夕焼け金魚 

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お嫁さん怖い⑤ 嫁さんの抜け殻

2015-05-29 | 創作
会社に勤めていた頃、仲間内の飲み会で嫁さんの自慢というか、誉め合い大会になった事があります。
貴方の奥さんは、綺麗だとか器量が良いとかの話していたときに、全員が口を揃えて「いつ見ても若い」と言われる奥さんがいた。
「確か、君と同じ歳だったのじゃないか」
「ああ、高校の同級生だったよ」
「なのに、お前はもう頭は真っ白で、二人並んで歩いていると、どう見ても親子だよ」
「まさか、親子はひどいよ」
「いや、本当だよ。君のお子さんと二人で歩いているときは、姉妹だと思ってデートに誘おうと思った奴、俺知っているのだから」と言う人がいた。
そんな風にみんなに若い若いと誉められるのでした。
金魚も知っていますが、奥さんは本当に若いのです。
友達が五十なのに、奥様は精々三十後半にしか見えないのです。
友達と同級生だというと、聞いた人はまず「嘘」と言うのです。
「みんな、そう言うけど、本当は俺、あいつが怖いんだよ」と友達が真面目に言うのです。
「俺が、ある夜、風呂上がりに嫁さんの部屋を覗いたら、嫁さんがベッドに横になっていたのだよ。寝ているのかと思って見たら、太腿がチラッと見えてね、つい年甲斐もなくその気になって添い寝して、胸に触ったんだよ」
「へえ、元気だね」とみんなで笑っていたのですが、そいつは「笑い事じゃないんだ」と言うのです。
「胸を触ると、あいつの胸がクシャクシャと潰れたんだよ」
なんだこれはとびっくりして離れると「あなた、何しているの」と後ろから声をかけられたそうです。
振り返るとお嫁さんが、部屋の入り口付近で笑って立っていたそうです。
「俺は、もう、入り口の嫁さんとベッドの上の嫁さんとを何度も見比べたよ」
「嫁さんが『それ、私の抜け殻。全身パックの抜け殻よ』と言ってケラケラ笑うんだよ」とため息交じりに言うのです。
「抜け殻って、蝉の抜け殻みたいなものなのか」
「いや、蝉の抜け殻というより、蛇の皮みたいな、ちょっとフワフワした感じのものだったんだよ。触るとクシャクシャと音立てて潰れるんだ」と言うのです。
「あいつがベッドの横に来て、クシャクシャと抜け殻を潰して丸めながら『女の部屋に入るときは、チャンと断って入ってね。女には秘密が多いのよ』と言ったけど、全身パックって見た奴いるか」と言うのです。
仲間の中には「俺の母ちゃんも抜け殻だよ」とか茶化す人もいたのですけど「金魚、俺の嫁さん、真冬でも水風呂に入っているんだ。手が切れる程冷たい水なのに、平気な顔して、しかも一度首筋にキスしたとき化粧が少し剥がれて、鱗みたいな肌が見えたんだよ」と言ったきり、黙ってしまいました。
もう、随分前に会社辞められたのですが、今はどうしてらっしゃるのでしょうか。
あの奥さんは、未だに三十後半の年齢で止まっているのでしょうかね。

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