しばらく平和学習レポで通すつもりでしたが、時事ネタは鮮度も
大事なので、ちょっと中断して最近気になった話題を。
横浜市長選の翌日開票 費用対効果めぐり波紋
(2006.1.14 東京新聞)
3月12日告示、26日投票の横浜市長選が翌日開票と決定された
ことに、波紋が広がっている。竹中平蔵総務相は13日の記者会見
で、「可能な限り即日開票が望ましい」と指摘。松沢知事も既に
「財政論を超えた速報の重要性を含め考えるべきだった」と批判し
ている。一方、市は3200万円の経費削減になるとし、中田市長は
市選管の判断を評価している。選挙結果を速やかに明らかにする
ことは民主主義の基本だが、半日の遅れと3200万円の経費削減
の重さをどうみるか。決定後もさまざまな意見が飛び交っている。
(金杉 貴雄)
市選管事務局によると、昨年11月の会議で「26日投開票」と
いったん決定。しかし、12月の会議で翌日開票を検討することに
なり、今月10日の会議で変更を決めた。だが選管の会議は公開
されておらず、急に決まったため、その後さまざまな意見が出て
いる。
総務省は、統一地方選では各自治体に可能な限り即日開票を
行うように通知している。選挙部管理課は、「横浜市長選のように
統一選をはずれた選挙では特に通知はしていないが、即日開票が
望ましい」としている。
公選法上は「選挙結果を速やかに知らせるように努めなければ
ならない」と定めた上で、開票を「投票の当日またはその翌日に
行う」としており問題はない。だが、同課は法の規定を「投票終了後
できるだけ早く開票を始めるということ。『翌日』とあるのは、地域が
広かったり人手が足りなかったりするなど、やむを得ない場合を
想定してのこと」と説明する。
ただし、総務省の通知にかかわらず、統一選では東京都内の
九区長選が翌日に開票している。統一選以外でも葛飾区や八王子
市が実施。いずれも横浜市同様、経費削減が狙いとみられている。
2000年、04年の市長選で翌日開票とした八王子市選管は「市民
からはいいとも悪いとも反響はない」と淡々と語る。同市の経費削減
額は500万円。「費用対効果で半日早く知らせることと、この経費
削減のどちらを取るかの問題」。ただ2回とも接戦ではなかったといい、
「選挙が白熱すれば『早く知らせるべきだ』という声が寄せられるかも
しれない」とも話している。
横浜では市議から「財政を考えればやむを得ない」との意見の一方、
「できていることを後退させるのはおかしい。選挙は民主主義の根幹
で、経費削減は他の工夫でやるべきだ」との批判も上がっている。
市長選には中田市長をはじめまだ誰も正式に出馬表明をしていない
が、「市長が翌日開票を評価したのは、勝敗が気になる選挙にはなら
ないのではという“余裕”では」と深読みをしてみせる市議もいた。
翌日開票では、投票箱が区ごとの開票所に集められ、警備員に
守られて一晩過ごす。費用は計80万円。開票は午前9時から始まり、
午前中に終了する。市職員2800人が開票にあたり、平日の通常業務
をやりくりして集められるという。
選挙制度に詳しい日大の田中宗孝(むねたか)教授は、「いち早く
知りたいか、いくらかの経費削減の方がよいかは人により考えが違う。
基本的に自治体の判断だ」と指摘。「ただ、多数の職員が通常業務
からはずれることができるのは、普段から職員が余っているということ
なのか。実際に市民サービスが低下しないのかどうかは気になる」と
している。
この問題、注意して考えないといけません。メディアは早く結果を報道
したい側ですから、自分たちに都合のよい論理を立てている可能性が
あります。特に新聞の場合、翌日開票になると、結果を載せれるのは
翌日の夕刊か翌々日の朝刊になり、テレビに大きく遅れを取るわけ
ですから、なおさらです。
メディアが商業主義に陥った結果、調査報道が減ってスクープ合戦に
走るようになって久しい中、私たちも速報性が重要であるかのように
錯覚しているかも知れません。一寸立ち止まって考え直すには良い
機会ではないでしょうか。
「知る権利」はもちろん大事ですが、私たちが知るべきことは選挙結果
の他にもたくさんあります。それが正しく適切に伝えられているかを
問うこと無しに、この問題だけの是非を論じても無意味でしょう。
例えば行政は、住民からの情報公開請求に全て即日回答をしている
わけではありません。「選挙結果は民意の表れ」と言っても、喫緊の
課題に対する住民投票ではないのですから、速さが最優先にされる
必然性にはつながりません。むしろ時間をかけて結果を冷静に分析
することこそ、ジャーナリズムに求められることではないのでしょうか。
一方で国民に痛みを強いる「改革」を次々に推し進めて(メディアも
それにエールを送って国民を煽って)おいて、こういう時だけ国民の
「権利」まで持ち出して既成のルールを守ろうとするのは、姑息な
気もします。そもそも国が、投票率アップを図るために投票時間を
延長したのが、この問題の根っこにあるわけですし。
国が即日開票にこだわるのは、公務員削減の切り札であり、新たな
公共事業の素でもある電子投票システムの導入を実現したいという
思惑があるから、とも推測できます。
日大の田中教授の指摘は、なかなか痛快ですね。職員が余ってるの
なら、職員を減らすことが一番の経費削減なわけですから。しかし、
世間で言われるほど公務員が多すぎるとは私は思いません。行政が
できること、すべきことはまだまだたくさんあるはずです。人員が適正
に配分されていない、というのはありますけどね。
そうだ、開票作業に自衛隊を派遣するってのはどうでしょう?
