立花隆さんの著作は久しぶりです。
タイトルもシンプルで直截的ですね。1971年が初版の立花さんのデビュー作とのこと。
本書を手に取ると、ある種「古典」に向き合うようなピリッとした心持ちになります。
さて、読み終えてみての素直な感想ですが、驚くべきことに、書かれている内容についていえば、その本旨は現代にもそのまま通用するものでした。
本書に採録されている「文庫版あとがき」は1990年に記されていますが、その中で立花氏自身、こう書いています。
(p241より引用) 今回、中央公論社から、これを中公文庫におさめたいとの申し出があり、有難いプロポーザルとは思ったものの、何しろ二〇年前に書いた本であるから、内容的に少し古くなってはいないかと心配だったので、あらためて初めから終りまで読み直してみた。し かし、幸いなことに、引用されているデータこそ古くなっているものの、内容的にはいささかも古くなっていないことが確認できて、安堵した。
そして、上記に記されたこの著作の1990年時点の評価は、今、2021年においても同じです。
これは、立花氏の“類まれな先見性”を証明していると同時に、半世紀経っても人間社会における根本的課題が解決していないという“社会の後進性”の表れでもあるということです。
(p172より引用) これから文明のたどるべき方向は、より複雑で、より多様なシステムを、効率とスピードを落としても安全性を重視して作っていく方向にあるのではないだろうか。 自然にとっては、人間も生物システムの一つのチャネルにすぎない。人間が自滅しても自然は困らない。自然のシステムには、いつでもそれにとって代わるべきチャネルが用意されているからである。人間は自然なしではやっていけないが、自然は人間なしでやっていけるのである。
この1971年当時の立花氏からの「警句」を、私たちは、まさに今、改めて本気で受け止めなくてはならないのです。