『早朝の日曜日』
二階建て、長屋形式の店舗兼住宅の光景である。視覚的に遠近法は用いられておらず、全くの並列であり、建屋の左右が描かれていないので、延々連続しているイメージがある。
帯状に並んだ店舗兼住宅は早朝の光のなかに在り、東からの光の影により、この建屋が南向きであることが知れる。きわめて明るすぎる陽光の立地である。
各種の店舗は早朝故に暗く閉ざしているが、窓のカーテン、床屋のシンボルなどが求心的に明るく光っている。水道の引込み管や道路への照射、床屋のシンボルなどがあたかも活性化され、この画の舞台の中で華やぎを見せている。
つまり、人の住む街の、人の眠り(不在)によって、人以外の事物が輝きだす時空を切り取っている。平板な家並みの中の事物の活性は不思議な空間を提示する。
街が動き出す雑踏の中では意識から外されるであろう赤い壁と緑の壁面の競合は、息を吹き込まれたような主張を展開している。ほんのひと時、早朝の人が動き出す前の沈黙の活性、建屋やカーテン、道やそこに配置された物の黙した主張が展開する早朝の商店街である。
事物が光りによって活性を見せる時間帯の事物の主張を垣間見せている。
写真は『HOPPER』岩波・世界の巨匠より