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非合理な決定 (経済は感情で動く― はじめての行動経済学(マッテオ・モッテルリーニ))

2009-04-12 15:11:33 | 本と雑誌

 これも最近流行の「行動経済学」の本です。
 クイズ形式で読者の選択を求めながら解説が進んでいきます。クイズに対する自分自身の答えを振り返ることによって、自分の「非合理度?」を感じながら読み進めることができます。

 本書で紹介されている身の回りでよく見られる「非合理」的な行動様式の例です。

 まずは、「選択肢が多くなると判断は混乱する」という傾向の指摘です。
 これは、昨今の政治課題の扱いにも見られていますね。

 
(p29より引用) 選択肢の数が増えるにつれて、判断を先延ばしにする傾向が強まることがわかった。判断するときの葛藤が深まると、しまいに判断力が衰えるということだ。

 
 次に、「質問が肯定型か否定型かによって異なった判断を示す」という傾向について。
 多くの人は、肯定型の問いの場合は肯定的な面に、否定型の問いの場合は否定的な面に、より注目するのだそうです。

 また、これもよく見られる「コンコルドの誤謬」「サンクコスト(効果)の過大視」という現象についても言及しています。

 
(p61より引用) 先行投資額が巨大だと、損失回避の傾向から、人は未来の予測をしばしば誤る

 
 これらのほか、非合理的行動の原因のうち代表的なものとしては、先入観や直感に基づく「思考の近道」があります。
 これについて解説した章では、以前読んだ三谷宏治氏による「観想力」という本にも登場していた「ヒューリスティック・バイアス」がとり上げられていました。

 
(p75より引用) 人が意思決定をしたり、判断を下すときには、厳密な論理で一歩一歩答えに迫るアルゴリズムとは別に、直感で素早く解に到達する方法がある。これをヒューリスティクスと言う。・・・トヴェルスキーとカーネマンは、確かな手がかりのない不確実性状況下で、人はヒューリスティクスをとりがちだが、そのために、ときに非合理的な判断と意思決定をすることを実証した。かれらは、人が合理的な判断をすることを否定したのではない。「完全合理性」の人間像を仮定した標準的な経済学の誤りを指摘したのである。

 
 ヒューリスティック・バイアスの第一の要因は「代表性」です。
 これは、典型的と思われる「ステレオタイプ(固定観念)」を判断の基準とするものです。
 こういった固定観念は、ものごとを安易かつ過度に法則化しようとします。数回同じことが起こっただけで次はこうなるだろうと推測してしまう「小数の法則」や、単に平均値にもどっただけなのに「2年目のジンクス」と言ったりする「平均値への回帰の過小評価」がこれにあたります。
 これらは、統計的サンプルが少なくて判断不可能な場合でも、ともかく一般化しようとする傾向を映しています。

 第二の要因は「利用可能性」。すなわち思いつきやすさです。
 これは、マスコミ等で大きく取り上げられることにより判断にバイアスがかかり、つい実際の生起確率より高い確率で発生すると評価してしまうものです。確率から言えば、鳥インフルエンザを気にするよりも、本当は交通事故にあわないように注意すべきなのです。

 最後に、本書で紹介されている数々の「日常の非合理」の中で、改めてなるほどと思った事例を覚えに記しておきます。
 3つの選択肢が示された場合の「妨害効果」と「誘引効果」についての指摘です。

 
(p37より引用) すでに示されている二つの選択肢のなかの、一方にきわめてよく似た選択肢が追加されると、一種の「妨害効果」が生じて、それらとはまったく異なる選択肢(二番目のケースでは五〇〇円)が選ばれる比率が高まる。一方で、新たに加わった選択肢がほかの二つのうちの一方よりはるかに劣っている場合(ここではプラスティック製のボールペン)には、追加された選択肢が「餌」になって、メタルのボールペンの魅力がぐっと上がり、それが選ばれる確率がきわめて高まるというわけだ。

 
 

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価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2008-04-17

 
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