優真は」

「………………え?」

 また、騙されてるのかと思った。姉二人はよく共謀してオレを騙すので、またかと……

「またまたそんな……」
「え、ホントに知らないの? ねーお母さーん、優真がバカ過ぎるー」
「お隣の諒君と結婚するとか言ってるよー」
「え!?」

 母までも呆れたように、

「優ちゃん、結婚は男の子と女の子でするのよ? 2年生にもなってそんなことも知らないの?」
「…………だって」

 幼稚園の先生は「大好きな人とする」って言ってた。結婚したら、一生一緒にいられるって……。

 だから今、

「優真は好きな人いないの?」
「結婚したいくらい好きな人!」

 そう聞かれ、正直に答えたのだ。

「オレは諒と結婚する!」 

 と………。

 うつむいていると、母にイイコイイコと頭を撫でられた。

「まあ、それだけ諒君のことが好きってことね?」
「…………うん」

「結婚はできないけど、お友達でいればずっと一緒にいられるわよ」
「…………」

 友達………それは何か違う気がする。
 ムッとしていると、母が再び頭を撫でてくれた。

「そうね。あんた達は本当に仲が良いから、友達じゃなくて、親友ね」
「親友……」

 それならまだいいかな……特別な感じがして。


 だから次の日、いつもの公園で、

「お母さんがオレ達のこと『親友』って言ってたぞ」

 そう諒に言うと、諒はあのフワフワした笑顔を浮かべて、

「嬉しい」

と、うふふ、と笑ってくれた。それがもう可愛くて可愛くてしょうがなくて、

「諒っ」

 ぎゅううっと抱きしめて、頭をグリグリ撫でまわして、それからおでこをコツンとあてて、その綺麗な瞳をのぞきこみながら、オレは誓った。

「お前のことは、オレが一生守ってやるからな。何があっても必ず助けるからな」
「うん」

 両手をきゅっと握り合って、微笑みあう。

 オレは一生、お前と一緒にいる。オレが必ず守ってやる。


 そうしてそれからも毎日、一緒にいられるだけで楽しくて嬉しい時間を過ごしていたのだけれども……

 もうすぐ4年生が終わりになるある日……

 いつものように諒と一緒にいたら、1つ年上の女の子達に、さも嫌そうに言われた。

「男の子同士でベタベタして気持ち悪い」

 そのセリフに「結婚できない」と知った時と同じくらいのショックを受けた。オレ達がこうして一緒にいることは、気持ち悪い、と言われることなのか? いけないことなのか?

 頭をグルグルさせながら家に帰って、すぐに兄ちゃんに相談した。中学を卒業したばかりで、4月から高校生になる兄ちゃんは、とても頼りになる。

 兄ちゃんはフムとうなずくと、

「お前らずいぶん大きくなったからなあ……。小さい頃はいいんだよ。小さい子同士がじゃれあってても可愛いですむから。でも、これだけでかくなるとちょっと生々しいっていうか……」
「生々しい?」

 意味が分からない。
 でもでかいというのは本当で、オレと諒は今ではクラスで後ろから2番目と3番目の背の高さだ。でかくて邪魔ということだろうか。

「とりあえず、人前では抱きついたりするのはやめとけ」
「う………うん」

 そううなずいたものの……


「おはよっ優真っ」
「………ううう……」

 このふわっとした笑顔で名前を呼ばれると、わしゃわしゃ頭を撫でたくて手がうずうずしてしまう。

 諒が「女の子みたい」とからかわれるのは、言葉使いのせいもあるんじゃないか、と兄ちゃんが言うので、三年生からは「優ちゃん」から「優真」に変えさせた。

 でも、諒の「優真」は、他の人の「優真」と全然違う。呼ばれると顔がニヘラッてなるくらい、優しくて甘ったるくて……。時々「優ちゃん」って言うのも可愛いくて可愛いくて……

「あーもー我慢できねーっ」
「わわわっ」

 うりうりといつものように頭を撫でまわす。出会った頃はもっと身長差があって撫でやすかったのに、三年生の途中で少しだけ抜かされた。でも、頑張って牛乳をたくさん飲んで、抜きかえしたのだ。もっともっと大きく強くならないと……

