奈良旅行記は一回お休みします。
中国で実際に起こった集団不正入試事件をモチーフに、高校生たちによる大胆かつ大掛かりなカンニング犯罪を描いたタイ映画。世界16の国と地域で大ヒットを記録したクライムエンターテイメントです。
バッド・ジーニアス 危険な天才たち (Chalard Games Goeng / Bad Genius)
天才女子高生のリンは、ずば抜けた頭脳を見込まれて特待奨学生として進学校に編入。やがて仲良くなったグレースをテストで助けたことが、グレースの恋人のパットに知れ、パットはリンに、試験中にクラスメートたちに正答を教えて報酬を得る、カンニングビジネスを持ちかけます。
はたしてそれは大当たりし、リンはたくさんの収入を得ます。そうした中、パットはさらに、アメリカの大学に留学するために必要な世界統一試験で高得点を取るために、大掛かりな不正を行うことをリンに持ちかけます...。
Twitterでおもしろいとじわじわ話題になっていた本作、気になって見に行ってきました。初めて見るタイ映画、まずは冒頭からスタイリッシュなカメラワークに引き込まれました。物語はぽんぽんとテンポよく進み、スリリングで飽きさせない。タイの学歴社会や格差問題を織り込みつつ、青春映画の要素もあって、すごくおもしろかったです。
感心したのは、リンが考えるさまざまなカンニングの手口。ピアノの指使いやバーコードを暗号に使い、世界統一試験では、タイとの時差を利用してシドニーで受験し、答えをスマホでタイに送ります。
答えを教えてもらう生徒たちは、そのエネルギーを勉強に使った方がいいのでは?と思いますが...。^^; ズルして受かったところで、あとで自分が困るだけだと思いますが、とにかく合格さえしちゃえば勝ちということなのでしょうね。
それにしてもリンほど優秀な生徒が、どうしてパットたちのために人生を棒に振る危険を冒して犯罪に手を染めたのか?それが不思議でしかたがなかったです。最初にうっかり話に乗ったがために、引き際を見誤ってしまったのでしょうか。
リンは自分を追い込み、ミッションを完遂することにカタルシスを感じるようになってしまったのかな? シドニーでの彼女を見ていると、どうしてそこまでするの?と見ていて痛々しく切なくなりました。
それから何と言っても気の毒なのは、自分の意志に背いてこの不正に巻き込まれてしまった、苦学生でリンと同じく優秀なバンクです。自分の力で未来を切り開いていけるはずのリンとバンクが、お金持ちのボンクラたちのために犯罪に手を染め、可能性を閉ざされてしまうのはなんとも残念です。
...なんてまじめに書きましたが、映画は終始スリリングでコミカルで、気楽に楽しめる作品になっていました。^^ それにしても今どきのタイのエリートたちが目指すのは、アメリカやシンガポールの大学なんだな...。日本の内向きがちょっぴり気になった作品でもありました。