ジョブズが返り咲き、新たな未来を見据えたアップルは、コンピュータをコアにした音楽生態系ビジネスに乗り出していきます。その過程は、しばしばソニーと比較されます。
本書でも、そのあたりの様子については詳しく語られています。ここで登場するイオヴァインはユニバーサル傘下のレーベルのキーマンです。
(p180より引用) 「どうしてソニーがだめだったのか、私にはまったく理解できません。史上有数の失策でしょう」
とイオヴァインはいまでも首をかしげる。
「アップルの場合、社内で協力しない部門は首が飛びます。でもソニーは社内で部門同士が争っていました」
実際、ソニーはいろいろな意味でアップルの逆だった。かっこいい製品を作る消費者家電部門もあれば、ボブ・ディランなど人気アーティストを抱える音楽部門もあった。しかし、各部門が自分たちの利益を守ろうとするため、会社全体でエンドツーエンドのサービスを作れずにいた。
アップルとソニーとは、そもそもビジネススタイルが全く異なっていました。正確には、創業時とは異なる「当時の」ソニーとはといったほうがいいかもしれません。
(p193より引用) ふつう会社はそういうものだが、ソニーは共食いを心配した。デジタル化した楽曲を簡単に供給できる音楽プレーヤーと音楽サービスを作ると、レコード部門の売り上げにマイナスの影響が出るのではないかと心配したのだ。
これに対してジョブズは、“共食いを怖れるな”を事業の基本原則としている。
「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」
だから、iPoneを出せばiPodの売り上げが落ちるかもしれない、iPadを出せばノートブックの売り上げが落ちるかもしれないと思っても、ためらわずに突き進むのだ。
「競合に対抗するには、自ら競合を生み出すこと」、意識的な自己淘汰は、マーケットをリードし続けるための一つのセオリーですが、多くの企業では、ここに「成功体験の壁」が立ちはだかります。
この壁を乗り越えるには、適切なタイミングで過去を切り捨てる英断が必要になります。成功している部門が自らの手でその決断を下すのは極めて難しいでしょう。ここにおいて、強烈なリーダシップの有無が、企業の盛衰の明暗を分ける分水嶺になるのです。
個性的なリーダ・・・、逆説的な言い方になりますが、それらの人々の中では不思議なほど似通った共通項が見られます。
(p424より引用) 「顧客が望むモノを提供しろ」という人もいる。僕の考え方は違う。顧客が今後、なにを望むようになるのか、それを顧客本人よりも早くつかむのが僕らの仕事なんだ。・・・欲しいモノを見せてあげなければ、みんな、それが欲しいなんてわからないんだ。だから僕は市場調査に頼らない。歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが僕らの仕事なんだ。
ジョブズはこう語っていますが、これはまさに本田宗一郎氏の言葉と全く同じです。そして、ジョブズはそれを見事に成し遂げました。プロダクトだけでなく、新たなライフスタイルをも先導し創造したのでした。
すでに病に侵されてしたジョブズがトルコを旅行していたとき、こう閃いたのだそうです。
(p370より引用) 若い連中にとって世界はどこも同じ、そういうことなんだ。僕らが作る製品も、トルコ電話なんてものもなければ、ほかの地域と違ってトルコの若者だけが欲しがる音楽プレイヤーなんてものもない。いま、世界はひとつなんだ。
ジョブズは、「ジョブズ・ウェイ」を貫き通しました。
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