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続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『新聞を読む男』

2018-07-02 06:46:46 | 美術ノート

   『新聞を読む男』

 男の視線は新聞にある。つまり世の中のこと、社会・経済に関心を注いでいるという光景である。
 四分割された画面は同じ空間(部屋)の景である。しかし男が登場しているのは四分の一、上方の一画面のみであり、不在である四分の三の空疎の領域に寂寥感が漂う。
 男がいる光景と男がいない光景は後者の印象が重く、男の不在が胸を衝く。存在すべき人の不在が色濃く反映されている。

 椅子は二つある。
 男の前にいるべき人が四画面とも不在であるのは、(母の死)を暗示しているのではないか。漠然と微かにではあるが、座ることのない椅子には不在の人の陰が漂う。
 壁に掛けてあるものは何だろう…(リボンのついた帽子と羽根飾り?のような)確定できないが、女性を感じるものである。
 その脇のフレームには何の絵(写真)が入っているのか。よく見えないが、おそらく家族写真のようなものではないかと思う。
 とすれば男は父である可能性がある。
 母亡きのちの不在がちな父の印象、結ばれるべき家族の絆の希薄。

 整理整頓、清潔、豊かな市民生活…欠けたところのない部屋。しかし流れる空漠、寂寥感。皮肉を交えた心象の部屋である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


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