獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その2)「七轉八起。一榮一辱」

2024-05-01 01:11:10 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。

 


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。


Salt6 - 七転び八起きは「負けてもええで」という意味

2018年2月24日 投稿
友岡雅弥

「七転び八起き」は、負けたらあかん、がんばれ、立つんだジョーみたいな、意味でとらえられていますが、もともとの意味は、正反対です。

この言葉のルーツは、明治の文豪、坪内逍遥です。
言文一致体を唱えた人ですね。そして、ある意味、言文行一致のひとかも。言葉も文章も行動も一致したひとかもです。

彼は、東京帝国大学政治学科を卒業して、将来は、軍のエラいさん、政府のエリートになる道を進んでいたのですが、富国強兵、軍国主義へと進む、日本の未来に嫌気が差して、シェークスピアなどの海外文学の翻訳、小説家になりました。

小説家は、当時、売文屋といわれ、差別される職業でした。そして貧しい、売春をしていた女性と結婚しました。

その彼が、自分の人生をテーマにした小説「当世書生気質」で、世間は、「勝て勝て!男子として生まれたら、世界に冠たる日本の、軍人となれ!負けるな、弱音を吐くな」という風潮だけども、人生なんて、いろんなことがある。負けることもあり、勝つこともある。最後の最後に人生を振替って、まあ、ええことが、少しだけ多いぐらいが、1番いい。
負けるな、勝てなどという風潮に従うな、という意味で、「七転び八起き」を使ったんです。

そんな行き方は、当然、政府からにらまれることになります。

これが、「七転び八起き」 のもともとの意味なんです。

むりして、立ち上がらなくてもいいよ、人生、長いし、ちょっと、プラスぐらいでいいんだよ、という意味なんです。

でも、それが、昭和のど根性ドラマとか、「東洋の魔女」ニチボー貝塚などのスポーツ分野で、何度転んでも立ち上がるみたいな、使われ方をしたので、完全に、逆の意味ですり込まれました。

でも、七回、転んだら、立ち上がるのも七回ですよね。何度転んでも立ち上がるのならば、計算がおかしい。

原文を挙げておきます。

人生概して五十年 其五十年の其間にやア。失策もあるし、成功もあるし。恥もかく。名誉も得る。七轉八起(しちてんはっき)。一榮一辱。棺に白布を蓋ふにいたって、初めて其名誉が定まるんだ。たとヘ二度や三度恥をかこうが。何のそれしきにかまふもんか。

 

 


解説
「七転び八起き」は、負けたらあかん、がんばれ、立つんだジョーみたいな、意味でとらえられていますが、もともとの意味は、正反対です。

なるほど、「七轉八起(しちてんはっき)。一榮一辱」ですね。

 

たとヘ二度や三度恥をかこうが。何のそれしきにかまふもんか。

私も、座右の銘にしたいと思います。

 

ちなみに以前、NHKの朝ドラ「らんまん」に出てきた、主人公万太郎の住む長屋の住人である東大生・丈之助のモデルは坪内逍遥ではないかとネットで話題になったそうです。
山脇辰哉演じる丈之助は、坪内逍遥に似ているでしょうか。

 

友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 

獅子風蓮