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推定可能

2006-07-06 23:54:42 | 本と雑誌

Sango  (ゾウの時間ネズミの時間(本川 達雄))

 この本には、学術的なものの見方や考え方を知るヒントが多く含まれています。

 本書の場合は「動物のサイズ」をキーコンセプトとして、種々の視点から生物の設計原理に関する論を進めます。
 具体的には、サイズを基礎に、さまざまな比較項目を掲げ、対象を座標上にプロットして行きます。(ここでは、「サイズ」は「体重」に置き換えられています)
 体重×標準代謝量、体重×摂食率、捕食者の体重×餌の体重、体重×移動速度、体重×運搬コスト等々・・・。
 これらを見ながら、著者はさまざまな仮説を立てるのです。

(p56より引用) いろいろな事項をサイズの関数として、体重の指数式で表しておくと、直接は測れないものも、測定できたものを組み合わせることにより、推定可能になる。
 全体のサイズが変わったら、機能や各部分のサイズがどのように変化するだろうか。この変化の様子を記述するときに、部分を全体のサイズの指数関数として近似して書き表すやり方を、アロメトリーと呼ぶ。・・・アロメトリー式を組み合わせれば、いままで気づかなかった関係が分かってくる。直接測定不可能な関係も導き出せる。

 いったん一般的な関係式が成立すれば、直接確認できないことについても「推定」できるようになります。

 また、ひとつのコンセプトに対するこだわりが、いくつもの事象の原因追求のヒントになることもあります。

 以下は、「表面積/体積」というコンセプトへのこだわりの例です。
 このこだわりが、「サイズの大きな生物に『呼吸器』が発達した原因に関する仮説」を導き出しています。

(p102より引用) サイズが小さければ、呼吸系もまた必要ない。動物は、外界から、栄養物や酸素を取り込む。これらは体の表面から入ってくるので、入る量は表面積に比例するだろう。一方、それを消費する方はというと、体の組織が使うのだから、消費量は組織量に比例し、これはまさに体積に比例する。サイズの小さいものでは〈表面積/体積〉は大きい。サイズが増えるにつれ、この比は小さくなっていく。だから、サイズの大きいものほど、需要が増える割には供給が増えないことになる。そこで酸素を取り込むために特別に表面積をふやす必要が出てくる。これが呼吸系である。

 体が大きくなると、「表面積/体積」の関係から、そのほかにもさまざまな構造上の工夫が起こります。

(p102より引用) われわれ大きい動物は、呼吸系や、それと密接に結びついた循環系という複雑な構造を進化させてきたが、これは〈表面積/体積〉問題を解決しようとした結果である。サイズが小さければ、これらはなくても間に合う。

 体の大きさが呼吸器系や循環器系発生の要因であったという考え方ですが、「そう言われればなるほど」という感じがします。
 いろいろな物事の捉え方・発想の仕方の参考になります。

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