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ウィンド・リバー

2018年08月29日 | 映画

ジェレミー・レナ―&エリザベス・オルセン主演、ワイオミング州のネイティブ・アメリカン保留地を舞台にしたクライムサスペンスであり、社会派ドラマ。「ボーダーライン」で脚本を手掛けたテイラー・シェリダンが監督を務めています。

ウィンド・リバー (Wind River)

ワイオミング州ウィンド・リバー保留地。野生生物局のハンター コリー(ジェレミー・レナ―)は、道路から遠く離れた雪原で先住民の少女の死体を見つけます。彼女はコリーの亡くなった娘の親友ナタリーでした。ナタリーには暴行を受けた跡がありましたが、直接の死因は寒さによる肺出血であり、事故死と認定されてしまいます。

事件の捜査のためにFBIから派遣されてきたのは、新人捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)ただひとり。経験が乏しく、厳しい自然に慣れていないジェーンは、この地をよく知るコリーに捜査の協力を依頼し、2人は真相を明らかにすべく捜査を開始しますが...。

本作を見て思い出したのは、メリッサ・レオ主演の「フローズン・リバー」(2008)。カナダとの国境に住む貧しい白人と先住民の女性が、密入国の手助けに手を染めるというストーリーでした。そして本作は、先住民が抱える問題や彼らの苦難にさらに深く食い込んでいて、よりいっそう心にずしりと響く作品でした。

かつてアメリカ大陸を自由に駆け巡っていた先住民族たちは、ヨーロッパからやってきた白人によって住む地を奪われ、国内各地にある荒れ果てた土地に移住させられました。環境は劣悪で、自治といえば聞こえはいいですが、人々は国から見放され、貧困の中で凶悪犯罪が横行することとなります。この地では今も多くの女性が行方不明になっているそうです。

過酷な環境ゆえにさしたる産業はなく、人々が就ける仕事は、カジノや石油採掘などのいわゆる”汚れ仕事”ですが、どちらも近年、アメリカ国内の大きな社会問題となっています。(興味のある方は インディアン・カジノ(Wikipedia)ダコタ・アクセス・パイプライン(HuffPost) を読んでみてください)

映画では、先住民の少女ナタリーがなぜこんな悲惨な死に至ったのか、真相を追うミステリーの形を取りながら、この地に住む人々の困難と理不尽をリアルに暴き出していきます。私たちは、この地に派遣された新米捜査官ジェーンの目を通して、ここがどういう場所なのか知ることとなります。

何も知らずに極寒地に装備なくやってきたジェーン。でも肺の血が凍るほどの寒さなんて誰が想像できるでしょうか。ジェーンは誠実なコリーと行動をともにしていく中で、正義感に突き動かされていきます。恐れることなく真実に立ち向かっていく姿に心を打たれました。

ストーリーは重厚で、きつい場面もありますが、映画としての見せ場も用意されています。クライマックスの銃撃戦は、まるで西部劇のような迫力がありました。そういえば本作の舞台であるウィンドリバーは、「シェーン」(1953)の舞台となったグランドティトンの近くでもあります。

悲しい事件ではありますが、それでも一抹の救いを感じたのは、亡くなったナタリーに尊厳が与えられていたこと。彼女はあの寒さの中、裸足で何十マイルも走った。誰にもできないことだと、コリーはその強さを讃えたのです。

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