
『禁じられた書物』
巨大化した指が床に立っている(美しいとは言い難いリアルな指である)。その上には馬の鈴(伝言・伝説・うわさetc)が浮いており、床面の字と合わせてイレーヌと読み取れる。
全体、部屋の設えは広いが空疎であり、端にある階段は壁に突き当たって行き止まりである。画家の視線は階段上部にあり、全体を眺め降ろしている(俯瞰)ようである。そしてその端にあるイレーヌの指文字は目障りに過ぎないという関係に見える。
マグリットは、内容空疎な少し歪んだ極論に辟易していたのではないか。
「はっきり言おう! はっきり言わせて頂く」という憤懣が鑑賞者の胸に静かにじんわりと響くのである。
写真は『マグリット』展・図録より
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