
『エルシノア』
エルシノアって何?この絵がエルシノアだという観点から見ていきたい。
まず立体であるべき林が平面状に立っている。しかもその切り取られ方は建屋の態である。
背景の空は、背景(バック)というより、むしろ背景の中に林のそれが埋まっているというような実に奇妙な構成である。
木々の下部だけ見ていると奥行きがある、しかし上部は建屋の屋根になり街の一部(もしくは城の一部)のようでもある。すべては緑一色で植物(林)の質感であるが、窓らしき開口部(人為的)もある。
林の上に建屋が並ぶなどということはあり得ない、つまり《あり得ない現象》を創作したのである。
林、つまり数多の木々が平面(二次元)になり、しかも全く異なる形態に変移している。空間(三次元)でありながら平面(二次元)と化している。
手前の草原も遠近感を感じない描法である。
時空の否定、質感(物質)の否定。
『エルノシア』とは、絶対に有り得ない世界を目指して描かれたものである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)
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