続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『凌辱』

2016-04-06 06:20:22 | 美術ノート

 『凌辱』
 女性を力づくで犯すこと、恥をかかせること・・・確かに。
 顔面であるべき目・鼻・口が乳房・臍・陰部に置換されている。見るからに恥ずかしい、恥ずべき印象の絵であり、それを指して『凌辱』と題している。

 なぜ、見るに忍びなく耐えられない感情を抱くのか。
 性はタブーだからである。隠すもの、恥ずべきもの、見せてはならない周知の禁止事項は、法の制御さえ認可される領域である。

 しかし、あえて全面(前面)に差し出したマグリットの意図。
 背景は雲一つない青空、地平は真っ直ぐ伸びている。
 汚点なき穢れなき光景のなかの禁止(タブー)。
 存在の原理の主張をはばからない、性(性欲)あっての人類の連鎖である。

 『凌辱」、正しくこれは否定されるべき無謀な暴挙である。マグリットは肯定と否定の狭間で真理を探究している。
 真理であるが、隠蔽されるべき秘密の領域にある真理である。
 『凌辱』という行為、真理のために自ら被ったマグリットの犯罪ではないか。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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