金魚の町内で年頃の娘さんのおいでになる家で、金時草を植えている家がありました。
「そろそろ、娘さんにも良いお話が来たのですか」とその家のお母様に聞いてみました。
「まだまだですよ、やんちゃで、良いお話もこないから、少しはお淑やかにしていただかないと。それで金時草でも食べさせようと思って」
「私から見れば、素敵なお嬢さんになったと思いますけど」
「それは金魚さんのひいき目ですから」
そう言って金時草を植えていました。
金時草はしんなりするまで茹でてから、酢の物にするとおいしい食べ物です。
しんなりするまでの語呂合わせという人もいますが、茹でるときにその家毎の茹で方をすると、本当に女らしくなると言います。
茹でなくても、金時草の効果はあるみたいですけど。
それに、金時草が植えてあると言うことで、年頃の娘さんがいるという目印になるのです。
この街では、金時草を植えると、お見合いの話があったらお願いしますという合図にもなるのです。
お願いしますと、誰彼にも言える話じゃないですから。
金時草の効果があったのか、その家の娘さんは、急に女らしくなっていったのです。
今までしたこともなかったのに、朝、玄関を掃除もしていたのです。
そのうち、その家にカラスが時々来て、金時草を食べている姿を見かけました。
カラスは雑食なのですが、野菜は食べても草はあまり食べないのですけど、金時草は食べられると知っているみたいです。
その家の娘さんは、暫くしてご縁があって、結婚したようです。
娘さんが結婚しても、金時草は暫くその家の庭にあって、カラスの餌になっていたみたいです。
最近、町内のカラスがハイヒールを履いた女の人みたいに、気取って歩くようになっています。
ゴミ集積場を荒らすにしても、今までは食べ散らかしてそのままにしていたのに、食べ残しをゴミ集積所に戻しているのです。
金時草の効果ってカラスにもあるのかな。