著者のケン・シーガル氏は、アップルの印象的なキャンペーンである「Think Different」に携わった有名なクリエイティブ・ディレクターです。
そのシーガル氏が、アップルの様々な経営姿勢に通底する「シンプル」という哲学を豊富な具体例を示しながら紹介していきます。
(p10より引用) アップルと仕事をしたことのある者ならば、シンプルなやり方がかならずしも一番簡単なやり方でないことを証言してくれるだろう。それはときとして、時間もお金もエネルギーも余計に要する。人を不快にすることもあるだろう。だが、たいていの場合、かなりよい結果をもたらすのだ。
本書では、10の章でアップルの「シンプル」という哲学のエッセンスを説明しています。それらの章で語られている事実やコメントの中から印象に残ったものを以下に書き留めておきます。
まず、「第1章 Think Brutal 容赦なく伝える」の中で言及されている誰しも経験のあるシーンです。
(p28より引用) たとえばクライアントから、あなたの仕事に致命的な欠点があるとうちのCEOが考えている、という話を聞かされたとしよう。実際のところCEOは、何か簡単に対処できるようなことに対してコメントしただけだったのかもしれない。だから、その話は伝えた人の解釈である可能性が高い。つまり、自分の優先課題というプリズムを通して物を見ているのだ。そこで、あなたとチームが真実を確かめないままにプロジェクトの再考を始めてしまうと、その瞬間に複雑さが入りこんできて、プロジェクトをダメにしているのだ。
アップルではこういった不明瞭さはないといいます。自分の立ち位置や目標が明確だからです。
(p29より引用) スティーブは自分が実行している素直なコミュニケーションを他人にも求めた。もってまわった言い方をする人間にはがまんできなかった。
「人の言ったことの真意をあれこれと詮索する」ことほど無駄なことはありません。詮索するぐらいなら直接確かめればいいのです。もちろん、そもそも不明瞭な話をせず、常に正直に率直に語っていれば、「詮索」の必要すらなくなるというわけです。
「シンプル」は妥協の余地のない「完全」を求めます。
(p30より引用) 一番気がかりなことは、妥協によってあなたは、自分が信じてもいないアイデアを擁護するという、ビジネス上もっともまずい立場に陥ることだ。
こういったシーンは私自身も数多く経験したことがあります。とりあえず次のステップに進ませようとか、ともかくトライヤルとしてやってみようとか・・・、こういう物事の進め方はアップルでは通用しないようです。
(p39より引用) 物事を未解決のまま残しておくと、人は先のことを考えるよりも、過去を振り返ることに多くの時間をかけてしまう。そのときに複雑さが忍びこんでくるのだ。
停滞から脱却するための「複雑さ」は確かにひとつの現実の姿ではありますが、それは目指すべき理想ではありません。
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2012-05-23 |
プライドの高い人が多いのでしょうか。プライドといっても年齢とか肩書とかに依るものじゃなくて、妥協のないプロフェッショナルとしての。
日本の企業でもプロフェッショナルの姿も明確だと多少はやりやすいかもしれません。