OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

〔映画〕ぼくは明日、昨日のきみとデートする

2021-11-15 11:52:39 | 映画

 
 小説が原作の映画ですが、このプロットには意表をつかれました。
 「自分にとっての最初が、彼女にとっての最後」というのは、すごいインパクトですね。
 
 もちろん、そういうプロットですからストーリーとしての論理性?はハチャメチャですが、それでもとても気持ちのいい物語に仕上がっていると思います。

 この映画でも小松菜奈さんはいいですね。ほとんど “素” のままのように見せていますが、これもかなりの部分演技なのでしょう。この世代ではトップクラスの役者さんです。
 あと、中学生時代を演じたのは清原果耶さんでした。出番はほんの僅かでしたが、こちらもgoodです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁

2021-11-14 09:06:26 | 映画

 
 日中合作映画です。
 ネットでの評判はかなり低かったので、かえって興味を惹いて観てみました。
 
 が、結果的には “評判どおり” でしたね。これではダメでしょう。
 ともかく、プロットもストーリーもとても雑な印象です。ラスト近くの「エベレストという設定があまりにも不自然なシーン」をはじめとして、制作関係者の方々には失礼な物言いで申し訳ないのですが、とても “安っぽい” 出来の作品になってしまいました。
 
 役所広司さんも主役級の役で出演していますが、正直、かなり違和感がありましたね。残念です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (濱口 桂一郎)

2021-11-13 11:26:43 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目に付いた本です。

 「ジョブ型雇用」は、新型コロナ禍対策のひとつであるリモートワークの進展に伴い、日本企業においても導入が加速されつつありますが、私としてもその概要程度は頭に入れておこうと手に取ってみました。

 著者の濱口桂一郎さん労働法・社会政策の専門家です。その立場からの、昨今の関係論評等で跋扈している「似ても似つかぬジョブ型論」への反駁が楽しみでした。

 まず著者が挙げるのが「ジョブ型」と「成果主義」との関係です。

(p6より引用) ジョブ型とは、まず最初に職務 (ジョブ)があり、そこにそのジョブを遂行できるはずの人間をはめ込みます。人間の評価はジョブにはめ込む際に事前に行うのです。後はそのジョブをきちんと遂行できているかどうかを確認するだけです。大部分のジョブは、その遂行の度合を事細かに評価するようにはなっていません。ジョブディスクリプションに書かれた任務を遂行できているかそれともできていないかをチェックするだけです。それができていれば、そのジョブにあらかじめ定められた価格(賃金)が支払われます。これがジョブ型の大原則であって、そもそも普通のジョブに成果主義などはなじみません。

 ジョブ型は成果主義とセットではないのです。この点の誤りは、確かによく見られますね。

 そしてもうひとつ、「ジョブ型」と「メンバーシップ型」との評価の変遷

(p11より引用) 産業革命以来、先進産業社会における企業組織の基本構造は一貫してジョブ型だったのですから、戦後日本で拡大したメンバーシップ型の方がずっと新しいのです。そして、1970年代後半から1990年代前半までの約20年間、その日本独特のメンバーシップ型の雇用システムが、日本経済の競争力の源泉だとして、ことあるごとにもてはやされていたことも(今や忘れている人が多いかもしれませんが)、ほんの四半世紀前までの歴史的事実です。それが21世紀になり、日本経済の競争力がつるべ落としのように落ちていく中で、かつて日本型システムを礼賛していた多くの評論家諸氏が掌を返したかの如く、日本型システムを批判し始めたというわけです。

 こういったことを最初に押さえたうえで、著者は、雇用形態に関するさまざまな観点からの議論を展開していくのですが、それらの解説の中で、私の興味を惹いたところをいくつか順不同に書き留めておきます。

 まず、労働政策と教育政策との関係について。
 1973年石油ショック以降、企業内部での雇用維持を最優先とする方向に労働政策が変換されました。それに対応し、企業内教育訓練が重視されるようになったのですが、そういった変化が学校教育へ及ぼした影響を指摘したくだりです。

