獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

増田弘『石橋湛山』を読む。(その34)

2024-05-16 01:03:58 | 石橋湛山

石橋湛山の政治思想には、私も賛同します。
湛山は日蓮宗の僧籍を持っていましたが、同じ日蓮仏法の信奉者として、そのリベラルな平和主義の背景に日蓮の教えが通底していたと思うと嬉しく思います。
公明党の議員も、おそらく政治思想的には共通点が多いと思うので、いっそのこと湛山議連に合流し、あらたな政治グループを作ったらいいのにと思ったりします。

そこで、石橋湛山の人生と思想について、私なりの視点から調べてみました。

まずは、定番というべきこの本から。

増田弘『石橋湛山』(中公新書、1995.05)

目次)
□はじめに
□第1章 幼年・少年・青年期
□第2章 リベラリズムの高揚
□第3章 中国革命の躍動
□第4章 暗黒の時代
□第5章 日本再建の方途
□第6章 政権の中枢へ
□第7章 世界平和の実現を目指して
■おわりに

 


おわりに

(つづきです)

さて戦後の日本の政治外交は「吉田路線」と総称される。わが国はこの吉田路線の下で奇跡の経済復興を遂げ、国際社会の一大経済パワーの地位を確固たるものとして今日に至っている。しかしこの吉田路線も戦後半世紀を経て大きく揺れている。従来日本外交の前提としてきた超大国アメリカの衰退、いわゆるパックス・アメリカーナの終焉と、米ソ冷戦体制の崩壊という事態を迎える一方、国内では「五五年体制」、実質的な自民党一党支配の終了がある。もはや吉田路線を支える客観的条件が大きく様変わりし、わが国の政治外交は大きな転機に立っている。
では戦後の日本を方向づけた「吉田路線」にあえて「湛山路線」という補助線を引くとどうなるのか。結局吉田路線の「正の遺産」と「負の遺産」を浮き上がらせ、21世紀を迎えつつあるわが国の方向性を模索できるのではないか。

第一は、「正の遺産」として、経済大国の地位を維持しながらも、軍事大国の道を進まないということである。反吉田闘争に猛進した湛山は、吉田の対米従属路線を激しく攻撃しながらも、経済優先・軽武装主義では吉田と歩調を合わせる一方、鳩山や岸のような憲法改正・自衛力増強路線には与しなかった。

第二に、自力本願、自力更生を本旨とした湛山がもっとも危惧したのは日本の自主性の喪失であり、吉田流の他力本願であった。「仏造って魂入れず」、これが湛山の吉田に対する痛烈な批判の核心であったといえよう。翻って、経済大国日本は、その大きな体に比して「顔が見えない」と揶揄される。今こそ日本自身の理念、ビジョンを提示すべき時であり、そのためにも吉田流のアメリカ追随外交では国際世論からも国内世論からも支持されない。

第三に、ポスト冷戦時代を迎えた現在、またアメリカが「普通の大国」化する中で、将来にわたり日米安保体制が日本およびアジアの安全を保障することは困難である。相手を上回る報復能力を誇示して、未然に侵略的意図を断念させるとの対決方式はもはやベストとはいえない。将来が不透明な中国および北朝鮮に対処するため、日米安全保障条約はいぜん有効であるとしても、もはやアジア・太平洋地域全体の安全に寄与する役割は不完全となりつつある。しかも米口、米中関係は流動化しつつあり、中口関係はすでに改善されている。とすれば、当面、日米両国に中国、ロシアを加えた主要四カ国の信頼醸成に基づく安全保障の取決めの方向へと進まざるをえないであろう。それは取りも直さず、湛山がかつて唱えた脱冷戦のための「日中米ソ」提携路線にほかならない。加えて、昨今のアジア・太平洋をめぐる状況は、韓国、台湾、香港、シンガポールのNIES(新興工業地域)、タイ、マレーシア、インドネシアなどASEAN6ヵ国、中国などの順調な経済発展を背景に、APEC(アジア太平洋経済協力会議)を主軸としてNAFTA(北米自由貿易協定)諸国やオセアニア、インド、太平洋諸島をも巻き込みながら急回転しつつある。まさに経済が政治と軍事を包囲する状況を生んでいる。それはまた、湛山が戦時末期に唱えた戦後国際経済構想にも通ずる。などなど、湛山の提起した問題は21世紀を間近にしたわれわれに、いまなお語りかけてやまない。

 

 


解説
自力本願、自力更生を本旨とした湛山がもっとも危惧したのは日本の自主性の喪失であり、吉田流の他力本願であった。「仏造って魂入れず」、これが湛山の吉田に対する痛烈な批判の核心であったといえよう。翻って、経済大国日本は、その大きな体に比して「顔が見えない」と揶揄される。今こそ日本自身の理念、ビジョンを提示すべき時であり、そのためにも吉田流のアメリカ追随外交では国際世論からも国内世論からも支持されない。

現在、この本が書かれた当時よりもさらにアメリカの弱体化が進んでいます。
そのため、中東で、戦争状態を抑え込めず、極東では中国と北朝鮮による危機が迫っています。
それでも、日本の与党の政治家には、対米従属の顔しか見えません。
いまこそ、湛山の政治思想に学び、極東と中東、さらには世界の平和に貢献してほしいと思います。

 

(このシリーズは終了です)

獅子風蓮