goo blog サービス終了のお知らせ 

続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

鈴木しづ子(私的解釈)静謐に。

2021-06-08 06:48:00 | 鈴木しづ子

   静謐に日墜つ理性と感情と

 静かに音もなく太陽は地に落ちていくが太陽が落ちる訳ではない。地(地球)が回転しているに過ぎない。
 見える現実と物理的根拠には大きな差異があるが、どちらも現象は一つである。  

 矛盾を孕んだ生身のわたし。理性は感情を殺すが感情は理性を度外視する。理性が正しいか、感情が生の証しか、判断をゆだねる術がない。
 静謐に日は墜ちていく。自然の理、この真実に従うしかない、従うべきである。

 理性は世界(社会状況)の中に厳然と在るが、感情は一人わたしの中で大きく場を占めている。わたしは世界ではなかったか。一つになるのが正義、道義に外れては世間を狭くする。

 理性と感情の離反は不穏である。にもかかわらず、常に理性と感情の間で揺れ動いているわたしがいる。


鈴木しづ子(私的解釈)菊白し。

2021-06-06 07:40:11 | 鈴木しづ子

   菊白し得たる代償ふところに

 嫌いじゃなかったんだよ、目を見た瞬間にね。だから抵抗がなかったのに・・・。手渡された代償を受け取ってしまった。これじゃ娼婦だね、そう、娼婦だもの代償を頂いて当然の身。

 菊白し・・・日本人の誇り、菊の花。でも、何時から白い菊を死者に手向けるようになったんだろう。わたしは誇りを捨て、すでに死んだのかもしれない。ふところの代償は死者に手向けた白い菊に相当する。

※米兵相手のダンスホール、手を睦めば心が動くことも無いとは言えない。出兵戦士との容赦ない関係である。(当時1ドルは360円と決まっており、米兵の懐は命と引き換え…少なくなかったはず)


鈴木しづ子(私的解釈)娼婦またよきか。

2021-06-06 07:09:32 | 鈴木しづ子

   娼婦またよきか熟れたる柿喰うぶ

 娼婦、見ず知らずの男に性的関係を売るという不道徳。
 娼婦またよきか・・・罪悪感の肯定、自虐。いいじゃないか、こういうこともあるよ生きて堕ちる快楽。相手があってこその性的燃焼、明日は地獄が待っているやもしれない二人なら。

 熟れたる柿喰うぶ、もう十分大人だもの。腐る一歩手前が美味しいって・・・そのようになる、ならばそのように振舞おうじゃないの!


鈴木しづ子(私的解釈)雪こんこん。

2021-06-05 07:05:57 | 鈴木しづ子

   雪こんこん死びとの如き男の手

 男の手が冷たい。愛の欠片もない非情な冷酷…恋の終わり。
 この残酷な現実をどう受け止めればいいのか、雪こんこん、降り積もる雪の中でわたしは凍えている。

 つないだ男の手の冷たさ・・・まるで、死びとのよう。
 そう、あなたはもう、死んだはず・・・この世の人ではない。それでもなお、二人で手をつなぐ夢想に暮れているわたし。

 雪こんこん死びとの如き男の手、つないだこの手を離せない。


鈴木しづ子(私的解釈)涕けば済むものか。

2021-06-05 06:35:56 | 鈴木しづ子

   涕けば済むものか春星鋭くひとつ

 この欠如、この喪失、この虚脱、滂沱の泪・・・。不在への疑惑、この悲しみ、悲嘆をどうすれば消し去ることができるのか。

 愛しい人の死、わたしが生きているのに、あなたがいない。
 春の星はつかみどころがないほど全体、微かな印象である。でも、一つだけ鋭い光を投げかける星がある、きつと! そうにちがいない。

