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続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

デュシャン『死静物の彫刻』

2016-07-30 07:16:00 | 美術ノート

 『死静物の彫刻』

 対象物を表現するとき〈最も美しかった時〉を選択し、その生命力をどう伝えるかに注意を払うことが多い。枯れ尾花を描くときでさえ、その風情の哀感に心を寄せる。

 なのに、なぜ『死静物』と、静物に死の冠を乗せたのか。枝から放たれた果物〔野菜〕は確かに死へと不可逆のプロセスをたどる。しかし通常は実りの歓喜、輝ける収穫物、食卓上の美味なる食彩としての対象物(静物)ではないか。

 あえて「死静物」と命名した冷徹な眼差しに、人として食欲の減退を見るばかりである。立派な黒蠅を付着させた図はおぞましく不吉な予感を感じさせる。

 『死』への移行、すべての有機物は水の循環・酸素の供給を閉ざされた瞬間から死へと直行する。この自然の理を周知しているが、人間の優位はそれを無視し、生きる糧としている。

 『死静物の彫刻』には一種の反逆の精神が宿り、、静物の尊厳をさえ感じさせるものがある。(写真右)


(写真は『マルセルデュシャン』㈱美術出版社より)


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