「考えるヒント」。
私たちの世代では、非常に有名な本だと思います。この本に限らず、小林秀雄氏の著作は学生の必読書のひとつに挙げられていました。
今回読んだ本は、はるか昔、学生時代に買った文庫本です。最近のものに比較して活字が小さく、ページは乾いて茶色に変色しています。
その中に収録された「良心」というエッセイからの引用です。
(p56より引用) 考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を摑んだら離さぬという事だ。・・・だから、考えれば考えるほどわからなくなるというのも、物を合理的に究めようとする人には、極めて正常な事である。だが、これは、能率的に考えている人には異常な事だろう。
「物を考えるとは、物を摑んだら離さぬという事だ。」
「考える」ということの真剣さが伝わります。ここで考え求めているものは、すでにどこかにある「正解」ではありません。その対象自体の本質を、自分の理解として全身全霊を賭けて究めようとしているのだと思います。
情けないことですが、私の場合、それほど真摯にものごとを考え抜いたことはありませんし、そもそもそういう考える対象を意識して求めたことすらありません。
とはいえ、自分の頭で考え抜くという厳しさや苦しさは(不謹慎ないいようですが、)何か楽しそうな感じがします。
考えるヒント (文春文庫) 価格:¥ 590(税込) 発売日:2004-08 |
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