弁理士法人サトー 所長のブログ

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商標の対象が拡大!

2015-04-02 11:08:31 | 知財関連情報(商標)
実は、既に4月1日から新しい種類の商標の出願、登録が認められることとなりました。
新年度初日の忙しさで迂闊にもブログの更新を忘れてしまいました。
昨晩のニュースでも取り上げられていたので、ご存知の方も多いと思います。

今回の商標法改正で登録の対象となった商標は、「色彩」と「音」です。
今回は、「色彩」についてご紹介します。

「色彩」が対象と言われると、「赤」や「青」などの「色彩」が商標登録されると、その「色彩」を自由に使えなくなるのではとの誤解もあるようですがご心配なく。
商標は、その「色彩」だけで成立するのではなく、「色彩」と「商品・サービス」とが結びついて成立します。ですから、ある「商品・サービス」について「色彩」の商標登録があったからと言って、異なる「商品・サービス」に同様の色彩の使用が制限されることはありません。
下の例を見てみると、見覚えのある「色彩」だと思います。この「色彩」だけでは商標は成立せず、この「色彩」と「小売り(コンビニ)」とが結びついたとき、商標として成立します。
左端の「色彩」は「コンビニ」と結びついて「ローソン」となるのですが、「サッカーチーム」と結びつくと「サガン鳥栖」かもしれません。このように、「色彩」に結びつく「商品・サービス」によって、その商標を使用している商標権者が異なることがあります。
左端の「色彩」が「小売り」として登録された場合、同様又は類似の「色彩」をコンビニに使用すると商標権を侵害する可能性が出てきますが、「自動車」などには使用できるかもしれません。もちろん、ローソンがこの「色彩」についての商標登録の対象とする商品に「自動車」を含めている場合は商標権を侵害する可能性もあります。
したがって、単に「色彩」が商標登録されたからと言って、その商標登録の前提となっている「商品・サービス」と異なる「商品・サービス」については商標権が及ぶ可能性は低くなります。

一方、「色彩」の商標は「図形」や「文字」などのようにこれまでの商標と比較してシンプルなものですし、登録によって他者に及ぼす影響も大きくなります。そのため、登録されるための条件も厳しくなると考えられます。下の図のように一見してどこの事業者が分かる「色彩」の例はそれほど多くないと思います。
このような「色彩」は、文字の商標と組み合わせて長年育て上げることによって、ようやく「色彩」だけで商標的な価値を有するようになってきたものです。ですから、今思いついた「色彩」が商標的な価値(信用の蓄積)を生み出す可能性は低く、「色彩」を商標登録するためには長期的なブランディングを視野に入れる必要があります。
また、下の図は思いつきで僕が適当に作ったので実際の色彩とは異なります。登録される「色彩」では、使用している商標の色、割合(帯の幅)などがかなり厳密に審査されると思われます。このことからも、ブランディングが不十分な「色彩」は、登録されるチャンスが低いと思われます。

今回の商標となる対象の拡大によってビジネスチャンスが拡大する一方、制限を受けて自由な使用が困難になるおそれもあります。
サトー国際特許事務所には商標を専門とする弁理士(黒瀬)が所属していますので、疑問に感じられる点、不安を感じられる点などありましたら、遠慮無くお問い合わせください。その際は、「商標についての相談」であることを告げて頂くとスムーズです。

        

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