 涕いて済むような軽微な感情ではないけれど、不条理な現実を受け止めよう。この漆黒の闇のたった一つの鋭い光があなただと信じて。

 否、涕いてこの悲しみが消えるとは、どうしても思えない。それほどにあなたはわたしの中に深く入り込んでいる…。


鈴木しづ子(私的解釈)月夜にて。

2021-06-03 06:51:20 | 鈴木しづ子

   月夜にておもひつづくるあらぬこと

 月夜、太陽の光は眩しすぎる、何もかも白日の下にさらけ出すなんていう痛みには耐えられない。明るく健全な精神は遠い日の記憶でしかなく、そんな日があったことすら幻のような点滅として朧気である。
 日が沈み、世間が闇に包まれたころ・・・やっと、わたしは自分を取り戻す。

 心安らぐ薄明かり・・・月影がわたしを照らす、太陽の光を受けて漆黒の闇を照らす月影は、誰にも邪魔されることなくわたしと一直線に結ばれている。この私的な空間なら、わたしはわたしの思いを預け、吐露できる。

 おもひつづくるあらぬこと、秘めた思いは月夜でなければ語れない。愛しさは後ろめたさに包まれているのだから。


鈴木しづ子(私的解釈)かしこくて。

2021-06-02 07:01:33 | 鈴木しづ子

   かしこくて姿よそほふ月夜の葉

 月夜の葉。葉は日中陽の光の中で光合成をし酸素を出す。人間に有用なかしこい働きである。でも夜は逆に二酸化炭素を排出する。

 月夜の葉、月に照らされた緑葉の秘かなかがやき。世間が眠りにつく頃、ひっそり派手な身づくろいで月夜を歩く。毒を吐きながら装うわたし・・・、かしこいねぇ、かしこいわたしだよ。


鈴木しづ子(私的解釈)ダンサーになろうか。

2021-05-30 06:13:40 | 鈴木しづ子

   ダンサーになろうか凍夜の駅間歩く

 ダンサー、戦後の米兵相手のダンサーである。肩を出したドレス、真っ赤な口紅、ハイヒール。つい昨日まで敵国として排除していたそれら装いの奇異を身につけることへの偏見。
 凍り付いているのは夜の寒さだけではない、わたしの心も底冷えの冷風にさらされている。敗戦国日本の虚しさを米兵相手にぶちかましてやろうか。いえ、強国アメリカへの憧れがないとは言えない、勝利への反感。
 米兵の明日をも知れない命の華やぎ、彼らの戦場(朝鮮戦争)へ行く前夜を特と見つめてみたい。この下心・・・、こちらは心も財布も素寒貧である。

(ダンサーになろうか)、凍夜の駅間を一足一足迷いながら歩いている。


鈴木しづ子(私的解釈)蟻の体に。

2021-05-28 07:12:09 | 鈴木しづ子

   蟻の体にジュッと当てたる煙草の火

 地を忙しく這いまわる蟻を俯瞰した時の己の巨大、力の大いなる差異に邪悪な満足感が過る。

 たかが蟻一匹の命、絶命したところで世界は変わらない、不明な心の揺らぎ。
 蟻の体にジュッと当てたる煙草の火…残酷、惨劇、蟻の哀れ。
《あなた(蟻)よりワタシは強い》不遜な嗤い。《あなた(蟻)はワタシ》、胸の中で交錯する自虐と悔恨。乾いた涙は煙と化す。


鈴木しづ子(私的解釈)煙草の灰。

2021-05-27 07:02:22 | 鈴木しづ子

   煙草の灰ふんわり落とす蟻の上

 蟻に個性はあるだろうか、あるかもしれないが誰に確認されることもなく忙しく収穫物を運ぶだけである。もちろん蟻と呼ばれるだけで名前などない。集団(仲間)としての連帯感、女王蟻に従うべく動き回る名もなき蟻、同情されることもなく使命のままに生きている。

 蟻は猛スピードで動いているけれど、人間から見れば遅々たる動きでしかない。人は巨人である、蟻なんぞ一ひねりの哀れな存在にすぎない。懸命に使命を果たすべく働く蟻の上に、人間様の煙草の灰をふんわりかけてやる。
 蟻は死ぬだろうか、すぐさま逃げ出して人間を嘲笑うだろうか。

 わたしは強者として、傲慢にも蟻一匹の命を預かる支配者と化す。この愉楽、この悲しさ、哀れ。
 灰を落とされた蟻は《わたし》である。