goo blog サービス終了のお知らせ 

続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『城』3668。

2021-06-08 06:12:45 | カフカ覚書

「わたしの服なんですよ。おっしゃるように、どれも流行遅れで、ごてごてしたものばかりですわ。しかし、ここにあるのは、二階のわたしの部屋に置けないものだけなのです。二階には、まだ箪笥二棹にいっぱいありますの。ふたつとも、これとほとんどおなじくらいの大きさの箪笥ですわ。


☆「わたしの氏族です。みんな時効になって移されたのです。ここはテーマ(主題)である小舟の広場なのです。来世にはまだ二つの境界があり、二つの境界のほとんどが大きなテーマ(問題)なのです。


『城』3667。

2021-06-07 06:16:56 | カフカ覚書

 お内儀は、衣裳箪笥の引き戸をあけた。箪笥の横幅と奥行きいっぱいに衣裳がぎっしりとつまっていた。たいていは、暗い色のもの、灰色や茶色や黒い服ばかりで、どれもていねいに広げて吊るしてあった。


☆企てを打ち、密集している氏族を見た。全体鉛のように重く、深い制約がぎっしりあった。たいていは暗く陰気で不穏(不吉)な氏族ばかりが並んで死んでいた。


『城』3666。

2021-06-04 06:42:04 | カフカ覚書

「見ればわかるだけのことです。教えてもらう必要なんかありません」
「苦もなく見ぬいておしまいになるのね。だれにもたずねなくても、流行がなにを求めているかがすぐにおわかりになるのね。これじゃ、あなたは、わたしにとってはなくてはならない人になりそうよ。なにしろ、わたしときたら、美しい服にまるで弱いの。この衣裳箪笥が服でいっぱいだと知ったら、あなたはなんとおっしゃるかしら」


☆わたしにとって、あなたは、なくてはならない人なのね。
 少なからず、氏族は確かに弱点です。この打撃はたくさんの氏族によるものだと言うのですか。


『城』3665。

2021-06-03 06:17:07 | カフカ覚書

あれは一週間ほどまえだったでしょうか、ここの玄関ではじめてお目にかかったとき、すぐに眼についたんです」
「図星ですわ! この服は、おっしゃるとおり、流行遅れで、ごてごて飾りすぎて……それから、なんでしたかしら。ところで、そういうことをどこでお習いになったの」


☆ここで多数の先祖の産床を初めて見た時は驚きました。
 時代遅れの荷重、いったい、どこでそれを知ったんですか」


『城』3664。

2021-06-02 06:11:54 | カフカ覚書

「知りたいとおっしゃるのなら、申しあげましょう。あなたの服は、上等の布地でできていて、ずいぶん高価でしょう。しかし、時代遅れで、ごてごて飾りすぎて、何度も仕立てなおしをし、着古していて、いまではあなたのお年にも、あなたの容姿にも、あなたの地位にも似つかわしくありません。


☆あなたが知りたいとおっしゃるのなら。
 あなたの訴えは立派です。しかしながら古くなり、時に説得は使い古され、適合することもなく、あなたの年にも姿にも、その姿勢は度を越しているのです。


『城』3663。

2021-06-01 06:22:00 | カフカ覚書

それでは、おっしゃい! この服のどこがおかしいの」
「それを言うと、あなたは、気を悪くなさるかもしれません」
「とんでもありません、笑いだすかもしれませんよ。どうせ子供っぽいおしゃべりにすぎないでしょうから。で、この服は、どうなのですか」


☆何なら話してごらんなさい。この訴えのどこが異常なの」
「それを言ったら悪い事態になるでしょう」
「いいえ、そのために復讐するかもしれません。無邪気なおしゃべりにすぎませんが。要するにこの訴えはどうなのでしょう」


『城』3662。

2021-05-31 06:29:46 | カフカ覚書

「じゃ、いよいよ本題にはいったわけだわ。あなたは、だまっていることのできない人ね。ひょっとしたら、あなたは、ちっともずうずうしい人じゃないのかもしれない。子供そっくりなだけよ。なにかばかげたことを知っていると、どうしてもそれをだまっていることができないのね。


☆いかにも、本来の話になってきたわ、あなたは秘密にすることができないようね。あなたは少しも無鉄砲なんかじゃなく、何かただ子供のように、愚行を知り、それを秘密にできないというのね。


『城』3661。

2021-05-28 06:16:31 | カフカ覚書

じゃ、わたしは、いったい、なんだとおっしゃるの」
「あなたがお内儀さん以外になんであるかは、わたしにもわかりません。わたしにわかっているのは、あなたが宿屋のお内儀さんでありながら、およすお内儀さんなる人に似つかわしくない服を着ていらっしゃるということだけです。こんな服は、わたしの知るかぎり、この村ではあなた以外に着ている人はありませんよ」


☆では、わたしは何なんでしょう。あなたが確かにそうであるか、単に不遜にもそう思っているにすぎず、わたしにもわかりません。先祖の女主人、その他にどういう氏族に適合するかなど、ここ来世に来て知っている人は誰もいません」


『城』3660。

2021-05-27 06:22:32 | カフカ覚書

かりにわたしがほんとうのことを言わなかったとしてもーいったい、あなたのまえでその釈明をしなくてはならないでしょうか。どんな点でわたしがほんとうのことを言っていないとおっしゃるの」
「あなたは、じぶんではそうおっしゃっていますが、たんにお内儀さんであるだけではない」
「まあ、なんということでしょう!あなたの頭のなかは、いろんな発見でいっぱいなのね!


☆わたしが言わなかったとして、わたしはあなたに弁明しなくてはならないのでしょうか。何において、本当のことを言っていないと言うのですか」
「あなたは女主人であるだけではない、いかにも偽っている」
「ごらんなさい、傷痕を!十分な発見があるでしょう」


『城』3659。

2021-05-26 06:33:54 | カフカ覚書

「それは、どんなことをしますの」
 Kは、説明をした。その説明を聞いて、お内儀は、欠伸をしただけだった。
「あなたは、ほんとうのことをおっしゃらないのね。なぜほんとうのことを言ってくださらないの」
「あなただって、ほんとうのことをおっしゃっていませんよ」
「わたしがですって! あなたは、またぞろずうずうしい口をききはじめましたね。


☆「それはどういうことですか」 
 Kは説明をした。その説明で彼女は喜んでいた。
「あなたは本当のことを言っていない。なぜ、どうして本当のことを言わないのですか」
「あなたも又本当のことを言っていない」「わたしがですか」
「あなたは大胆にも再び何か企んでいますね。