
『Ⅱ-4-d1』
二人の人間が穴の手前で座っている、のぞき込んでいるのかもしれない。穴はずっと深く、測りかねるほどの深さである。逆にいうと、高い位置に座しているのだろうか。切断された場面なのか。中空なのかは判らない。
この景は何を示唆しているのだろう。
人の立ち位置、存在の危うさ。わたしたちは自分の状況を正しく把握しているわけではない。安定と思いこんでいるが、きわめて不安定でよりどころすら欠けているのかもしれない。
深い穴の底辺、見定めることのできない不安。ちょっと背を押されたら墜落は免れない。飛ぶこと、浮遊は不可能であるが、落下は可能である。
落下は死に至る通路である。覗き込んでいるが、穴は一人分の幅、大きさしかないように見える。人の持ち時間は死に直結している。
写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館
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