「なにー?優真ー?」
「なんでもなーい。行こーぜ?」
「うんっ」

 いつものようにくっついて登校しはじめる。でも、途中で上級生女子軍団に会ってしまい、少しだけ距離を取った。

 オレは何を言われても構わないけれど、諒に嫌な思いはさせたくない。

 二人きりでいるのがいけないんだろうか? クラスの奴らとも一緒に遊ぶことはあるけれど、やっぱり二人のことが多い。クラスの奴らは何かと諒にちょっかい出してきて鬱陶しいからだ。

 どうしよう。どうすれば安心して諒と一緒にいられるんだろう……


 そうやって悩んだまま数日が過ぎ、5年生になったある日………救いの女神が現れた。


「相澤侑奈です」

 不機嫌そうに自己紹介したアメリカからの転入生。完璧に整った顔の女の子。せっかく可愛いのに、ニコリともしないのがもったいなかった。

 家が近所なので、登下校を一緒にするようになったけれど、しばらくの間は話しかけてもろくに返事もしてくれなかった。

 でも、ある日偶然、クラスの奴らが、侑奈の容姿をからかっているところに出くわして……

「お前らユーナが可愛いからそうやってからかうんだろー!男なら男らしく好きって言え!」

 そういって奴らを追い払ったのをキッカケに、

「………うち、寄ってく?」

 侑奈が帰りに誘ってくれて、オレ達『仲良し3人組』は始まった。

 侑奈はオレの救いの女神だ。



---


お読みくださりありがとうございました!
作中、1991年~でした。しばらく、泉君の過去話が続きます。

同性結婚法を世界で初めて成立させたのはオランダで、2000年12月のことだそうです。結構最近なんですよね……

年末ではございますが、何の捻りもなく通常運転(思えばクリスマスも何もしなかった……)、明後日に続きの更新を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 13-3(侑奈視点)

2016年12月26日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 夏休みに入って3日目。
 最高気温35度以上になるという猛暑日の中、諒がうちに来てくれた。

「別れるなら別れるで、きちんと会って話しがしたい」

 そうメールしたのに応えてくれたのだ。


 炎天下の中を歩いてきたはずなのに、汗ひとつかいていない涼しげな諒。その顔を見上げて、あらためて本当にキレイな顔をしているな、と思う。

 いつもは、玄関を入って廊下右手の台所を通ってリビングに行くんだけど、今日ははじめから正面の私の部屋に案内した。

「彼氏彼女の関係でいられたのは、この部屋の中でだけだったから、終わりもこの部屋にしたい」

 そう言うと、諒は「そうだね」と静かに微笑んだ。

 私の部屋とリビングは襖一枚を挟んだ隣同士。泉はいつも、私と諒が恋人時間を過ごしている間、リビングで一人待っていた。どんな気持ちであの時間を過ごしていたんだろう……。


