スウェーデンは、北ヨーロッパのスカンディナヴィア半島にある。人口900万人。今回は首都ストックホルム市の北西150kmに位置するエスキルステューナ市のエネルギー環境会社(市が株式の100%を保有する株式会社)を訪問した。はじめに、地域暖房担当役員のアンダッシュ・ビオルクルンド氏から公社の概要説明があり、スウェーデンの環境政策、市の方針、公社の沿革などについてお話を聞いた。
同社はエスキルステューナ市が100%株を保有する企業である。電気、暖房、冷房、上下水、ブロードバンド、ゴミ処理など生活全般を扱っており、これらが効率よく環境に配慮されて運営するよう尽力している。従業員400人で売り上げ200億円、そのうち暖房に携わる職員が60人、売り上げは100億円である。
スウェーデンは気候が寒冷のため、地域暖房を行っているところが多い。同社では3700軒の民家と1300軒のアパート、それから店舗や工場にも暖房を供給している。まず600mmのパイプラインで80℃のお湯を送り出し、民家やアパートには15mmのパイプラインで供給する。たとえば、外気がマイナス20℃だと、70℃くらいのお湯が入っていくようにする。民家やアパートの暖房に使われたあと、45℃の水が同社に帰ってくるという循環システムになっている。石油税(税率45%)が高く設定されているので、概して石油や電気暖房と比べて半分の価格となっている。
ほかにも、下水汚泥を原料としてバイオガスを作っており、20台の市バスや3~4台のゴミ収集車がバイオガスで運営されている。ガソリンが1ℓ当たり13クローナするのにたいし、バイオガスでは1ℓ当たり8クローナと割安になっている。
1981年ころまでは、暖房の原料はすべて石油だったが、原子力発電による電気やヒートポンプに置き換わり、近年ではコージェネレーションやバイオガスなどが主流となっている。
バイオ燃料の74%はチップ、18%が樹皮、6%がおがくずなどから作られている。
【石油には3つの税金、すなわち炭素税、エネルギー税、消費税がかけられており、石油を使わないような社会へと政策で誘導されている。
1980年、原子力発電についての国民投票があり、賛成派、反対派、反対だが今は廃止しない派に分かれて議論が行われた。その結果、1997年までに廃止すると結論付けられたものの、コペンハーゲンに近い2基を廃止したにとどまっている。化石燃料をゼロにするためには原子力廃止することは非現実的で、特にスウェーデンは原子力の技術が高いため活用する方向になったと思われる。
スウェーデンは将来のエネルギー源をつぎのように考えている。原子力60tW、水力60tW、再生可能エネルギー20tW、合計で140tW。原子力と再生可能エネルギーを共存させる方向と見られる。化石燃料を使用することがいかに「環境悪」なのか。しかも化石燃料を使用して二酸化炭素を排出する火力発電所などがいかに時代錯誤的な二重の環境悪なのかを認識させられた。スウェーデンでは、国も市町も「脱化石燃料」「脱火力」を目指しており、そのため化石燃料使用には重税が課せられており、政治が見事に環境政策をコントロールしている。その基本には、国の環境ビジョンに国民がコンセンサスを寄せて一丸となって長期的スパンで熱心に取り組んでいる強い理念と計画性があった。わが県の環境政策を振り返るとき、県民をひとつにする共有哲学と長期計画の欠如をあらためて認識させられる視察であった】