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毛沢東の「弁証法的発想」 (戦略の本質(野中 郁次郎 他))

2008-09-14 14:05:35 | 本と雑誌

Mou_taku_tou  私が参加しているセミナーで参考資料として配布された本です。

 先に出版されている「失敗の本質」と同様、いくつかの戦闘を材料にして、今回は、「勝利を導き出す戦略に共通性はあるのか」をテーマにその解明を試みたものです。

 まずケースとしてあげられているのが、毛沢東が率いる中国共産党軍と蒋介石の国民党軍との戦いです。
 この戦いは、「遊撃戦」という新たな戦闘概念を創出した毛沢東による「反『包囲討伐』戦」でした。

 著者は、本ケースの研究を通して、毛沢東の事象の本質把握の方法論を「弁証法」であると結論付けています。

 
(p106より引用) 例えば、攻撃と防御については、二つの視点がある。第一の見方は、攻撃とは単に攻める、防御とは単に守ることであると考え、両者は対立的なもので、相互に転換できないものと考える立場である。このような機械的な視点からでてくる主張は、「消極的防御」である。一方、弁証法的視点では、攻撃と防御は対立しながら相互に依存し、場合によっては転換できるものであると考える立場である。つまり攻撃と防御は明確に分離できないものであり、攻める時には守りが必要だし、守るときも攻めることがあり得る。一定の条件がみたされれば、攻守は相互に転化できるものなのである。このような視点から「積極的防御」が主張される。

 
 この立場では、敵を破るための戦略ステップとしての「積極的退却」というオプションも重視されます。退却と見える行動を次の攻撃の布石とするのです。

 本ケースの解説では、毛沢東の思考方法や具体的行動が細かく説明されていますが、その中で、興味をひいた「毛沢東の実戦を通した知恵を磨く方法」をご紹介します。

 
(p123より引用) 戦闘の後には、時間があればだったが、-作戦ののちには必ず、二度の会議を開いた。一度は指揮者だけのもの、もう一度は指揮者と兵士とともどものもので、そこではその戦闘または作戦の分析をおこなった。・・・そうした合同の会議では、どの兵士もどの指揮者も、完全な言論の自由をもっていた。たがいに批判してもよろしく、根本計画の各部分や、その実施された方法については批判してもよろしい。・・・そしてわれわれは、すべての封建的な悪習を根絶やしにし、軍隊を民主化し、兵士のあいだに自発的な軍規が生まれることを、ねらった。

 
 広く関係者を集め自由な意見表明により具体的反省を行なうというやり方は、失敗を形式知化し、自発的な改善を促すための効果的な方法です。
 
 

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