教育関係の専門家である外山氏のエッセイ風の読み物です。
本書が書かれた当時(2000年)は、いわゆる「ゆとり教育」が流行りのころだったようです。
まず著者は、「ゆとり教育」の誤った側面、教育の放棄とも言うべき風潮を指弾します。
(p55より引用) このごろは、個性をのばすというのが教育のモットーのようになっている。学校が詰め込みをするのはよろしくない。教え込むのは誤っている、という。まるで、教えるのがいけないとことのようにきこえる。なにもしないで、ほっておけば個性が育つとでも考えているのであろうか。なにもしないでいて自然にできるのは、わるい習慣、クセであって、個性とは似ても似つかないものである。個性は教えることを通じて、おのずから生まれる個人的特質でなくてはならない。教えなくては、動物にも劣るのである。
本書で薦めている「勉強のコツ」は特段目新しいものはありません。むしろ、昨今軽んじられている「基本的な姿勢」の大切さを繰り返し説いているようです。
勉強するときは「姿勢をよくする」とか「短時間で集中する」とか、はたまた「繰り返し練習して体で覚える」といった至極当然のことです。
こういった当たり前の指摘以外にも、1・2、気になった点をご紹介します。
まずは、「セレンディピティ(偶然の発見)」についてです。
ここでのコメントは、以前このBlogでも「必然の「ひらめき」(数学的思考法(芳沢光雄))」というタイトルで書いた内容に通じるところがあります。
(p131より引用) なにもしないで、ぼんやり天井をにらんでいたら、どこからともなくすばらしい考えがまいおりてくる、というのではない。・・・
とにかく、何かを求めて一心に努力している必要がある。精神が緊張状態にあるときに、中心の問題ではなく、周辺の、あるいは予想外のところの事実、アイディアが、視野の中に飛びこんでくる。そういう意味でのインスピレーションであり、偶然の発見である。
一生懸命考え抜いているからこそ、偶然に気づくことができるのです。
あと、もうひとつは「プラシーボ効果」です。
(p171より引用) 偽薬がおこす効果、変化のことをプラシーボ効果と呼ぶ。クスリだといわれ、効くと聞かされて飲めば、小麦粉のようなものでも、いくらかはクスリのような効き目がある。昔の人も言った。信じるものは幸いなり。
これは、教育の王道である「ほめる」ことの薦めにつながります。
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