今朝の日経新聞に、アメリカの特許出願件数が6年ぶりに減少したという記事がありました。
何でも、パテントトロールの対策のために行なった法律の改正が影響したとのことです。
記事では、パテントトロール対策として特許法を改正して特許を消滅させるための「異議申立」の要件を緩和したところ質の高い特許も取消になりやすくなったり、パテントトロール対策として訴訟制度を改正して敗訴者の費用負担を大きくしたところ敗訴時のリスクを考慮して特許を取得するのを躊躇したりした結果、特許出願件数の減少につながったのではないかとの指摘でした。
結局、ユーザにとって特許制度が使いにくくなると、出願件数が減る、米国の出願件数が減ると特許制度への信頼性に疑問が生じ、他国でも出願件数が減る、日本も影響を受けるかも知れない、といった論調でした。
確かに、そういう傾向はあるでしょう。しかし、アメリカは、特許を重視するプロパテントと、特許を競争を妨げる制度とみるアンチパテントとが、コロコロと入れ替わる国です。そうすると、ここまでプロパテント政策を維持していたのですが、パテントトロールなどの問題で過剰な保護が問題となり、アンチパテントに舵を切ったとみることができます。
アンチパテントになると、特許を取得するウマミが減るので、当然出願件数も減少することになるでしょう。
ところで、国ごとの特許の出願件数は、その国の研究開発活動の活発さに結び付けられ、国の産業競争力の指標ともなっています。
一般的には景気がよく、企業活動が活発な時期は、特許の出願件数が増え、産業競争力も向上すると考えられています。
企業活動が活発な時期は、先行投資として研究開発へ投入する資金も増えるので、成果としての特許出願が増えるというのもうなずけます。
ところが、特許の出願件数は、このような景気や研究活動よりも、政策によって増減することの方が多いように思います。
僕が特許業界へ入った15年ほど前、アメリカのプロパテント政策、IT革命といった産業革新によって、特許業界は空前の好況でした。ビジネスモデル特許などもこの時代です。日本では、年間で40万件近い特許出願があり、2005年頃には40万件を突破していました。
日本は、世界一の特許出願大国でした。
しかし、この世界一の出願件数に手を焼いた人々がいます。特許庁です。
年間40万件を超える特許出願を捌くための人員やインフラが不足し、パンク状態となっていきました。そこで、特許庁が執った政策は・・・。
審査請求料を倍額に増額し、出願件数の多い出願人(大企業)に出願を選別するように要求したのです。
この政策が功を奏したのか、それとも2008年のリーマンショックが効いたのかわかりませんが、2009年頃を境に、日本における特許出願は急激な減少を見せ始めます。年間40万件近かった特許出願は、年々激減傾向を示し、2012年には全盛期の3/4である30万件を切る勢いとなり、現在も減少傾向が続いています。もちろん、上記の政策だけでなく、日本でも訴訟制度の変更(特104条の3の導入)などによる、権利者側の不利感も影響しているでしょう。
とはいえ、2013年頃から日本の景気は回復傾向にあるようですが、特許出願件数は減少が続いています。
このように、アメリカに限らず日本でも、特許出願件数は、景気や産業競争力ではなく、そのときの政策であることが明らかですね。
よく引き合いに出される中国は、特許出願件数が日本とは逆に激増しています。これも、中国の発展もあるでしょうが、中国政府による特許出願推進の政策による影響が大きいことは周知の事実です。
日本の出願件数の減少は、世界の知財制度における日本の発言力の低下に結びつきます。
これに気づいた特許庁は出願件数を増加させるための政策を打っているのですが、効果は見えず減少傾向が続いています。
ちょっとした政策が業界全体に大きな影響を与えるのは、アメリカだけでなく日本も同じですね。
何でも、パテントトロールの対策のために行なった法律の改正が影響したとのことです。
記事では、パテントトロール対策として特許法を改正して特許を消滅させるための「異議申立」の要件を緩和したところ質の高い特許も取消になりやすくなったり、パテントトロール対策として訴訟制度を改正して敗訴者の費用負担を大きくしたところ敗訴時のリスクを考慮して特許を取得するのを躊躇したりした結果、特許出願件数の減少につながったのではないかとの指摘でした。
結局、ユーザにとって特許制度が使いにくくなると、出願件数が減る、米国の出願件数が減ると特許制度への信頼性に疑問が生じ、他国でも出願件数が減る、日本も影響を受けるかも知れない、といった論調でした。
確かに、そういう傾向はあるでしょう。しかし、アメリカは、特許を重視するプロパテントと、特許を競争を妨げる制度とみるアンチパテントとが、コロコロと入れ替わる国です。そうすると、ここまでプロパテント政策を維持していたのですが、パテントトロールなどの問題で過剰な保護が問題となり、アンチパテントに舵を切ったとみることができます。
アンチパテントになると、特許を取得するウマミが減るので、当然出願件数も減少することになるでしょう。
ところで、国ごとの特許の出願件数は、その国の研究開発活動の活発さに結び付けられ、国の産業競争力の指標ともなっています。
一般的には景気がよく、企業活動が活発な時期は、特許の出願件数が増え、産業競争力も向上すると考えられています。
企業活動が活発な時期は、先行投資として研究開発へ投入する資金も増えるので、成果としての特許出願が増えるというのもうなずけます。
ところが、特許の出願件数は、このような景気や研究活動よりも、政策によって増減することの方が多いように思います。
僕が特許業界へ入った15年ほど前、アメリカのプロパテント政策、IT革命といった産業革新によって、特許業界は空前の好況でした。ビジネスモデル特許などもこの時代です。日本では、年間で40万件近い特許出願があり、2005年頃には40万件を突破していました。
日本は、世界一の特許出願大国でした。
しかし、この世界一の出願件数に手を焼いた人々がいます。特許庁です。
年間40万件を超える特許出願を捌くための人員やインフラが不足し、パンク状態となっていきました。そこで、特許庁が執った政策は・・・。
審査請求料を倍額に増額し、出願件数の多い出願人(大企業)に出願を選別するように要求したのです。
この政策が功を奏したのか、それとも2008年のリーマンショックが効いたのかわかりませんが、2009年頃を境に、日本における特許出願は急激な減少を見せ始めます。年間40万件近かった特許出願は、年々激減傾向を示し、2012年には全盛期の3/4である30万件を切る勢いとなり、現在も減少傾向が続いています。もちろん、上記の政策だけでなく、日本でも訴訟制度の変更(特104条の3の導入)などによる、権利者側の不利感も影響しているでしょう。
とはいえ、2013年頃から日本の景気は回復傾向にあるようですが、特許出願件数は減少が続いています。
このように、アメリカに限らず日本でも、特許出願件数は、景気や産業競争力ではなく、そのときの政策であることが明らかですね。
よく引き合いに出される中国は、特許出願件数が日本とは逆に激増しています。これも、中国の発展もあるでしょうが、中国政府による特許出願推進の政策による影響が大きいことは周知の事実です。
日本の出願件数の減少は、世界の知財制度における日本の発言力の低下に結びつきます。
これに気づいた特許庁は出願件数を増加させるための政策を打っているのですが、効果は見えず減少傾向が続いています。
ちょっとした政策が業界全体に大きな影響を与えるのは、アメリカだけでなく日本も同じですね。