「諒はこれからどうしたいの?」
「……どうって?」

「部活もずっとサボってるんでしょ?」
「……………」

 諒は大きくため息をつくと、ポツンと言った。

「部活……もういいかな、と思ってて」
「え」
「元々入りたかったわけじゃないし……」
「そうなの?」

 聞くと、諒は自嘲気味にうなずいた。

「そうだよ。泉が入ってほしいって言ったから入っただけ」
「………………」

 本当に、諒のすべては泉のためにあったんだな……。

「それなのに、やめちゃうの?」
「…………もういいかな、と思って」

 同じセリフを言ってうつむいた諒……

「もう、何もかも、全部、もう、どうでもいい………」
「どうして?」

「相澤だって、オレのこともうどうでもいいんだろ? だからオレ、別れるってこないだ……」
「…………」

 諒の手が震えてる……
 ベッドに腰かけている諒の隣に座り、その手をそっと包み込む。

「どうでもいいわけないでしょ。今でも好きだよ?」
「じゃあどうして離れようとする?」

 諒がすがるようにこちらを見てくる。

「オレはあのままで良かったのに、相澤も泉も変わろうとしてる……」
「…………そうだね」

 抱きしめたい気持ちをおさえて、その代わり握った手に力をこめる。

「……ごめんね、諒。私、諒のこと好きだけど………好きだからこそ、身代わりでいることが辛くなってきた」
「……………」
「…………あ、違う」

 言ってから気がついて訂正する。

「身代わりにすらなれないことが、辛い」
「……え」

 キョトンとした諒の額にそっと唇を寄せる。

「私……、この半年、幸せだったよ」
「相澤」
「大好きな諒からたくさん愛をもらえて、本当に幸せだった」
「…………」

 困ったように目をそらした諒の頬を囲ってこちらに向ける。まっすぐに目を合わせて本心を言う。

「だから、私、やっぱり『仲良し3人組』に戻りたい」
「………………」

 しばらくの沈黙の後、諒は私の手を頬からはがした。

「…………無理だよ」
「どうして?」
「だって………」

 諒はうつむいたままつぶやいた。

「オレ……一緒にいられる自信ない」
「どうして?」
「だって……相澤だって……」
「………諒」

 うつむいたままのその手を握り返す。

「諒……泉に打ち明けてみれば?」
「そんなこと」

「できない?」
「できない」

 首をふりながら言う諒。

「絶対、言わない」
「…………そっか」

 手を離し、再び諒の頬を撫でる。
 大好きな諒の頬……白くて滑らかで……

「じゃ、今日でさよならだね、私達」
「…………」

 くっと唇を噛み締めた諒。昔から変わらない。つらいこととか困ったことがあると、諒はいつもこうして唇をかんでいた。愛しくて胸が苦しくなる。でもそれをおさえて、顔をあげる。

「そしたらね、お願いがあるの」
「…………なに?」

 不安げな諒に、ニッコリと言う。

「最後に、身代わりをさせて」
「え」
「今日はお客さんもいないし、聞かれる心配ないよ?」
「お客さんって」

 諒がクスリと笑った。

(ああ、やっぱり大好き)

 その笑顔を見て、強く強く思う。
 やっぱり諒には笑顔でいてほしい。

 だから……

「……諒」
「…………」

 手を広げると、諒はぎゅうっと抱きしめてくれた。
 大好きな広い胸、力強い腕、耳元で聞こえる心臓の音。全部全部覚えてる……

「諒………」
「ユ…………」

 言いかけてやめた言葉を、拾い上げる。

「諒、ちゃんと呼んで?」
「…………」
「最後だから……ちゃんと、お願い。私しか聞いてないから大丈夫だよ」
「侑奈……」

 諒は小さく私の名前を呼んでくれると………

 息を大きく吸い込んで、大きく吐き出して……

 あらためて、私のことをかき抱き……、首元に唇を落としながら、切なく……切なく、その名前を呼んだ。


「ユウマ……」


 一度、言葉にすると、堰を切ったように、何度も何度もその愛しい人の名前を呼びはじめた諒……

「優真、優真……優真、優ちゃん……」
「…………」

 諒の頭を優しく優しく撫でてあげる。
 いつもいつも私を抱きながら、たぶん無意識に言葉にしそうになり、途中で止めていたその名前……。それを聞くたびに、自分が呼ばれているような錯覚に陥って少しだけ幸せになれた言葉。
 でも、本当は、そうじゃないって知ってた。諒が呼びたいのは、いつでも泉の名前だけだ。

「優真……優ちゃん……大好き、大好きだよ……」
「……………」

 大好きな大好きな諒。
 さよなら。恋人だった諒。

 もう一度、ぎゅうっと抱きしめてから、力強く押し返した。

 諒がハッとしたように、手を離す。

「あ、ごめ……っ、オレ……っ」
「ううん、違うの」

 自分でも驚くほど、幸福感に満たされている。

「ありがとね、諒」
 その気持ちのまま、リビングに続く襖に手をかける。

「ちゃんと聞いてた? 泉」

 そして、襖を開ける。
 リビングの窓から陽がさしこんで、私の部屋にも光が届く。

 その中で………仲良し3人組で一番の明るい光が呆然とした様子で立っていた。

「大丈夫? 泉優真君?」

 久しぶりにフルネームで呼んだけれど、泉は引き続き間抜けな顔をしたまま、石のように固まっていた。
 


----


お読みくださりありがとうございました!

