マンガ『脳外科医 竹田くん』についての記事の続報になります。
d-マガジンから引用します。
週刊現代2024年5月11日号
医療スタッフが決意の告発「このままでは、また死人が出ます」
危ない脳外科医が
大阪の病院で働いている!
急患の骨折を見逃す/キズを縫合中、看護師の指に針を突き刺す/
カテーテルは失敗の連続/患者の情報を取り違える/
仮眠室やトイレで飲酒・喫煙
名門病院の救急部門に、去年やってきた中堅医師。着任からまもなく、現場は大混乱に陥った。その正体が、医療界を激震させている、あの「脳外科医」だったとは――。
恐怖の内部告発スクープ。
(つづきです)
「僕は診ない」といなくなる
A医師は救急部門の中核を担い、多くの看護師・救急救命士に検査や治療の指示を出す立場にあるが、その指示もデタラメだった。7月には、こうした報告が上がり始める。
〈患者診察をせず様々な検査オーダーを入力しており、なぜその検査が必要なのか分からないことが多々ある〉
〈間違えて(検査を)オーダーしていることがわかった。担当の(別の)救急医に不要と確認しキャンセル〉
まともな診察をしないまま、患者を入院させることも頻繁にあった。
〈患者様到着後(A医師は)8分で診察を終了された。この間一度も患者に近づくことなく触診どころか問診もなし。(中略)患者の顔も見ない、話をしない、触診もしない、検査データも見ない、レントゲン画像も見ないで入院となることがある〉
あげく7月末には、患者をさばききれず、症状・病状のデータを取り違えるミスまで起こした。困り果てたスタッフが他の医師を頼ると、A医師は露骨に不機嫌になる。昨年11月に、スタッフがある患者を循環器内科の医師に診てもらうよう提案したときには、
〈「僕が診ている患者なのにコンサル(相談)依頼するなんて失礼だ」(中略)「そんなの僕は知らない。それなら僕は診ない」と、まったく聞き入れてくれず。患者を放置し自室へ戻りその後は一度も患者を診ようとしなかった〉
と、院内で行方をくらましてしまった。さらに別のスタッフが憤る。
「私がいちばん許せなかったのは、昨年12月、発熱で運ばれてきた高齢の患者さんに、カリウム製剤を大量投与するよう指示したことです。カリウム製剤は命にかかわる副作用を起こすことがあるため、慎重に投与するのが当たり前です。
現場スタッフは『先生、それはできません』とはっきり意見しましたが、A先生は聞き入れない。『それでもやると言うなら、ご自分でお願いします』と言うと、先生は休憩室へ引っ込んでしまった。愕然としました」
この頃には、A医師の行状、さらに彼が『脳外科医 竹田くん』のモデルとなった医師であることは院内に知れ渡っていた。同時期、有志が職員アンケートを実施して院長に提出したほか、A医師の懲戒や退職を求める声も上がっている。
〈各患者の把握が全くできていない〉
〈何度も意見したり報告書を提出してますが、何も状況変わらない〉
〈カリウムの急速投与未遂やスタッフへの針刺し事故など今までの医師とは明らかに違う。患者の安全だけでなく、スタッフの安全も脅かされる〉
紙幅の都合で書ききれないが、A医師が招いた深刻なトラブルについて、半年あまりで30件以上の報告書が作成された。
「A先生の下にいれば、いずれ重大な医療事故が起こる。そのとき、責任を取らされるのは看護師や救急救命士といった現場スタッフです。資格を剥奪されるかもしれない不安から、すでに別の病院へ移った同僚もいます。なにより、何も知らずに搬送され、A先生の診察や処置を受ける患者さんに申し訳ない。徳洲会を愛する職員として、一刻も早く出ていってほしい」(冒頭のスタッフ)
なぜか幹部は「全力擁護」
メチャクチャなのは、診察や治療だけではなかった。救急医であるにもかかわらず、A医師は着任直後から毎日のように遅刻し、電話をかけても出ない。朝8時から勤務開始のところ、平気で9時過ぎに出勤し、患者情報の引き継ぎもままなら ないことが多発した。
