
『ピレネーの城』
海の上に浮かぶ巨岩石、その上には石化した城が聳えている。背景は白い雲の散在する青空であるが、水平線辺りは白い雲で覆われているのに、水平線がくっきり見えるということはあるだろうか。
もちろん有り得ない不条理な光景である。重力圏内に於いて重い岩石が浮かぶということは絶対に無い。飛ぶというもでもなく静止の状態で浮いている。
石化した古城、幻の城は地上の人の眼からは見えない。城に比して岩石の大きさを予測すると相当な重量・広大さであり、海上に一つの村落(国・世界)があると考えてもいい大きさである。
それほどの物が頭上にあるという圧迫感は耐え難く、静かな光景などではなく、恐怖と混乱を潜ませた空気である。
その光景を静観する眼差し・・・現実の世界を精神の眼差しで透視するとこのような景色に変換される。
石化した城≒権力の形骸化、現実だろうか、かつての夢の跡だろうか…時空の限定は不明である。
わたしたちの頭上には、かつての夢の名残が今も一つの脅威として浮遊しているのかもしれない。
幻想は、心理的潜在の具象化である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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