(p75より引用) 企業が学校に求めるのは企業内教育訓練に耐えうる優秀な素材を提供することだけだということになれば、普通高校も大学も、その教育内容が企業にとって意味がないという点では何ら変わりはありません。しかし教育界は、この多様性なき一元的序列付けという問題の根源には何ら触れることなく、偏差値が悪いとか、心の教育とか、ゆとりだとか、見当外れの政策を行き当たりばったりに試みるだけだったのです。

 医学部等一部の学問領域以外の大学での教育内容と卒業後の職業との関連性が著しく低いという日本社会の特殊性もあり、“教育改革”により解決すべき課題の本質は確たるものとなり得ませんでした。
 目標が不明確だと適切な手段も検討できません。そういった結果が招いた大きな弊害が、ここ数年来の教育政策のダッチロール状況だったということでしょう。

 次に、数年前に流行した「日本型成果主義」の本質について。

(p154より引用) この日本型成果主義は、ジョブ型社会のハイエンド労働者層に適用される成果給とは異なり、成果を測る物差しとなるべき職務が何ら明確ではなく、「上司との相談で設定」という名の下で事実上あてがわれた恣意的な目標でもって、成果が上がっていないから賃金を引き下げるという理屈付けに使われただけだったと言えます。つまり人件費抑制には効果はあったのですが、賃金決定の基本にある不可視の「能力」をそのままにして、それを恣意的に操作するためにジョブと関わりのない成果を持ち出してきてしまったために、労働者側における納得性が失われてしまい、結果としてモラールの低下につながったという評価が妥当でしょう。

 そして、著者は、成果測定の物差しを「ジョブの明確化」に焼き直して再チャレンジしているのが今日の「日本版ジョブ型雇用」ブームだと解釈しているのです。

 さて、本書を読んでの感想です。

 こうやって諸外国との比較や過去からの経緯等を整理した解説を辿ってみると、現下の「ジョブ型雇用」をめぐる議論は、いかにも日本的な“空気感(≒一種の同調圧力)”の中でなされているのだと改めて認識させられます。

 「ジョブ型雇用」といっても欧米各国でもその具体的内容は異なるのですから、短絡的に(たとえば)アメリカ型を請け売り導入するのではなく、ともかくこの際しっかりと「日本型ジョブ型雇用」の仕組みを組み立てることが大切だと思います。
 それは、企業や教育の在り様の変革にも踏み込むものになりますが、そこまでスコープに入れないと、結局は“パッチワーク的”な自己満足アクションに止まってしまうでしょう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ゴシカ

2021-11-12 14:43:12 | 映画

 
 ホラー映画は好きではないのですが、ハル・ベリーが主役ということで観てみました。
 
 その他のキャストも- ロバート・ダウニー・Jr、ペネロペ・クルスと気になる役者さんが登場しています。ただ、どうもこの作品ではそれぞれの魅力は活かしきれていないようです
 
 この手の映画の場合、プロットがプロットだけに何が起こっても不思議ではありませんしまたそれが現実なのか幻覚なのかについても定かではありませんから、ストーリーはどうにでも作り上げることができます。
 なので、結局ラストに至ってもスッキリとした納得感が得られないのが通例ですが、この作品もまさにそうでした。
 つい、辻褄のあった謎解きを求めてしまうのですが、それがそもそも間違いなんですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ひるなかの流星

2021-11-11 09:40:11 | 映画

 

 完璧な「コミック」原作の作品ですね。

 現実だと “いい加減にしたら” といったコテコテの人間関係であったりシチュエーションだったりするのですが、こういったテイストのストーリーだとむしろ「必須アイテム」になるんでしょう。

 キャスティングもまさに “正統派” の布陣です。
 今回の役どころの永野芽郁さんは、それこそ “素” のままという感じですが、その表情やせりふ回しは主人公のプロットにぴったりで “余人をもって代え難し” でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (橘木 俊詔)

