弁理士法人サトー 所長のブログ

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PBPクレームの訂正

2016-03-29 10:49:37 | 知財関連情報(特許・実用新案)

またまたブログを更新します。急に精力的になっています!
ジェネリックに引き続き今回も重要な判断ですが、「判決」ではなく「審決」です。

昨年、プロダクトバイプロセス(PBP)クレームについての最高裁判断が出されて以来、知財業界は「PBP」の話題でもちきりです。「キルビー」以来の大人気ではないでしょうか。
僕らが関与したPBP最高裁判決前の明細書でも、「絞り加工で継ぎ目なく形成したA部材」とか、「第一部材と第二部材とを接着したB部材」とか、PBPといえるかどうか微妙なクレームが見られます。

特許庁では、PBPの最高裁判決を受け、審査基準を見直し、審査段階ではPBPクレームを比較的厳しく取り扱うことを明示しています。当事務所でも、PBPクレーム関連で36条違反の拒絶理由を受けることが増えています。
当然、現在審査に継続している案件の多くはPBP最高裁判決、それにともなう審査基準が出される前に出願されたものですから、審査段階で「物」のクレームとするか、「物の製造方法」のクレームにするか適切に補正で対応することが求められます。

さて、今回のネタとなったのは、審査段階ではなく、権利化(特許となった)後にPBPクレームの「訂正」ができるかどうかという点について出された審決です。
特許の世界では、権利化前の審査段階で記載内容をイジることを「補正」といい、権利成立後に記載内容をイジることを「訂正」といいます。
権利発生後は、むやみに権利範囲が変化しては不都合が生じますので、「訂正」には「補正」に比べて厳しい要件が課されています。
そして、「訂正」をするためには、原則として「訂正審判」を請求する必要があります。
「訂正」をするための例外はありますが、ここではパス。

特許庁のウェブサイトでは、このPBPに関わる特許権のクレームについて、「訂正」を認める審決を出したとの告知がありました。

参考:特許庁の告知

今回の「訂正」の対象となったのは、「PBP」クレームによって「物」の発明として成立した特許です。この特許が成立したのは、PBP最高裁判決前ですから、「物」の特定に「PBP」クレームを用いてもOKの時代だったわけです。
その後、PBP最高裁判決が出されたため、特許権者は「PBP」クレームで記載した特許を36条違反で「無効」とされてしまわないように訂正審判を請求したと思われます。

そして、この訂正審判では、「物」を特定するための「PBP」クレームを、「物の製造方法」クレームと訂正することが認められたのです。

最高裁判決によって、「PBP」クレームで「物」を特定するためには厳しい要件が課されることとなりましたが、「PBP」クレームはそもそも「製造方法」の概念を含んでいます。ですから、「物」を特定するための「PBP」クレームを「物の製造方法」クレームに訂正すること自体は、権利範囲を狭めこそすれ、拡張するものではありません。
したがって、今回の「訂正」が認められたということでしょう。

特許の場合も、「キャスターが学歴・経歴を詐称していないか」、「国会議員への立候補予定者が不倫していないか」と同様に、使う前には「身体検査」が必要です!
つまり、特許を用いて権利行使をする場合、その特許に無効理由となるような「キズ」が無いかを検討する必要があります。
これまで「PBP」クレームで「物」を特定して特許が成立しているケースは多いと思いますので、それなりに「訂正」を求める審判が増えるかも知れません。

特許庁では「『物』の発明から『物を生産する方法』の発明へのカテゴリー変更を含む訂正であっても、一律に訂正が認められるものではなく、事件ごとに個別に判断されますので、ご注意ください。」と予防線を張ってはいますけど。

ですから、カテゴリー変更をともなう「訂正」が認められるかどうか不安なときは、サトー国際特許事務所までご相談ください。

コメント
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