フライアムト村から戻り、夜は本日のガイド通訳を務めていただいた池田憲昭から「ドイツの再生可能なエネルギー政策」と題して2時間レクチャーを受けた。
池田氏は2003年から、環境関連の日独コンサルタント業をされている。つぎにレクチャーの内容を記す
ポスト化石燃料時代の担い手として、再生可能エネルギーと原子力エネルギーが注目されている。これらの一方を選択するか、それとも両方を選択するのか、道は3通りあるといえよう。ドイツは現在、前者が5.6%、後者が12.5%であるが、2002年に脱原発宣言を出した。これは、石炭・褐炭の多くが国内自給できるため、原子力を切りやすかったという事情もある。
1991年、キリスト教民主同盟の手によって「電力供給法」が制定され、再生可能エネルギーは、その地域の電力会社が買い取らなければならないとする制度が出来上がった。さらに、2000年には社会民主党の手によって法律が改正され「再生可能エネルギー法」となる。太陽光なら50セント、風力なら10セントといったように、価格が設定されている。これは15年くらいで回収できる金額とされており、太陽光はコストが高いため価格設定も高くなっている。また、再生可能エネルギーの買い取り価格を20年間保証する大胆な政策を打ち出して、保守的な農家が投資しだし、銀行もそれを後押して大きな成果を上げた。省エネもまた、重要なCO2削減の手段である。ドイツでは暖房が80%を占め、一世帯あたり月々3~4万円、年間50万円にも上る。日本では1980~90年代に省エネを進めたので、産業部門の省エネは世界トップレベルとなっている。しかし、民生部門が劣悪であるため、ドイツの省エネが参考になると思われる。
特に寒冷なドイツでは暖房費が日本の4倍かかるが、これも再生可能エネルギーで大幅に節減でき、この政策が国民生活にも大きなメリットをもたらすことを知らしめた。
また、再生可能エネルギーは、大企業の独占を打破し、地方におけるエネルギーの地産地消を実現するもので、なおかつ、省エネリフォーム市場や派生する複合ビジネスを創出し、新たな雇用も地方で生み出した。
さらに注目すべきは、将来のエネルギー計画では、日本やフランスがエネルギー需要を右肩上がりに予測しているのに比べ、ドイツは右肩下がりでエネルギーの節約を明確にしている。
EUでもかつて、電力を自由化したことがあった。たしかに一時期、電力の価格が下がったものの、電力会社が淘汰されることによって大企業4社の寡占状態となり、競争が働かなくなって電力価格は上昇している。