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獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

佐藤優『国家の罠』その61

2025-04-20 01:59:42 | 佐藤優

佐藤優氏を知るために、初期の著作を読んでみました。

まずは、この本です。

佐藤優『国家の罠 ―外務省のラスプーチンと呼ばれて』

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた―。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行。

国家の罠 ―外務省のラスプーチンと呼ばれて
□序 章 「わが家」にて
□第1章 逮捕前夜
□第2章 田中眞紀子と鈴木宗男の闘い
□第3章 作られた疑惑
■第4章 「国策捜査」開始
 □収監
 □シベリア・ネコの顔
 □前哨戦
 □週末の攻防
 □クオーター化の原則
 □「奇妙な取り調べ」の始まり
 □二つのシナリオ
 □真剣勝負
 □守られなかった情報源
 □条約課とのいざこざ
 □「迎合」という落とし所
 □チームリーダーとして
 ■「起訴」と自ら申し出た「勾留延長」
 □東郷氏の供述
 □袴田氏の二元外交批判
 □鈴木宗男氏の逮捕
 □奇妙な共同作業
 □外務省に突きつけた「面会拒否宣言」
□第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」
□第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ
□あとがき
□文庫版あとがき――国内亡命者として
※文中に登場する人物の肩書きは、特に説明のないかぎり当時のものです。

 


第4章 「国策捜査」開始

「起訴」と自ら申し出た「勾留延長」

6月4日が私の起訴日だった。
この日の日記を引用しておこう。

〈(夕刻)検事取り調べの途中で緑川弁護士面会。現時点では何罪で起訴になったかとの情報を持ち合わせていない由。夜、拘置所より、背任罪で起訴された、検察官の要請により第一回公判まで接見禁止措置がとられるとの通報。まあ、妥当なとこか〉

その前日の6月3日、西村氏から、「保釈になった場合、マスコミと接触するか」という質問を受けた。
「もちろん接触するし、言いたいことは言う。ただ僕は体制側の人間だから、基本的に反検察的発言はしないよ」
「僕はわかるけれど、検察の他の連中はあなたの考えをなかなか理解できない。それから、保釈になった後、鈴木さんの関係で、検察が話を聞きたいといったら、協力してくれるか」
「それは断る」
「検察庁に来てくれということではなく、どこか別の場所で会うこともできないか」 
「断る」
「どうして。話したいことだけを話せばよいじゃないか。その方が鈴木先生のためになる場合もある」
「それはわかるけれど、それでも断る。どうしてかというと、僕はあちこちでエージェント(協力者)を運営していたが、エージェントというのは結局惨めな存在だ。エージェントにはなりたくないんだ。ただし折り合いはつけられる」
「どういうこと」
「僕を勾留し続ければいい」
「エッ。本気か」
「本気だ。勾留中は検察庁の呼び出しに応じる。しかし、保釈後は、一切呼び出しにも応じないし、接触しない。こういう『ゲームのルール』を提案したい。勾留はいくら長くなってもいい。検察が僕を用済みにするまで獄中にいる用意がある」
「ほんとうにそんなことでいいのか。変わってるな」
「別に。僕はここの生活をそれなりに気に入っている。メシはうまいし、外で読めなかった本も読める。語学の勉強にも集中できる」
これは半分私の本心だった。外に出てもマスコミに追われるだけだ。さらに、外国人の友人たちに状況をいろいろ説明しなくてはならないが、その中には気の短い連中もいるので、すぐには会いたくなかった。また、獄中では、難解な神学書・哲学書の理解が外界では考えられないほど深くなる。戦前、無政府主義者の大杉栄が「一犯罪、一語学」といって獄中で各国語を次々とマスターしていったが、神学部を離れてから疎遠になっていた古典ラテン語、古典ギリシア語の復習もしたかった。
しかし、同時に政治的動機もあった。情報は人につく。外に出ると鈴木宗男氏についていろいろな情報が入ってくる。知っているとそれを漏らしてしまう危険性がある。獄中ならば先に述べた「クオーター化の原則」で、私の方から漏れる新しい情報はない。また、獄中の方が検察官との接触時間が多いので、その質問から検察庁の関心がわかる。それを弁護団に伝えれば、鈴木氏の闘いに貢献できるかもしれない。咄嗟にそのようなことを考えたのである。
「それじゃ、起訴後、呼び出しても応じてくれるかい」
「独房から応じますよ。喜んで」
「弁護士が保釈や接禁解除で本格的にガタガタ言ってこないかい」
「それはないよ。僕の意向については正確に理解している」
しかし、その頃、私の再逮捕に向けた動きを検察庁は着実に進めていた。だが、そのことについて西村氏はその時点では知らなかったようである。東京地検特捜部も「クオーター化の原則」で活動していたのである。

 


解説
「それはわかるけれど、それでも断る。どうしてかというと、僕はあちこちでエージェント(協力者)を運営していたが、エージェントというのは結局惨めな存在だ。エージェントにはなりたくないんだ。ただし折り合いはつけられる」
「どういうこと」
「僕を勾留し続ければいい」

佐藤氏は、保釈のチャンスをつぶしてでも、自ら拘留延長を申し出ました。
その理由が、今回のやり取りを読んで少し分かる気がしました。

エージェント(協力者)というのはしょせんスパイですから情報提供の事実がばれたら殺されることもあります。
そういう世界に、佐藤氏は生きていたのですね。

 

獅子風蓮



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