ようやく泉君のフルネームを書けました。
そうなんです。泉は名字なんです。
侑奈と泉は、相澤侑奈・泉優真、なので、出席番号一番と二番です。なので初回の授業中のシーンも前後の席なのでした。

浩介先生は、基本的に学校の生徒のことは名字で呼ぶので、「諒君」ではなく「高瀬君」。そして「泉君」なのでした。

と、いうことで。
一番の嘘つき、泉優真君視点を次回からお送りします。
彼がどうして嘘をつくことを決めたのか……それがこの物語の主題だったりします。(あらやだ、また真面目な話……すみません(^_^;))

次回は明後日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 13-2(侑奈視点)

2016年12月24日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 私と諒が別れたという話は、あっという間に広がった。

「別れて良かったよ!最低だよあの男!」

 友達の寺ちゃんはプンプン怒っている。なぜならさっそく諒の周りに何人かの女子がはべっているからだ。でも、諒は今までとは違って、皆に素っ気なくしていて、手を出している風ではない。

(諒……こわいよ)

 女子達も、よくあんな機嫌の悪い諒と一緒にいられるな……と感心してしまう。私は怖くて近寄れない。あの別人みたいな冷たい目を向けられると思うと足が震えてしまう………


 そんな感じでむかえた一学期最終日。
 部活が終わった後に、ボランティア教室に顔を出したところ、驚いたことに桜井先生が来ていた。

 桜井先生は、事故から10日後に学校に復帰した。時々行動が止まってしまうくらい痛むようなのに休めないなんて、先生って大変……。でも、部活の顧問の仕事は夏休みまでは免除してもらったそうで、少しは楽、らしい。

「謝りたいことがあるんたけど………」
 桜井先生は、裏のお茶飲みスペースに私を呼んで、言いにくそうに切り出した。

 諒と私が別れたのは、自分が余計なことを言ったせいじゃないか……、という桜井先生。

「別れたこと、先生まで知ってるんだ……」

 わずか3日で先生にまで知られるなんて、諒って本当に有名人なんだな、と思う。

「余計なことって、何ですか?」
「あのー……、高瀬君、他の人を好きなのに相澤さんと付き合ってるっていうから……それは相澤さんキツイだろうって……このまま相澤さんに甘え続けるの?って……」
「……………」

 意外だ。諒がそんなこと他人に話すなんて……

「それで、諒はなんて……」
「あの……『今のままでいい。侑奈もいいって言ってくれた』……って言ってた」
「え?」

 侑奈? 先にその言葉に引っかかる。

「先生、諒、私のこと、侑奈って言ってました?」
「え? うん。言ってたよ?」

 肯かれ、驚いてしまう。
 小学校の6年生の時に呼び名を「侑奈」から「相澤」に変えて以来、諒は私のことを名前で呼んだことはない。でも人との会話の中で「侑奈」と言ってしまうということは、心の中ではそう呼んでくれているということだろう。わ……嬉しい。

「そっか……諒、やっぱり、今のままが良かったんだね……」

 なのにどうして、あんなこと言ったんだろう……。私だって、あのままずっと諒と付き合っていたかった………

(………なんて)

 それは嘘だ。
 文化祭の前日、諒が泉に抱きついているのを見て………

(どんなに頑張っても泉の代わりにはなれない)

