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生きる意味 (姜 尚中)

2023-08-14 11:06:42 | 本と雑誌

 

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。

 ご存じのとおり姜尚中さんは政治学者ですが、エッセイの達人でもあります。

 本書はコロナ禍が収まりきらない今日、心の安寧に誘うエッセイを採録したものです。姜さんの穏やかな言葉の中から私の心に響いたくだりを覚えとしてひとつ書き留めておきます。

 姜さんと中村哲さんとの関わりに触れた小文「『川上』に向かう生き方」より、新型コロナ感染症への対応の構えについて。
 当初医療活動で赴いたアフガンの地で、中村さんが井戸掘りや灌漑用水路の開削に邁進された理由を、姜さんはこう捉えました。

(p34より引用) やがて中村さんは悟った。自分のやっていることは「川下」で対症療法的に格闘しているだけではないかと。もっと、「川上」に目を向けなければならない。そうすれば、問題はもっとシンプルなはずだ。水があり、そこから穀物が実り、それがパンとなる。自分たちの力で耕し、育て、育てたものを食する。この最もシンプルな生きることの基本を蔑ろにしては、アフガンの再生はない。

 そして、このコロナ禍に対峙したとき、姜さんはこう思ったのです。

(p35より引用) 中村さんが生きていれば、物事の本質はシンプルであり、「川下」で迷っているから複雑に考えすぎてしまうのであって、「川上」に向かえば、病に対しても何が最も大切なことなのかがわかる、と諭すように話してくださるのではないか。

 中村哲医師。返す返すも、なんと素晴らしい方を失ってしまったのかとその理不尽さに感じ入りますね。残念の極みです。

 さて、私より10歳ほど年上の姜さんですが、本書に採録されているエッセイの中には、少し先を行く先輩として今の私にも響く心情を語ったくだりもありました。

(p125より引用) 私も古希を過ぎ、最近では身体の芯の部分に「復元力」のようなものを感じることがある。それは、私にもう少し生きなさいという目に見えない力の「恵み」のように思えてならない。コロナ禍はいつ収束するのか、その目処も立ちがたく、そしてウクライナの地での惨劇に世界が震撼させられている。そんな疾風怒濤の時代がめぐってくるとは夢にも思わなかったが、心身ともにそれに耐えられる条件が今の自分にある だけでも、感謝したい。

 翻って、私はといえば、通勤・外出の機会がめっきり減ったここ数年、体力の衰えは隠しようもなく、かといって面倒くさがりの私は取り立てて運動もしていません。こうまで熱波が続くと近所を散歩することすら無理ですね・・・。
 情けない限りですが、退職の時期も間近に迫りつつある今日、なんとかネジを巻き直さなくては。“レジリエンス(resilience)” という言葉もよく目にするようになりました。
 思うだけではなく、ともかく「行動」なのは分かっているつもりなのですが・・・。

 

 

コメント
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