ひどいことに、院内で酒まで飲んでいたようだ。
「仮眠室をA先生が使ったあと、ウイスキーの瓶やチューハイの空き缶が置きっ放しになっている。出勤するとすぐ仮眠室へこもり、トイレの個室でタバコを吸い、定時の19時より早く患者を放り出して帰宅してしまう。人として最低限のルールさえ守れないのです」(同前)
なぜ吹田徳洲会病院は、A医師を雇い続けるのか。キーパーソンと目されるのが、病院の顧問で救急部門長を務めるM医師だ。「日本の救急救命医療の第一人者」と言われる名医で、ある参議院議員の父でもある。
実はM医師は、以前A医師が勤めていた医誠会病院の元院長で、昨年に吹田徳洲会病院へ移った。
「M顧問がA先生を連れてきたことは、院内では公然の秘密です。顧問には多くのスタッフが問題を直接訴えていますが、強く咎める様子もない。あげく、院長が朝礼で『みんなでA先生を支えましょう』などと言い出す始末。なぜか病院の上層部は、総出で彼を守ろうとしているのです」(同前)4月下旬の某日夜、帰宅したM医師を直撃すると、憤りつつこう語った。
「あなた(記者)の見解は結論ありきになってしまっている。彼がそんなに飛び抜けた(悪い)存在か、という疑念もあっていいと思うんだよね。こういう待ち伏せ的な取材は、僕はやられたくないんだ。本当に卑怯だと思う。本当に失礼だ」
また、吹田徳洲会病院に取材を申し込んだところ、高橋俊樹院長が自らこう答えた。
「A医師の赤穂市民病院でのトラブルは、採用時にM顧問から報告を受けていました。昨年3月に面接した際、彼自身も説明してくれた。汗をかきつつ必死に話す彼の言葉を聞くと、患者さんへの謝罪の気持ちと、手術への熱意が感じられました。今は、侵襲がない治療だけを担当する立場で、常にM顧問や私の指導が入る状態で勤務させています。ご指摘のミスは、医師なら誰でも判断に迷うようなもので、彼の責任とはいえません。
たしかに遅刻や喫煙については、なかなか改善されなかったため、この3月にスタッフを集めた説明会を開き、その場で私が叱責しました。ですがA医師は今、一人前に成長しつつあります。われわれには彼を教育する使命があります」
取り返しのつかないことになる前に、一刻も早く対策を講じるべきだ。
【解説】
吹田徳洲会病院に取材を申し込んだところ、高橋俊樹院長が自らこう答えた。
「A医師の赤穂市民病院でのトラブルは、採用時にM顧問から報告を受けていました。(中略)……ですがA医師は今、一人前に成長しつつあります。われわれには彼を教育する使命があります」
私も徳洲会の病院の院長をしていたことがあるので、吹田徳洲会病院の高橋俊樹院長のつらい立場はよく分かるつもりです。
どんな出来損ないの医師でも、成長を信じて教育していこうとする態度は立派です。ただ、サイコパスの「竹田くん」です。相手が悪すぎます。
私の場合は、鹿児島県の離島、奄美大島の病院(名瀬病院、現在は名称が変わっています)に、落下傘的に院長として赴任しました。35年くらい前の、昔の話です。
開院の準備段階から看護師など職員は十分そろっていましたが、専門的な医師は不足していました。
医師は、東京の徳洲会本部の担当者が探して連れてきてくれます。
私を含め、6人ほどの常勤医がいましたので、日常の診療はなんとかこなせました。
それでも不足している、手術のできる外科、循環器科や脳外科など専門の医師は、関連病院の医師を交代で派遣してくれます。
あと、徳洲会に就職した研修医を数カ月交代で派遣してくれます。離島医療の体制としては恵まれていたと思います。
竹田くんのように人格的に問題のある医師には出会ったことはありませんが、医師の採用にあたり、院長の面接などはなく、ただただ医師の派遣を本部にお願いする立場でした。
その意味で、高橋俊樹院長を責める気持ちにはなりません。
「M顧問がA先生を連れてきたこと」について、もっと情報がないと何とも言えませんが、この人物の責任は少なくないかもしれないと思いました。
獅子風蓮