Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

2006年01月26日 04時14分39秒 | 映画・ドラマ
年末年始は、ちょっと長めのお休みだったので、ビデオを借りて
見てみました。1965年(昭和40年)公開の、東宝とベネディクト・
プロによる初めての日米合作怪獣映画だそうです。
そして、思いがけず「ご当地映画」でした。

1945年、降伏直前のナチス・ドイツから、「フランケンシュタイン
の心臓」が極秘に日本へ運ばれます。不死の生命力を研究し、
「弾に当たっても死なない兵士」を開発して戦局の打開を図る
という奇想天外な作戦のためでした。
しかし、心臓が運び込まれたのは8月6日の広島でした。原爆
によって広島は壊滅し、心臓は行方不明となります。
それから15年後、広島に謎の浮浪児が出没し、住民を不安に
陥れます。彼こそ、復活したフランケンシュタインでした。
国際放射線医学研究所のボーエン博士と戸上女史に保護され
た彼は驚異的な成長を遂げます。そして待ち受ける悲劇。
一方、秋田地震で地底怪獣が目覚め、南下を始めます。
逃走し、故郷に気候が近い日本アルプスを目指すフランケンと
地底怪獣はついに遭遇、激突します。

原爆が関係する導入は、以前本で読んだことがあるのですが、
正直前半部分がここまで広島を舞台に展開するとは思っても
みませんでした。
原爆投下前の広島の再現セットはなかなか見事です。低予算
のB級映画なのですが、「お金かけるところ間違ってない?」
と言いたくなるほど。円谷英二と原爆といえば「世界大戦争」
が有名ですが、この作品もわずかとはいえ見事な描写・・・と
思いきや、フランケンの心臓を取り出そうとしていた研究室の
被爆シーンだけは、ドリフのコントみたいなお粗末な演出で、
ちょっと残念。「陸軍衛戍病院」は広島城内にあった第二陸軍
病院と思われますが、実際には煙突一本を残して全壊した
そうです。
主人公たちが所属する「国際放射線医学研究所」は、最初は
原爆障害調査委員会(ABCC)を連想しましたが、画面に
映った建物は広大病院でしたから、広島大学原爆放射線
医科学研究所(原医研)がモデルなのでしょう。
戸上女史の住む団地がどうしても特定できません。デルタの
街・広島の旧市内には坂らしい坂はないので。あれは東京の
団地をモデルにしたスタジオセットではないかと思われます。
亡くなった患者の命日に墓参りに行くのを「ドライブ」と呼ぶ
感覚って、よく分からないです。しかも行き先がなぜか宮島で、
おまけにそこでフランケン少年に遭遇、保護するという、都合
のいい展開。まさに「ご当地映画」です。
ボーエン博士役は東宝特撮ではおなじみのニック=アダムス。
戸上女史は特撮ファンのマドンナ・水野久美。でも2人とも、
白衣似合ってなかったです。川地博士役の高島忠夫が唯一、
学者っぽくてよかったな。ちょっと腹黒いところも含めて。
逃走するフランケンを追跡する中で、岡山駅前が一瞬映るの
ですが、今と全然変わっていないのが印象的でした。
ビデオに収められているのは海外版でした。実はこの作品、
国内版と海外版でラストが違います。国内版では地底怪獣を
倒したフランケンが、怪獣を抱え上げたまま、地割れに飲み
込まれていくのですが、海外版では怪獣を倒した後、なぜか
山の上なのに大ダコが現れます。そしてフランケンの首を
締め上げ、湖に引きずり込んで、完。
ちょっと待ってよ。自衛隊も引き揚げちゃってるけど、タコは
どうするのさ。あんな凶暴な人食いダコ、放置したままじゃ
いけんでしょ。

なお、タイトルの「バラゴン」は「地底怪獣」のルビです。
劇中、怪獣に命名する場面も「バラゴン」という言葉も出て
きません。ということは、実は名無し怪獣?