大事なので、ちょっと中断して最近気になった話題を。
横浜市長選の翌日開票 費用対効果めぐり波紋
(2006.1.14 東京新聞)
3月12日告示、26日投票の横浜市長選が翌日開票と決定された
ことに、波紋が広がっている。竹中平蔵総務相は13日の記者会見
で、「可能な限り即日開票が望ましい」と指摘。松沢知事も既に
「財政論を超えた速報の重要性を含め考えるべきだった」と批判し
ている。一方、市は3200万円の経費削減になるとし、中田市長は
市選管の判断を評価している。選挙結果を速やかに明らかにする
ことは民主主義の基本だが、半日の遅れと3200万円の経費削減
の重さをどうみるか。決定後もさまざまな意見が飛び交っている。
(金杉 貴雄)
市選管事務局によると、昨年11月の会議で「26日投開票」と
いったん決定。しかし、12月の会議で翌日開票を検討することに
なり、今月10日の会議で変更を決めた。だが選管の会議は公開
されておらず、急に決まったため、その後さまざまな意見が出て
いる。
総務省は、統一地方選では各自治体に可能な限り即日開票を
行うように通知している。選挙部管理課は、「横浜市長選のように
統一選をはずれた選挙では特に通知はしていないが、即日開票が
望ましい」としている。
公選法上は「選挙結果を速やかに知らせるように努めなければ
ならない」と定めた上で、開票を「投票の当日またはその翌日に
行う」としており問題はない。だが、同課は法の規定を「投票終了後
できるだけ早く開票を始めるということ。『翌日』とあるのは、地域が
広かったり人手が足りなかったりするなど、やむを得ない場合を
想定してのこと」と説明する。
ただし、総務省の通知にかかわらず、統一選では東京都内の
九区長選が翌日に開票している。統一選以外でも葛飾区や八王子
市が実施。いずれも横浜市同様、経費削減が狙いとみられている。
2000年、04年の市長選で翌日開票とした八王子市選管は「市民
からはいいとも悪いとも反響はない」と淡々と語る。同市の経費削減
額は500万円。「費用対効果で半日早く知らせることと、この経費
削減のどちらを取るかの問題」。ただ2回とも接戦ではなかったといい、
「選挙が白熱すれば『早く知らせるべきだ』という声が寄せられるかも
しれない」とも話している。
横浜では市議から「財政を考えればやむを得ない」との意見の一方、
「できていることを後退させるのはおかしい。選挙は民主主義の根幹
で、経費削減は他の工夫でやるべきだ」との批判も上がっている。
市長選には中田市長をはじめまだ誰も正式に出馬表明をしていない
が、「市長が翌日開票を評価したのは、勝敗が気になる選挙にはなら
ないのではという“余裕”では」と深読みをしてみせる市議もいた。
翌日開票では、投票箱が区ごとの開票所に集められ、警備員に
守られて一晩過ごす。費用は計80万円。開票は午前9時から始まり、
午前中に終了する。市職員2800人が開票にあたり、平日の通常業務
をやりくりして集められるという。
選挙制度に詳しい日大の田中宗孝(むねたか)教授は、「いち早く
知りたいか、いくらかの経費削減の方がよいかは人により考えが違う。
基本的に自治体の判断だ」と指摘。「ただ、多数の職員が通常業務
からはずれることができるのは、普段から職員が余っているということ
なのか。実際に市民サービスが低下しないのかどうかは気になる」と
している。
この問題、注意して考えないといけません。メディアは早く結果を報道
したい側ですから、自分たちに都合のよい論理を立てている可能性が
あります。特に新聞の場合、翌日開票になると、結果を載せれるのは
翌日の夕刊か翌々日の朝刊になり、テレビに大きく遅れを取るわけ
ですから、なおさらです。
メディアが商業主義に陥った結果、調査報道が減ってスクープ合戦に
走るようになって久しい中、私たちも速報性が重要であるかのように
錯覚しているかも知れません。一寸立ち止まって考え直すには良い
機会ではないでしょうか。
「知る権利」はもちろん大事ですが、私たちが知るべきことは選挙結果
の他にもたくさんあります。それが正しく適切に伝えられているかを
問うこと無しに、この問題だけの是非を論じても無意味でしょう。
例えば行政は、住民からの情報公開請求に全て即日回答をしている
わけではありません。「選挙結果は民意の表れ」と言っても、喫緊の
課題に対する住民投票ではないのですから、速さが最優先にされる
必然性にはつながりません。むしろ時間をかけて結果を冷静に分析
することこそ、ジャーナリズムに求められることではないのでしょうか。
一方で国民に痛みを強いる「改革」を次々に推し進めて(メディアも
それにエールを送って国民を煽って)おいて、こういう時だけ国民の
「権利」まで持ち出して既成のルールを守ろうとするのは、姑息な
気もします。そもそも国が、投票率アップを図るために投票時間を
延長したのが、この問題の根っこにあるわけですし。
国が即日開票にこだわるのは、公務員削減の切り札であり、新たな
公共事業の素でもある電子投票システムの導入を実現したいという
思惑があるから、とも推測できます。
日大の田中教授の指摘は、なかなか痛快ですね。職員が余ってるの
なら、職員を減らすことが一番の経費削減なわけですから。しかし、
世間で言われるほど公務員が多すぎるとは私は思いません。行政が
できること、すべきことはまだまだたくさんあるはずです。人員が適正
に配分されていない、というのはありますけどね。
そうだ、開票作業に自衛隊を派遣するってのはどうでしょう?