久しぶりに、知財がらみのおもしろいニュースがあったので飛びつきます。
有名なかに料理のお店の「かに道楽」が、蟹の練り物(まあ、カマボコですね。)を販売している愛知県の業者に、商標権の侵害で訴えたというものです。
ニュースのソースは、こちら。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161110-00000093-san-soci
かに料理のお店の「かに道楽」は、大阪道頓堀の看板で有名ですので、みなさんもご存知だと思います。
今回、こちらの「かに道楽」が「かに道楽」というカマボコを販売している業者に使用の差し止めと損害賠償を求めたようですが、カマボコ屋さんは「先使用権」を主張しているとか。
「先使用権」というのは、権利が発生する前から使っていたんだから、後から他人が取得した権利を及ぼすのはマズイよね、だから継続して使用することを認めてよ、という意図の権利です。
今回のケースで言えば、大阪の「かに道楽」が商標登録する前からカマボコ屋さんは「かに道楽」を商品名として使っていたので、カマボコ屋さんには「先使用権」がある、という考え方ですね。
後から発生した権利で、先行者を排除するのは、いろんな観点から適当でないということです。
ところが、商標権の場合、「先使用権」が認められるためには、他人が商標登録をする前に、以前から使っていた商標が「周知」でなくてはならない、ということになっています。つまり、今回のケースにあてはめると、大阪の「かに道楽」が商標登録する前に、愛知県のカマボコ屋さんの商品「かに道楽」が「周知」になっていなくてはならない、ということになります。
「周知」というのは、文字通りですと「みんなが知っている。」ということですが、商標の世界では「同県、隣接県でだいたい知っている。」という程度と考えられています。そうすると、カマボコ屋さんの「かに道楽」は、大阪の「かに道楽」が商標登録のための出願がされる前に、愛知県、静岡県あたりでそれなりに知られていると、「先使用権」が発生することになります。
愛知県名古屋市の弁理士である私、愛知県のカマボコ屋さんの「かに道楽」についてはノーコメントにします。さすがに、裁判の係争中に明言するのはマズイですからね。場合によっては、このブログが証拠となって、判決になると困りますから。
ところで、商標の場合、権利の侵害が認定されるためには、単に登録商標と同一又は類似の商標を特定に商品に使用したというだけでなく、「誤認混同」が生じているかが争点になります。
例えば、九州の業者「九州男児」が「天の川」という商標について、「水筒」に商標権を取得したとします。でも、この「天の川」という商標は、九州の一部でだけ「水筒」として認知されているとします。
なぜ、「水筒」なのかって? 目の前に「水筒」があったから。
その後、まったく無関係の北海道の業者「北海道男児」が「天の川」という商標を使った「水筒」を北海道で売り出しました。
ところが、北海道では「九州男児」の「天の川」は全く認知されておらず、北海道で「天の川」といえば「北海道男児」と認知されていたとすると、「誤認混同」が生じていないことになります。
このように「誤認混同」が生じていないケースでは、仮に登録商標を使用していたとしても、商標権侵害が問われない可能性もあるのです。
全国的に流通する商品ですと、「誤認混同」が生じないケースはほとんどありませんが、一部の地域だけで流通する商品ですと上記のようなことが発生し、商標権を取得しても権利行使が困難な場合も生じ得ます。
横道にそれましたが、今回のケース。
愛知県のカマボコ屋さんの「かに道楽」が大阪の「かに道楽」との間に、「誤認混同」が生じているか、という点についても争点になるのかもしれません。