 その事実に打ちのめされた。分かっていたはずなのに、5ヶ月間優しく激しく何度も抱かれて、泉の代わりになれていると勘違いしていた……

 そして、追い打ちをかけるように、泉が私のことを恋愛対象としてみていない、ということを知り、完全に自分の存在価値を見失った。

 諒にも泉にも必要とされていない………

 泉に求められていない私になんて、諒はもう興味がないだろうと思った。それを認めるのが嫌で、忙しいふりをして諒と二人きりになるのを避けていたところもある。

 それなのに……

『相澤も本当はもう限界だったんだろ』
『だからこの一か月、二人きりになるのさけてたんだよな?』
『別れてやるよ』

 諒のあんな言い方……
 まるで私を手放すのが嫌みたいな……

『今のままでいい。侑奈もいいって言ってくれた』

 侑奈……侑奈。

 諒は誰のことも名前で呼ばない。
 でも心の中では呼んでいる。
 それは特別ということ。

 私は諒の特別なんだ。

 そう思ったら、目の前がぱあっと広がって、私の気持ちなんて、もう、どうでも良くなってきた。


「あの……本当に申し訳ない……。おれ、恋愛スキル欠けてるくせに余計なこと……」
「あ、全然、そんなことないです」

 恐縮している桜井先生にブンブン手をふる。

「遅かれ早かれ別れる運命だったんです。やっぱり身代わりにはなれなかったから私」
「………………」
「こうなって良かったんだと思います」
「…………そう?」

 心配げな桜井先生にうなずいてみせる。

 この半年の間、どの女よりも長く諒の隣にいられた。何度も抱いてくれた。心の中では名前で呼んでくれている。もう充分だ。

 今はただ、心を閉ざしてしまった諒のことを助けたい。ただそれだけ。

 昔みたいな……諒が私のことを「侑奈」と呼んでいた小学校5年生の頃の、あの温かい『仲良し3人組』の関係に戻ることができたら………

 そのためには、やっぱり泉の協力が必要……だけど、最近の泉はよく分からない。

 ずっと、嘘をついて私のことを好きなふりをしていた泉……。先月は彼女が欲しい、と言っていたくせに、今月になって合コンを断ってきたという。意味が分からない……

「先生……」
 コーヒーをいれようとしている桜井先生の後ろ姿に問いかける。

「人が嘘をつくのってどんな理由があると思いますか?」

 桜井先生、うーん……と唸ってから、

「嘘には種類があって……自分のためにつく嘘と、人のためにつく嘘と……」
「…………」
「自分のためにつく嘘は……、何かを隠したいときとか……自分の立場を有利にしたいときとか……自分を良く見せたいときとか……」
「…………」

 あの単純馬鹿がそんなこと考えているかは甚だ疑問だけれども……

 とりあえず、帰りに泉のうちに寄ってみることにした。こういう話はやはり、メールではなく直接話すべきだ。



 私のうちは駅から徒歩15分のところにある。5分のところにも別の路線の駅はあるけれど、乗り換えが面倒くさいので15分歩いている。諒と泉と一緒だとすぐについてしまう距離も、一人だと遠い……。

(仲良し3人組に戻りたい……)

 あんな怖い諒は諒じゃない。諒はいつも静かに優しく微笑みながら私達のことを見ていて……それで、泉はいつも明るくて一人でうるさくて……

(…………あ)

 諒の家の前に人影がみえた。泉だ。泉と諒のうちは隣同士なのだ。

 三代続く和菓子屋を営んでいる泉のうちは、瓦屋根のザ・日本家屋。

 一方、諒のうちは、ご両親が有名な建築デザイナーなので、やたらとお洒落なうちだ。テレビの取材も何度か来たことあるし、雑誌にも時々載ったりする。
 普段はお手伝いさん任せで、ろくに家に帰ってこない二人が、取材の時だけは帰ってきて、家族団らんのスペースの紹介をしたりしているのが不思議でならない。

(…………泉)

 泉がインターホンの前で固まっている。押しても出てもらえなかったのだろう。部屋の電気はついているから、いるはずなのに……

「いず…………」

 声をかけかけて、息を飲む。

 泉が、一歩、二歩、と後ろ向きにさがり、諒の部屋の窓が見えるところで立ち止まったのだ。

「諒……っ」

 泉の悲痛な声……
 呼応するように諒の部屋の人影が動き……

「!」

 ザッとカーテンが閉められた。光が遮断され、窓が暗くなる………

「…………」

 やっぱり諒の扉は開かないのか……

 ため息をつきながら、泉の方に近づいていって……

(………え?)

 思わず、立ち止まる。
 暗くなった窓を見上げている泉の横顔………
 今まで見たことがない、切ない、切ない、顔…………

(……………………あれ?)

