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人生ってなんだ (鴻上 尚史)

2023-07-21 12:23:17 | 本と雑誌

 少し前に、鴻上尚史さんによる「人間ってなんだ」というエッセイ集を読みました。

 鴻上さんが20年以上にわたって「週刊SPA!」に連載していたコラムから、これはというものを選りすぐって書籍化したものですが、本書は、その流れの第2作目です。今回のテーマは「人生」です。

 これまた壮大なテーマですが、鴻上さん一流の感性が数々のエピソードを通して描き出されていきます。
 とても興味深いそれらの中から、最も私の印象に残ったところをひとつ書き留めておきます。

 「「逃げる」という選択」という小文です。

(p158より引用) ここんとこ、僕が2006年に「いじめ」に関して書いた文章が激しくリツイートされています。もともとは朝日新聞の求めに応じて書いた文章で、「もし、あなたが今、いじめられていたら、とにかく逃げなさい」という内容です。

 当時報道された「いじめ事件」を契機に、鴻上さんの高校からの友人である朝日新聞記者に頼まれて書いたものとのことです。

(p159より引用) 書いた当時は、この文章に対する反発もけっこう受けました。「戦わないで逃げてどうする」というのが典型的な反論でした。「戦うことを教えないで、逃げることを勧めるなんて無責任だ」とか「逃げているだけでは、ろくな大人になれない」なんてことも言われ ました。
 でも、最近、ネットではこの文章がさかんにコピーされています。
 原因は胸潰れる、上村遼太君の悲しい事件だと思います。18歳や17歳の少年達に日常的にいじめられていた13歳の上村君のようなケースで「逃げないで戦え」なんて言える大人はいないと思います。
 できることは、戦うことでも無視することでもなく、ただ逃げるだけです。

 真の当事者や関係者ではない人間の言ほど無責任なものはありませんが、真の当事者や関係者でなくても “その人を想い助ける言葉” を発することはできます。そして、その一言で救われることも間違いなくあるのです。

 

 


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