獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その16)大阪市中央公会堂と棚塩集会場

2024-05-30 01:01:49 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。

 


Salt32 - 2つの集会の場 大阪と福島

2018年8月20日 投稿
友岡雅弥


今年は、中之島にある大阪市中央公会堂ができて、ちょうど100年目にあたります。

1911年、東日本大震災の百年前に、当時、日本最大の株式の町、大阪北浜の株式仲買人、岩本栄之助が、当時の100万円(だいたい十億円ぐらい)を大阪市に寄付、それをもとに作られました。

東京駅の設計で有名な辰野金吾と片岡安(二人で辰野片岡設計事務所を経営していた)が、実施設計を行いました。

東京駅と並ぶこの辰野の傑作にはいくつか特徴があります。

建物のファサード(正面)は、とても重厚で、みなさんも、いろんな写真でごらんになったことがあると思います。

でもある意味、それはこの当時の建築の共通様式の範囲内、といえるかもしれません。

より特徴的なことがあります。

建物側面にはたくさんの入り口があるのですが、ここに、かなり大きな庇(ひさし)があり、赤レンガ、雄勝石、緑の屋根の重厚な建築には似合わない、とても、庶民的というか、生活色の強い感じを辰野は出しています。

これは、岩本の意思が大きく反映されたデザインです。

岩本の意思とは、「ここは、利用する人たちだけではなく、広く、市民に開かれた場所である」ということで、雨宿りとかで、大勢の人がちょっと利用できるように、ということです。

普通の公会堂という利用目的からすると、外れているかもしれませんが、「公会堂」が、人々の交流する場と捉えると、根本的目的には合致しています。

一番大きなホールの名前にも、それが現われています。「講堂」ではありません。「大集会室」です。

だれかエラい人が来て、演説、講演をする場ではなく、たくさんの人々が集う場、つまり、「主体」としてそこには、「エラい人」ではなく、「一般参集者」、市民を見ているのです。

例えば、部落解放運動の黎明期、青年たちが自主的に差別撤廃運動を起こそうとしましたが、警察は危険思想の持ち主とみなし尾行などを続けます。当時の『中外日報』には「水平社の方は常に官憲の圧迫を受けて居るから余ほど固い意志を持たねば発会と同時に解散の憂き目を見るやもしれないと、前途を悲観しているものが多い」とあります。

1922年(大正11年)2月21日、青年たち、つまり大日本平等会が創立大会を行ったのは、大阪中之島公会堂。その時に、公会堂の天井から、全国水平社創立大会開催を案内するビラ1万枚が撒かれます。

そして、全国水平社創立大会がその10日後に行われるのです。

もちろん、部落解放運動だけではなく、多くの、自由と平和と平等を求める人たちが、以降、ここに集いました。

そう言えば、福島で三番目の原発を作らせなかった浪江町棚塩の農民たちが、その拠点としたのは、公民館という名の施設ではなく「棚塩集会場」。

集うこと、出会うことは、とても大切なことですね。

しかし、棚塩集会場は、今は、津波に襲われ、しかも、除染の残土・ガレキの巨大集積場のど真ん中に、ぽつんと立っています。

もし、浪江町に行かれたときには(その時は壊されているかもしれませんが)、是非、立ち寄って、地元民の反対への熱と、また、今の無念さを感じていただければ。

 

 


解説
中之島にある大阪市中央公会堂について、調べてみました。


大阪市中央公会堂

大阪市中央公会堂は、大阪市北区中之島にある集会施設。国の重要文化財。
設計デザインは、「懸賞付き建築設計競技」(最終的に13名が参加)により、当時29歳だった岡田信一郎のデザイン案が1位に選ばれ、その岡田のデザイン原案に基づいて、辰野金吾・片岡安が実施設計を行った。辰野金吾は東京駅の建築家でも知られる。
大阪市中央公会堂は日本有数の公会堂建築であり、外観、内装ともに意匠の完成度が高く、日本の近代建築史上重要なものとして2002年(平成14年)12月26日、国の重要文化財に指定された。
(Wikipediaより)

 


ネットで拾った大阪市中央公会堂の正面です。
きれいな建物ですね。

 

 


これは、建物側面の庇が分かりやすい写真をさがして拾ったものです。

大阪市中央公会堂、いいですね。いちど見学に行きたくなりました。

 

友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 


獅子風蓮