OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

国富の方法 (21世紀の国富論(原 丈人))

2007-11-01 22:57:32 | 本と雑誌

Computer_2  著者の原氏は、技術主導の将来を予測します。
 技術主導といっても「機械の方が人間に合わせる」時代をイメージしています。

 そこで重要になるのはコミュニケーション機能です。

 原氏は、現在、生活の中で必要不可欠なものになりつつあるパソコンの限界を予言します。

(p102より引用) やや大袈裟に未来を予測するなら、これから十数年のあいだにパソコンは終焉の時代を迎えるでしょう。・・・情報通信の分野で人間とのインターフェースを果たしてきたパソコンの役割は、終わろうとしているのです。

 確かにパソコンは、従来の計算機としての役割から、BlogやE-mailに代表されるコミュニケーションツールとしての位置づけに変化してきています。
 そういった用途から見ると、現在のパソコンは不十分な機能しか具備していません。たとえば、起動するにも時間がかかりますし、どこでもストレスなく使える環境も未整備です。

 そこで、原氏は、新たなコンセプトとして「PCU」なるものを提唱します。

(p102より引用) コミュニケーションに基づいた次世代のアーキテクチャ。私はこれを、PCU(パーベイシブ・ユビキタス・コミュニケーションズ)と呼んでいます。つまり、使っていることを感じさせず(パーベイシブ)、どこにでも偏在し(ユビキタス)利用できるコミュニケーション機能です。

 もうひとつ、原氏の提示する興味深いコンセプトをご紹介します。
 「ローカル・プロファイリング」という考え方です。

 これは、ワン・トゥ・ワン・マーケティングと個人情報保護の営みとを両立させる方法で、企業側から流れてくる種々の情報を、エンド・ユーザ側で保持した個人情報に基づきフィルタリングするという仕掛けです。
 企業(発信)側で流通情報を制御するのではなく、個人(受信)側で選別しようという考え方で、発想の転換という点では、一つの気づきとなりました。

 こういった技術主導の新しい事業を作り出すベーシックな仕組みとして、原氏は、「リスクキャピタル」の創設を提唱しています。

(p172より引用) リスクキャピタルという仕組みは、事業会社の投資と積極的な関与によってベンチャー企業における新技術の製品化を促すというものです。

 大きなテクノロジーリスクの存在する初期段階にある技術に対して投資を行い、投資元の事業会社と連携しつつ、新たな事業として育てあげていくというスキームです。

 新たな事業は必ずしも大企業で産み出されるとは限りません。むしろ、チャレンジングな中小企業の方が期待できます。

 「知的工業製品」を生み出すためには、個人の能力を最大限に発揮させる組織構造が求められます。具体的には、目的意識を共有したフラットな組織をイメージしているのですが、それを大企業において実現するのは困難です。

(p159より引用) 個々の構成員が所属部門だけの成功報酬といった損得勘定を乗り越え、会社全体の目的意識を共有することが重要です。ポイントは、助け合いの意識を自らの仕事に対する誇りや責任感とうまく結びつけることです。

 まさにチャレンジングな中小企業に相応しい姿です。
 ただ、これは、会社の規模の大小に関わりなく、普遍的に重要な組織の基本姿勢でもあります。

21世紀の国富論 21世紀の国富論
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2007-06-21


クチコミblogランキング TREview

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 時価会計の弊害 (21世紀の国... | トップ | 裁判官の爆笑お言葉集 (長嶺... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事