 なに? なんだろう? ゾワゾワする。
 大事な何かを見落としているような感覚……

 テストの時にも時々ある。全部答えを書き終わったけれど、なにかゾワゾワ気になって………。そういうときは、はじめから見直す。ちゃんと合っているかどうか一つづつ………



 私が諒と泉に出会ったのは小学校5年生の4月。その時にはすでに二人は親友同士だった。

 正義感の強い泉は、ハーフの私がからかわれたりすると、すっ飛んできて助けてくれた。当時、色白で華奢で可愛らしかった諒がクラスメートにからかわれても同様で……

『お前達のことはオレが必ず守ってやるからな』

 いつもいつも、泉はそういってくれていた。

 言わなくなったのは、中学になった頃からだったか……。諒が完全に泉の背を越してしまったというのが大きな理由かもしれない。当時から泉は身長のことをすごく気にしていた。

 中学から、諒は女遊びをはじめたけれど、泉は『ユーナ一筋』という感じで他の女には見向きもしなかった。………でも、本当は恋愛感情はなかったという……

『自分のためにつく嘘は、何かを隠したいときとか……自分の立場を有利にしたいときとか……』

 桜井先生の言葉が頭をかすめる。

『否定しなかったのは、「仲良し三人組」でいるためには、それが一番良かったからっていうかー……』

 泉の言っていた言葉を思い出す。

 泉は私が諒を好きなことを知っていた、と前に言っていた。それなのに、私を好きなふりをする……

(それってもしかして………)

 諒が私を好きにならないように圧力かけてたってこと?
 そうまでして、『仲良し3人組』を続けたかったってこと?

 本当に、そんな理由……? 何か納得がいかない……

(…………泉)

 今、切ない瞳で閉ざされた窓を見上げている泉をあらためて見つめる。こんな顔、一度も見たことない……

(私の知らない泉……)

 思えば、諒が事故にあった時の泉も、普通ではなかった。
 まるで亡くなったジュリエットを抱きかかえているロミオのような……


「あ」

 ようやく、間違っていた答えにたどり着き、口に手を当てる。

 単純サル………と思ってたのに……
 突き詰めて考えれば、答えは至極簡単だ。

「……嘘つき」

 泉、嘘つきだ。ずっと騙されてた。

 泉の好きな人は、諒、だ。




----


お読みくださりありがとうございました!
とうとう侑奈が答えにたどり着いちゃった?の回でございました。

昨日は2016年12月23日。
慶と浩介が付き合いはじめてからちょうど25年!
それなのにこの二人、浩介がインフル罹患中のため、離ればなれでした。(仕事柄、どちらかがインフルになった場合、治るまで別で暮らす約束になっているのです。様子を見る程度で、甘々に看病……はありません(^-^;)
浩介はマンションに、慶は同級生の溝部君のうちにいたわけですが……そんな話を書きたい気もしましたが、ここで現在の幸せいっぱいの浩介を書くのも何かなあ……と思ってやめました(^_^;)

次回は明後日更新……はちょっとあやしいかも………どうぞよろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 13-1(侑奈視点)

2016年12月22日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 諒が交通事故にあってから一週間たった。

 桜井先生が庇ってくれたおかげで、諒は打撲だけですんだ。だから、すぐに登校できたはずなのに、結局一週間学校を休んで……ようやく今日から学校には出てきた。
 でも、一言も口をきかないし暗いし怖いし、まるで事故にあって別人になってしまったかのようだった。

「傷が痛むのか? 桜井に申し訳ないとか思ってんのか?」

 泉はいつもの調子で諒にまとわりついていたけれど(さすが鈍感サル。私は怖くて近寄れない)、でも、そういう泉も、事故当初は相当おかしくなっていた。


 あの時……救急車が来るまで、泉は気を失った諒を抱き抱えながら、ずっと言っていた。

「ごめんな、諒、ごめん。約束守れなくて、ごめん。助けてやれなくて、ごめん」

 なんで泉が謝るのか、意味がわからない。でも、泉はずっとずっと謝り続けていて……

 その後、救急車で運ばれた諒を追って、私達もタクシーでその病院に移動した。
 検査の結果、打撲のみだと分かって安心してから、

「ねえ、なんでさっき謝ってたの?」
「え?」

 泉に聞いたけれど、泉はハテ?と首をかしげた。

「謝る? なんの話だ?」
「さっき、諒にしきりと謝ってたじゃん。約束守れなくてごめん、とか。約束ってなに?」
「…………は?」

 泉は「何言ってんだお前?」と、こちらがおかしなことを言ってるみたいな顔をして、

「そんなこと言った覚えねえよ」
「えーでも……」
「言ってない」
 そして、ぷいっと行ってしまった。
 でも、私、絶対聞いたし……と、もやもやもやもやしていたわけだけれども………