2021-11-10 20:48:33 | 本と雑誌

 講談社のpodcastで紹介されていたので手に取ってみました。
 財政・教育・労働・生活・福祉といったジャンルの50項目について、その統計データを示しながら簡単な解説を加えていくという体裁でまとめられた本です。

 アマゾンの書評での評価は低いのですが、その一因は、本書に求めるものの違いによるのだと思います。
 個々の項目ごとのしっかりした分析や論述を求めることは、本書の性格上、それは過度な要求でしょう。本書は、あくまでも俯瞰的なガイドブックです。ここで概要をつかんだうえで、必要に応じて(別の方法にて)深掘りを進めていくのです。

 そういった視点でいえば、私の場合は(恥ずかしながら)「概要レベル」ですら理解していなかった現実に気づきました。情けない限りです。

 まずは、よく言われている「日本における生活保護制度」について。

(p174より引用) 日本における生活保護制度の課題は、捕捉率の低さにある。生活保護基準以下の所得しかない人のうち、何パーセントの人が実際に支給を受けているかが捕捉率であるが、多くの研究によるとそれがおよそ10~20%の低さなのである(尾藤廣喜他『生活保護「改革」ここが焦点だ!』あけび書房、2011年など)。先進諸国ではフランスが92%、イギリスが80%、アメリカが60%強であり、低いドイツでも37%である。

 ここまで低い理由は様々あるようですが、必要な対象者への制度利用の促進が図れないようであれば、(著者も指摘しているように)いたずらに当該制度の適用にこだわるのではなく、同様の効果のある他の社会保障制度の適用拡大も検討すべきでしょう。「必要な人に必要な支援を」というのが生活保護制度の本質的な目的なのですから。

 もうひとつ、OECD諸国間の「相対的貧困率」の比較。

(p191より引用) 加盟諸国の中で日本は7番目に高い貧困率なので、そう深刻ではないと思われるかもしれないが、上位にいる、トルコ、メキシコ、チリなどはまだ中進国とみなすので、ここでは比較の対象としない方がよい。ついでながら発展途上国はもっと貧困率は高く、南アフリカは26.6%、コスタリカは20.4 %、ブラジルは20.0%で、生活困窮者の数はとても多い。
 むしろ日本が比較の対象とすべき国は、G7を中心にした先進主要国であり、そのグループの中ではアメリカについで第2位の貧困率の高さである。日本は貧困大国と称しても過言ではない。ついでながらG7の中ではフランスがもっとも低く8%、先進国の中では北欧諸国が6~7%の低い貧困率となっている。

 この現実は結構ショッキングですね。ここまで日本の貧困(格差)が進んでいたとは思いませんでした。

 さて、改めて数々の気づきを与えてくれた本書ですが、ひとつ、読んでいて気になった点がありました。
 「統計データ」をもとに解説しているというのが「売り」の割には、肝心の統計データの「定義」が明確に書かれていないのです。たとえば「開業率」「閉業率」「高齢化率」・・・、分子・分母は何なのか? 数値処理の基本が蔑ろにされているのは不味いでしょう。
 併せて、グラフの(縦)軸の項目の説明(説明)がないものが多く見られましたし、せっかくグラフ化していてもかえって見にくくなっているものも散見されました。

 そのあたり、最終的な「作り」のレベルはとても雑で、読者に対しても不親切な印象を受けました。本書が狙ったコンセプト自体は悪くないのですから、残念です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕スタートレック3 ミスター・スポックを探せ!

