
『イメージの裏切り』
「これは、パイプではない、であり続ける」という意味の銘板が、パイプが置かれた板の上に打ち付けられている。
釘でしっかり打ち付ければ、《絶対》を強調しているように見える。
要するに《見えるだけ》のものであるイメージである。
「これはパイプではない」という命題に対し、「パイプ以外の何物でもない」という否定が生じる。否定の否定は肯定となりうるか。当然ながら(ズレ)があり、そのズレを自己内で修正しようとする働きが生じる。
「これはパイプではない」、しかし、「パイプ以外のものではない」。ならば、パイプに違いないが《大いなるズレである矛盾》はこの意図された図の中で留まり続けるしかないのではないか。
紙に描かれたパイプは現存の事物ではない。しかし、他でもないパイプを描いている。この矛盾(ズレ)の修正は結論を得ないままずっと自己内にとどまり続けるという現象こそが無意識の真理である。
《イメージは裏切るだろうか、否、それも真理である》、マグリットは反問し続けている。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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