「うんうん。オレも聞いたよ~♪」
「でしょ?!」

 ボランティア教室でライトに会えたので聞いてみたら、同意してくれたので嬉しくなって叫んでしまった。

「だよね? 言ってたよね!」
「言ってた言ってた~。泉君、ちょっと変だったよね~はじめビックリするくらい叫んでたしねー」

 ライトはうんうん頷いてから、

「しかもさ~、あのあと泉君、合コン断ってきたんだよ。人がせっかく設定してやった専門学校のお姉さまとの合コン……」
「え、そうなの?」

 ついこないだ合コンの心得を教えろとか言ってたのに……

「今日終わったら一緒に泉君のバイト先突撃しようよー」
「あ、いいね。いこっか」
「いこいこ!」

 二人で盛り上がっていたら、事務の高橋さんに声をかけられた。

「侑奈ちゃん、マリサちゃん来たからお願いできる?」
「あ、はい!」

 裏のお茶飲みスペースから出て、玄関に迎えにいく。大きな丸い黒い目に、くるくるした黒髪の可愛い女の子が、私の顔を見るなりニコッと笑った。

「ユーナちゃん、いた」
「マリサ!」

 可愛くて可愛くてしょうがない。小学校1年生のマリサ。ぎゅーぎゅー抱きしめてからまっすぐ目を合わせる。

「宿題ある?」
「かんじ、さんすう、おんどく」
「おっけー。頑張ろう!」

 手を繋いで教室の中に入る。畳の良い匂い。入るなり、他のボランティアさんから声をかけられた。

「マリサちゃん、今日はユーナちゃんいてよかったね」
「うん」

 こくん、と頷いてくれるマリサ。マリサは一ヶ月前、私がボランティアに参加してすぐの頃からこちらに通うようになった子だ。母親がインドネシアの人で日本語が不自由なため、こちらで勉強を見てあげることになっている。

「マリサ、ユーナちゃんがいい」
「マリサ……」

 再びぎゅーぎゅーしてしまう。他の誰かの代わりでなく、私自身を求めてくれるマリサが愛しくて仕方がない。

「あ、いいなー、マリサ」
 ライトも教室に入ってきて軽口をたたいてくる。

「ユーナちゃん、オレも~~」
「ばか」

 迫ってきたライトをグーで押し返すと、マリサも他のボランティアさん達も楽しそうに笑いだした。
 自分自身が受け入れられていると実感できる場所。ここは本当に居心地がいい。


 泉の働く和菓子屋さん(泉のおじいちゃんのお店だ)を訪ねると、ちょうど泉が上がる時間だった。

「諒も呼び出して4人で飯食おうぜ~」

 泉がニコニコと言って、諒に誘いのメールを打ちはじめた。あんな不機嫌な諒を普通に誘おうとする泉の鈍感さが羨ましい……。

「お~。そしたら母ちゃんに飯いらないって連絡しないと……」

 そういって、ライトは母親に連絡したのだけれども、

「すみませーん、うちのママン、今わりと近くにいるらしくて、参加したいと言ってるのですがいいでしょうかー?」
「もちろん!」

 泉と二人即答する。
 ライトの母親とは、事故の日にはじめて会った。見た目は私達と年齢が変わらないくらい若くて、美人。でも、当たり前だけど、中身は大人で、あの時、すぐに救急車をタクシーで追いかける手配をしてくれたのは彼女だった。彼女がいなければ、あの時私たちはその場に立ちつくしたままだっただろう。

「ライトの母ちゃんのこと、諒に紹介できてないからちょうどいいな」
「お~。母ちゃん、バスケの試合見てる時から、高瀬君に興味津々だったから喜ぶよ~」

 そう私達は盛り上がっていたのだけれども………結局、諒は待ち合わせのパスタの店には現れなかった。


***


 翌日は、午前授業だった。

「帰り、諒も誘って昼メシ食って帰ろうぜ?」 
「………………」 

 昨日も来てもらえなかったのに、めげてない泉……その鈍感さ、尊敬に値する……。


 でも、帰り学活が延びてしまったため、他のクラスよりも終わりがずいぶんと遅くなってしまった。

「諒、先に帰ってねえだろうなあ……」
「………」

 こんな時、いつもの諒ならば、泉と私のクラスの前の廊下で待っていてくれるのに、やっぱりいなかった。

「諒のクラス行ってみようぜ?」
「うん……」

 階段を下りて、諒のクラスの教室の方へ進む。もう人の気配がしない階……。でも、諒のクラスの方から女性のはしゃいだような声が聞こえてきた。聞いたことあるような、ないような……

