労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

学校を教員と子どもたちの牢獄としてよいのか?

2007-01-16 23:31:35 | Weblog
 安倍晋三政権下の「教育再生会議」はゆとり教育の見直しと称して詰め込み教育を強化しようとしている。
 
 その第一歩として提起されているのが、授業時間の一割増しである。
 
 たかが一割というなかれ、現行の学校生活のもとでは、この一割はかなり大きな意味合いをもっている。
 
 この増加した授業時間を土曜日の開校によって補おうとする場合、教育労働者、すなわち教員の40時間労働制がくずれる。これは教員に対するさらなる加重労働であり、ただでさえ加重労働が指摘されている教員の健康破壊が進むことになる。
 
 それでは一割分を平日の授業で補おうとすればどうか?
 
 当然、一部で言われているように、一日7時間授業にでもしなければならないだろう。
 
 この場合、終業時間は4時近くになる。それから掃除や「帰りの会」をやって子どもが家にたどり着く頃には5時近くになる場合もあり、冬場には家に着いたら暗くなりはじめていることもあろう。
 
 いくら小学校高学年からであろうとはいえ、午後からの3時間の授業時間に一部の子どもたちは耐えられないかも知れないという心配(この心配は単なる杞憂ではない)ばかりではなく、太陽が出ている時間が子どもの活動時間という“世界常識”の観点からも大きな問題がある。
 
 つまり、平日の子どもたちの拘束時間を現行より一割増加させると、季節によっては学校生活が子どもたちの生活時間のすべて占めてしまうことになってしまうのである。
 
 不思議なことに、こういうことは非常に重大な問題ではないのか、子どもへの教育負荷が大きくなりすぎないか、という教育専門家は日本には一人もいない。これこそ日本の子どもたちの悲劇であろう!
 
 友達と遊ぶ時間や課外活動をする時間、自分の好きなことをする時間、何ものにも強制されない自分だけの時間を持つことは子どもの発育にとって重要なことだが、そういうことの必要性を今の政府は認めていない。
 
 つまり「教育再生会議」、すなわち安倍晋三政権にとって、子どもの人間としての成長なんかははじめからどうでもよくて、学校は軍国日本の有為な人材を育成することだけが目的であり、そのために詰め込み教育を強化することだけを考えており、子どもたちの個人的な生活時間がなくなろうが知ったことではないのである。(まさか安倍晋三政権自体が子どもたちの夜間徘徊を推奨するわけではないであろう。)
 
 そもそもが、この子どもたちへの強制的な残業労働の強要が生まれてきた背景には、「ゆとり教育」への反省があると言われるがそれは正しくない。
 
 というのは、教科の学習時間が減ったのは“総合学習”や“道徳”といった“読み、書き、そろばん”以外の授業時間が設けられているか、“道徳”の時間に遅れている教科の授業をやるなどというのはとんでもないことだという教員に対する規制の強化が図られているからである。
 
 「ゆとり教育」の反省というのであれば、これら「ゆとり教育」のために設けられた授業時間をもとの“読み、書き、そろばん”の授業時間にもどせばすむことであるのだが、「教育再生会議」、すなわち安倍晋三政権は“総合学習”をそのまま残しているから、追加の授業時間が必要となるのである。
 
 「教育再生会議」、すなわち安倍晋三政権が“総合学習”の時間をそのまま残しているのは、この時間を使って、愛国心教育の強化や社会奉仕の強要、すなわち、子どもたちを軍国日本の奴隷にするための教育を行うことを考えているからである。
 
 かくして学校が子どもたちを拘束する時間は長くならざるをえないのだが、その悪影響はすぐにでも出てくるだろう。
 
  

参議院選挙は政治決戦にならないかも知れない

2007-01-16 01:10:20 | Weblog
 われわれは去年安倍政権が誕生した時、07年の参議院選挙は安倍晋三政権を追い落とす政治決戦になるであろうと予測した。
 
 しかし、その後の政治の推移を見るともう一つの可能性が生まれつつある。
 
 それは民主党の凋落(ちょうらく)である。自民党に対抗する政治勢力として期待されていた民主党は最近では急速に政党支持率を下げている。
 
 その分増加しているのが、自民党、公明党であり、共産党、社民党であり、無党派層である。つまり民主党の地盤が崩れ始めてその支持が拡散し始めているのである。
 
 これはもちろん言うまでもなく、この間の民主党の活動、とりわけ防衛庁の防衛省への格上げに賛成したこと、教育基本法に愛国心を記述したことに賛成したことなど、はたから見ると民主党が自民党にすり寄っているような行動が数多く見られたからである。
 
 この民主党が自民党と大差がない政党になったと多くの人に見られていることが、民主党支持者の右派を自民党、公明党支持者に変えている。
 
 そして注目すべきはこれまで民主党を支持してきた労働者層の一部が、共産党、社民党へと流れ、さらには無党派層の増加となって現れていることだ。もちろんこの無党派層は選挙の時には現実的な選択、すなわち、自民党を追い落とすために民社党の候補者に投票するという投票行動に出ると思われるが、選挙で共産党、社民党の候補が善戦すれば、民社党の一人負けという結果になることもじゅうぶんにありうる。
 
 自民党は前回が小泉の登場による大勝であったため、今回は確実に議席を減らすことになるだろうが、そうなった場合でも、参議院選挙後には政界の再編は一気に進み、連立の組み替えもありえる。自民・民主連合政権、または、自民・公明・民主連合政権、または民主党の右派が自民党に合流するということになるのかも知れない。
 
 この場合、安倍晋三政権は生きのび日本は本格的な右翼政権時代に入っていくが、長い目で見れば、この政治の世界の地殻変動の始まりは、労働者の政治意識が大きく変わり始めていることの表れでもあり、最終的には何らかの労働者政党の成長という結果にならざるをえないであろう。
 
 そういう点では、今回の参議院選挙の見どころは、単に与野党の議席数はどのようになるのかという点にとどまらず、どの政党が日本の未来を担うことができるのかということを占う選挙でもありうる。