2021-11-09 11:50:32 | 映画

 1984年制作のオリジナルシリーズ3作目、スポックを演じるレナード・ニモイの初監督作品とのことです。
 
 前作でのラストを引き継いだ物語でスポックの復活がテーマになっています。なので、戦闘シーンはほとんどなく、結構地味にストーリーが進んでいきます。カーク船長の息子デビッドの扱いも淡泊でかなり雑ですし。
 
 正直なところ、ほとんど印象に残らない作品です。
 重要なキャラクタであるスポックを再び迎え入れるための、シリーズの中では “つなぎ役” のような位置づけですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕黄色いリボン

2021-11-08 10:19:30 | 映画

 
 1949年製作のアメリカ映画です。
 監督はジョン・フォード、主演はジョン・ウェインという “鉄板(テッパン)の西部劇” ですね。
 
 西部劇といっても退役目前の騎兵隊長(大尉)の最後の6日間を描いた作品なので、戦闘シーンも最低限に抑えられていましたし、この頃の映画によく見られるような先住民の人々を歪曲して扱ったシーンもなく、一定の節度が感じられました。
 
 映像的には、馬が大群で逃走しているシーンは物凄い迫力で “実写” のパワーが強烈で印象に残りました。その一方で、時折いかにも “合成” といった感のある不自然な背景のシーンもあって、このあたりのアンバランスさも微笑ましいですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おじさんはどう生きるか (松任谷 正隆)

2021-11-07 09:34:32 | 本と雑誌

 軽い読み物はないかと、いつもの図書館の新着書リストを覗いていて目に留まった本です。
 著者の松任谷正隆さんは音楽プロデューサー、奥様は言うまでもなく松任谷由実さん。このエッセイでも随所に登場します。

 本書は、読売新聞で連載されたコラムに数作の書下ろしエッセイと対談とを加えて構成された書作ですが、全体は「マナー」というテーマで一貫されています。長く書き続けるうえでは、こういった「テーマの限定」があるのも題材探しに軸ができて好都合なところがあるのかもしれませんね。

 そういった中から、興味を持ったくだりをひとつ。

(p122より引用) 服の面白さは空気感に尽きる、と思う。その時代の空気を纏える、・・・
 僕は新しい音楽を買うように新しい服を買う。インプットするという意味に於いては音楽も服もまったく一緒だ。おお、今年はこんな感じなのか.....。なんだか勉強が出来たような気持ちになる。

 音楽やファッションは「自己表現」という意味で“アウトプット”だと思っていたのですが、こういった捉え方もあるんですね。

 で、肝心の読みどころですが、私もミーハーなので、著者の正隆さんの奥様である“ユーミン”が登場するとやはり気になります。多くの場合、“やっぱり、そんな感じかぁ”という印象ですね。

(p57より引用) このあいだも借りているポルシェに乗せて、これはどこのクルマだ?とマークを隠しながら聞いたら、「この乗り心地はトヨタだわね」などと堂々と答えてくれた。少々感性に疑問あり、かもしれない。

 松任谷ご夫妻も結婚されて40年以上、それなりの年月を重ねていることもあり、語られる家庭内のエピソードも “ほのぼの系”。心地よい雰囲気を楽しめました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕マラソンマン

2021-11-06 14:56:38 | 映画

 
 ちょっと間の抜けたような感じのタイトルですが、ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリヴィエ、ロイ・シャイダーといった錚々たる俳優のみなさんが出演しています。
 
 サスペンスタッチの物語ですが、主人公の周りに次々と敵方の人物が登場してくるのでちょっと作り込み過ぎている印象ですね。
 そもそも主人公は、事件には全く無関係なわけですから、ここまで巻き込まれていくのはストーリー的にはかなり不自然です。いったい主人公から何を聞き出そうとしていたのでしょうか?

