『星座』
タイトルは『星』ではなく『星座』である。
赤い天幕は室内にあるのだろうか、それとも天空に張られたものなのだろうか。幕の中央に木の葉から変容した鳥の二羽(番と子だろうか)が象徴のように付いている。『創世記』にあるハトがオリーブの葉をくわえてきた所〈新しい世界〉から人類の大家族が始まったことを暗示している、いわゆる《伝説》、口伝である。
地上には二本の樹があり、現実の樹(ありのまま)の背後に、一葉に模した樹(虚偽)が大きく立ちはだかっている。
何もなく広がる地平線(現実)、黄色く見えるのは水平線(幻想)だろうか。
小さく映る森、雲は幾重にも重なり青空を隠している。この空に星が散在していることは確かだが、日中であれば観測不能である。
星(恒星)を群れによって区分し動物などに見立てて命名したのものが星座である。
つまり、人間の幻想が、ムリに何かの形態に結びつけて伝承されているものであれば、現実の夜空ではあるけれど、架空の世界を創り出した虚偽でもある。
有るけれど無く、人間の想念の中でのみ語り伝えられている《無いけれど有るもの》、それが星座であり、イメージとはかく自然発生的なものである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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