 そう思いながら、諒のクラスの教室のドアから顔をのぞかせ……息を飲んでしまった。

(……諒っ)
 窓際の諒の席、机に腰かけた長い髪の上級生……前に諒と付き合ってた人だ。その女が座っている諒の頬に手を添えていて、

(あ……キス、する)
 髪をかきあげながら、ゆっくりと顔を諒に近づけ……

「諒!」
「!」

 ガンッとものすごい音が横でして、ビクッと飛び上がってしまった。泉がドアを蹴ったのだ。元カノも、驚いた顔で固まっている。でも、諒は無表情でこちらを見返していて……

「お前何やってんだよっ」
 泉がツカツカと諒につめよる。

「浮気は許さないって言ったよな? 据え膳にもごめんなさいするって約束したよな? 忘れたのか?」
「…………」

 ふっと冷たく笑った諒……

「なんでそんなこと言われなくちゃなんないんだよ?」
「なんでって、お前にはユーナが……っ、ちょ、待てよっ」

 立ち上がって出て行こうとする諒の腕を泉が掴む。

「お前、なに考えて……」
「相澤とは別れる」

 え?

 いきなり宣言されて、固まってしまう。諒は冷たい視線を私に向けると、

「相澤も本当はもう限界だったんだろ?」
「え……」

「だからこの一か月、二人きりになるのさけてたんだよな?」
「それは……っ」

「別れてやるよ」
「……っ」

 氷のような目……怖い。言い訳のできない雰囲気に口をつぐんでしまう。

「諒、お前……っ」
「離せよ」

 諒は泉の腕を振り払うと、吐き捨てるように言った。

「そっちはそっちで勝手に合コン相手と仲良くやってろよ」
「は?」
「相澤もライトと付き合えばいい」
「え?」

 意味が分からない。呆気にとられている間に、諒は教室から出て行ってしまった。元カノが甘えた声で諒の名を呼びながら追いかけていく。

「諒……」
「な……なんなんだよあいつっ」

 泉が諒の机を蹴った音が教室の中でこだまする。

 あんな目、あんな言い方する諒、初めてみた。本当に別人みたいだ……



----

お読みくださりありがとうございました!
やさぐれ諒君の回でした。
そして鈍感・泉君。うーん……本当に鈍感なのか、鈍感のふりをしているのか……そこらへんは追々……

さてさて。作中2001年のため、本当は使いたいけど使えない言葉があります。
今回「セカチュー、ハグ、イケメン」を我慢しました。

諒を抱きかかえて叫ぶ泉の姿が「セカチューみたいだった」とライトに言わせたかったのですが、あいにく「世界の中心で愛を叫ぶ」の小説の刊行は01年4月ですが、映画は04年5月……。

「ハグ」も、侑奈とライトは使っていいのかな?とも思ったのですが、英語で会話している時ならともかく、日本語で会話している時には言わないだろうと思って避けました。
私が「ハグ」という言葉をハッキリと認識したのは、宇多田ヒカルさんが学校の校門の前かなんかで男友達とハグしているところを写真週刊誌にとられて、「ハグくらい普通するでしょ? みんなしないの?」というようなコメントをしたのを読んだ時でした。「へ~~~外国では『ハグ』っていうんだ~~~なんかオシャレ~~」と思ったことを覚えています。宇多田さんの卒業式?だったかな?そうするとそれこそ01年くらい?ですかねえ??
その後、やんわりと広がりつつ……、05年10月、夏川りみさんの「ハグしちゃお」がドラえもんの主題歌となった頃、一般的になったのではないか、と推測しています。

「イケメン」はもういいかな?どうなのかな?
99年1月発行の雑誌で紹介されたのが最初、という記述を読みましたが……
私の中では01年ではまだ一般的ではなかったような気がしてて……

今は当たり前のように使っている言葉でも、当時はまだなかったっていうのありますよね~。

なんて長々と独り言失礼しました。
次回は明後日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

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