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕南極物語

2021-11-05 09:30:00 | 映画

 
 1983年の上映ですから、今から40年近く前の作品です。
 
 高倉健さん、渡瀬恒彦さん、 山村聡さん、夏目雅子さん等、錚々たる出演者のみなさんが揃い踏みで、若い頃の佐藤浩市さん、荻野目慶子さんも登場しています。北極ロケ、南極ロケと出演者の方々の苦労は大変だったでしょう。
 
 文部省特選作品となり、興行的にも大ヒット作品たったようですが、映画作品としては今ひとつだというのが私の正直な印象です。ストーリー的にはこれといって光るものは感じられませんでした。
 “犬たちが主役” と言ってしまえばそれまでですが、こういった形で生き物を扱うのは私としては賛同できないですね。残念な作品だと思います。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土偶を読む―130年間解かれなかった縄文神話の謎 (竹倉 史人)

2021-11-04 11:36:17 | 本と雑誌

 著者の竹倉史人さんは、私の会社関係の知人の弟さんだということもあり、本書が出版されたときから大いに気になっていました。

 従来タイプの“考古学の専門家”ではない立場から、日本古代史上の大きな謎に学際的立ち位置で相対し、「ゼロベース」からの発想で提示した大胆な仮説を丹念に検証していくチャレンジングな姿勢はとても魅力的だと思います。

 竹倉さんの仮説はこうです。

(p58より引用) 私が直感していたことは、「土偶と植物とは関係がありそうだ」という抽象的なレベルの話ではない。もっと直接的で具体的な仮説が私の頭の中を駆け巡っていた。それは、「土偶は当時の縄文人が食べていた植物をかたどったフィギュアである」というものだ。
 土偶の姿が「いびつ」なものに見えるのは、勝手に私たちが土偶=人体像であると思い込んでいるからではないのか。 いびつなのは土偶のかたちではなく、われわれの認知の方なのではないか。

 こういう「一歩も二歩も踏み込んだ具体的仮説の提示」は潔くて気持ちがいいですね。

 そして、竹倉さんは、この仮説を、様々な種類の土偶を取り上げては具体的に検証していきます。

 その検証のプロセスは地道であり緻密です。
 まずは、基本仮説を思索の起点として「具体的なモデルの対象物(堅果類・貝類等)」を見つけ出し、それと土偶の形状との類似点、土偶の発見場所と対象物の存在場所との近接度等を丹念に確認していくのです。単一の根拠であれば、モノによっては少々強引な我田引水的根拠づけだと感じるところがあったとしても、多角的な切り口から複数の論拠を重ね合わせていくと、その仮説の正当性は確実に高まっていきます。

 また、実証プロセスの基礎とした「イコノロジー(図像解釈学)」という考え方にも興味深いものがありました。
 縄文期の人間も現代人も「図像」から受ける印象には大きな変わりがないというのも、さもありなんと思いますね。一見して“似ていると感じるものは(時を隔ててみても)やはり似ている(同じ)”ということです。

 さらに、竹倉さんは、仮設の設定・検証にあたって「狭義の考古学」の成果や思考スタイルにこだわることなく、他の学問領域の視点を学際的に取り込んで思索を進めていきました。

(p246より引用) われわれ現代人は自然科学的な分類体系に基づき、「人間」と「植物」を断絶したまったく異なる種として表象する。しかし、アイヌのようなアニミズム的な世界観が優勢である文化においては、人間、動植物、自然物、道具類も含め、精霊が宿りうるかたちあるものが連続的な「生命体」として表象される。

 これは、アイヌのアニミズムを基調とした植物の認知方法からの知見です。

 さて、本書、これまで謎であり誰もトータル的な解釈を成し得ていなかった「土偶のモチーフ」を顕かにしようとした竹倉さんの立論過程と結果を綴った力作です。
 その仮説検証のプロセスは、あたかもライトタッチの推理小説を読み進めていくようなワクワク感に溢れていました。謎解きのステップが論理的に明快で小気味良いので、読んでいても楽しいですね。

 そして、その知的探訪の楽しさとともに、読み終えて印象に残ったのは、「あとがき」に記された本書に至るまでの「竹倉説」開陳の道程でした。

(p342より引用) 私はいったい誰から「お墨付き」をもらえばよいのか?
 私が接触したアカデミズムやメディアの関係者たちは「土偶=考古学」と頭から信じ込んでいるようで、みな口を揃えて「考古学者のお墨付きがなければあなたの研究を公にすることはできません」と繰り返すばかりであった。
 仕方ない。私は一部の縄文研究者たちにアポを取り、彼らに自分の研究成果を見てもらうことにした。ところがこの方策は事態をさらに面倒なものにした。誠実な対応をしてくれたのはごくわずかで、彼らの大半は私の研究成果にはコメントしようとはせず、そればかりか「われわれ考古学の専門家を差し置いて、勝手に土偶について云々されたら困る」というギャグのような反応を返してきたのである。挙げ句の果てには、私の研究成果が世に出ないように画策する者まで現れる始末だった。

 今、本書は、竹倉さんとそのサポーターにみなさんの努力によって、講演会、出版というステップを経て大きな話題となっています。

 「土偶のモチーフの解明」で、旧態依然とした学問の閉鎖空間に大きな風穴を開けた竹倉説。本書の中でも記されていますが、今回の成果に続く「土偶の用途論」での竹倉さんの“次なる謎解き”、これもまたとても楽しみでますます期待が高まりますね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕戦場のピアニスト

2021-11-03 08:19:25 | 映画

 
 ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンによる原作を映画化した作品です。
 
 舞台が、第二次世界大戦下ドイツ軍が侵攻していたポーランドですから、ドイツ兵によるユダヤ人への残虐行為等ある程度のプロットは想定内です。
 その上でのこの作品の印象ですが、とても上質で素晴らしい出来栄えだと思います。
 
 映画のひとつの山場は、シュピルマンがワルシャワの廃屋でドイツ軍将校ヴィルム・ホーゼンフェルト大尉に命を救われるシーンですが、これが実話だったということは、驚くべきの偶然の僥倖であり、不条理が日常化している戦場における僅かな救いだと思います。
 
 あと、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディですが、絶対29歳には見えませんね、これも驚きです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕search/サーチ

2021-11-02 12:44:20 | 映画

 
 あまり期待していなかったのですが、面白かったです。
 
 不必要に弄りまくったようなストーリー展開や派手な演出もなく、淡々と物語が進んでいくのですが、それだけにむしろリアリティは高まりました。「いくつかのSNSを辿っていくパソコンの画面遷移」で局面が展開されていく様子を表した手法も、なかなか斬新で効果的だったと思います。
 
 また、真犯人に至る “どんでん返し” も良くできていましたし、ラストも救いのある幕引きで、そういったセンスにも好感が持てました。
 
 あと、主人公を演じたジョン・チョーさんですが、どこかで観たと思っていたらスター・トレックの「ヒカル・スールー」だったんですね。(もちろん初代ではありません)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガラスの城 (松本 清張)

2021-11-01 09:24:39 | 本と雑誌

 このところ図書館で予約している本の受取タイミングはうまくいかず、また読む本が切れてしまいました。ということで、昔読んだ本を納戸の本棚から引っ張り出してきました。

 選んだのは、今から30年近く前に買った松本清張さんのミステリー小説です。
 ちょっと前にも同じような動機で「点と線」を読み返したのですが、この本もそのときと同じく、内容は全く覚えていませんでした。

 本の性格上、引用等は控えますが、まずは構成として「二人の関係者の手記」という形で物語を展開させているのはとても面白いですね。
 それぞれの人物が、身近に起こった事件を素人探偵さながらに調べていくその詳細を描いているので、その手記を読み進めている読者自身も自然と“謎解き”の主体者となってしまうわけです。さらに、その推理が“女性の視点”からというのも工夫された点でしょう。

 本作は、1960年代頭の女性雑誌に連載された作品ということもあり、物語の舞台も“昭和の大企業”に設定されていて、時代感が色濃く漂う当時のオフィス風景や社内の人間関係等の描写にも興味深いものがありました。

 昔の作品を読むと、そういった今と違う“世相”を垣間見ることができるのも楽しみのひとつになりますね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする