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菊池伝説殺人事件 (内田 康夫)

2025-02-22 15:31:08 | 本と雑誌

 かなり以前に読んでいた内田康夫さん “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “シリーズ全作品制覇” にトライしてみようと思い始めました。

 この作品は「第36作目」です。今回の舞台は “菊池(熊本県)”

 「熊本」は、転勤で熊本市内に2年間住んでいて、その地の人にも土地柄にもとても良い印象を抱いていたので、かなり思い入れがあります。
 八代から天草に向けての海沿いの道や阿蘇・小国・九重の山々を巡る道は休日の家族ドライブのお気に入りコースでした。
 プライベートでは中学校の修学旅行が北九州一周だったので、そのときが熊本初見参でしたね。水前寺公園での集合写真が思い出されます。

 熊本市は、地方の中核都市としての威厳十分、重厚な黒塗りの天守の熊本城に城下町らしい街のつくり、市電が走り、大きなアーケード街に地場の老舗デパートがあって・・・、と私の出身地の岡山と結構共通点が並びます。

 本作の中にもこういうくだりがありました。

(p46より引用) 浅見は熊本ははじめてである。・・・
 夜でよく分からないが、市内を走る道路が想像以上に広い。大きな川があったり、街路樹が整備されていたり、どことなく岡山に似た印象があるのは、やはり城下町だからだろうか。

 とはいえ、本書の舞台となった “菊池” は残念ながら訪れたことはありません。

 さて、ミステリー小説ですからネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、この作品の印象です。まあ、“一族の因縁” というモチーフの扱いも淡泊で、シリーズの中では「可もなく不可もなし」といった感じですね。

 真犯人の登場が物語のかなり後になっていて唐突感が否めないというのは、内田さんの制作スタイルからいえば止む無しというところですし、そこまで話がグダグダと続くのは、光彦の推理のキレの悪さにもつながります。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら” です。

 次は、37作目の「神戸殺人事件」ですね。

 

 

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めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります (黒栁 桂子)

2025-02-19 10:18:10 | 本と雑誌

 

 いつも聴いている堀井美香さんのpodcastの番組に著者の黒栁桂子さんがゲスト出演していて本書の紹介をされていました。
 その内容がなかなか面白そうだったので、ちょっと気になって手に取ってみた次第です。

 黒栁さんは、岡崎医療刑務所勤務の管理栄養士(法務技官)で、刑務所の炊場(炊事工場)で調理員である男子受刑者と一緒に日々の給食づくりに携わっています。

 本書は、podcastでのお話のとおり、刑務所内の炊場で繰り広げられる受刑者たちとの共同作業の中での数々のエピソードをユーモラスな筆致で紹介したものです。

 数々の興味深い話題の中から、特に私の関心を惹いたくだりをひとつ書き留めておきます。
 黒栁さんの炊場での経験を通しての偽らざる思いの吐露です。

(p135より引用) 娑婆にはもっとおいしいものがある。ここを出たらいくらでも自由に食べられる。刑務所での生活なんて彼らにとっては黒歴史だろうし、ましてやムショメシなんて思い出したくもないだろう。そう思っていたけど、違うのかも・・・・・・。刑務所生活の中でも数少ないよい思い出として、彼らの印象に残るような給食を出したいと思った。

 本書の中で黒栁さん自身語られているとおり、彼女と受刑者との接点は “炊場” という限定した場だけです。それ以外の時間の彼らとは接していません。その点でいえば、彼らの一側面しか知らないわけです。とはいえ、それでも炊場での姿は紛れもなく彼らの “実相” です。

 本書での紹介のように、なかなか伺い知ることのできない “更生施設” としての刑務所の一側面を知る機会は、「刑事施設」の意義を考えるうえでもとても大切なものだと思います。

 

 

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悩みいろいろ―人生に効く物語50 (金子 勝)

2025-02-16 12:08:01 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新書の棚を眺めていて目についた本です。

 朝日新聞が出している週末別冊版「Be」の「悩みのるつぼ」というコーナーでの連載を書籍化したものとのことですが、著者(回答者)が金子勝さんということで、ちょっと気になって手に取ってみました。

 金子さんはマルクス経済学や財政学が専門の慶應義塾大学名誉教授です。
 最近もメディアやSNS上で時事問題等についても積極的に発信されていますが、その金子さんが、どういう問い(相談内容)を選び、それにどう答えているのか大いに気になります。

 また、回答にあたっては、関係書籍や落語の紹介もなされているとのこと。そのあたりも私の興味を惹きました。

 で、読み終えての感想ですが、「やはり他の人の相談に回答するのは難しいんだろうな」と改めて痛感したというところですね。

 相談されたことに回答するには、
  ①自分が一人称で体験していない事柄の背景や内容をきちんと理解し、
  ②そこでの相談者の悩みの本質を掴み、
  ③その悩みの真因を摘出して、
  ④それに対する具体的解決策を提示する
というプロセスを踏むわけですが、これらすべてのステップが、相談者の納得のいくものであることが求められます。

 正直、私には到底無理ですし、金子さんの回答の中にも「これでは相談者の腹に落ちないのでは」といったものもそこそこあったのではと推察しました。
 もちろん、「相談者が納得」できれば目的は達成されるわけですから、「私の納得」は必要条件ではありません。とはいえ、メディアに公開されたり書籍として出版されたりということになると、悩みの内容が普遍性が高まるほど “一般人” の受け止め方をある程度は意識した答えぶりも期待されそうですね。

 まあ、ともかく、こういったいわゆる「人生相談」ですが、投稿者として「他人の意見も聞いてみよう」と能動的に動いている人の方が、自らの悩みを掘り下げもせず、日々惰性で過ごしている私ごときよりは、ずっと真剣に人生に相対しているのでしょう。

 以前の私は、「こういった(プライベートな)ことを、よく他人に相談するなぁ」と思っていたのですが、どうやら、自ら顧みるべきは、むしろ「私」の方だということのようです。

 

 

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口の立つやつが勝つってことでいいのか (頭木 弘樹)

2025-02-13 10:47:26 | 本と雑誌

 

 いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の頭木弘樹さんがゲスト出演した際に紹介された本です。

 頭木さんの著作は以前にも「NHKラジオ深夜便 絶望名言」「NHKラジオ深夜便 絶望名言2」を読んだことがありますが、とても大切な視点からご自身の考え方をしっかりと開陳する姿勢が印象的でした。本書は、その頭木さんの初エッセイ集とのことで手に取ってみました。

 期待どおり数々の興味深い指摘やエピソードの紹介がありましたが、それらの中から特に私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、巻頭の「言葉にできない思いがありますか?」とタイトルされた小文から。

(p16より引用) もやもやした思いを、言語化するのは難しい。
 不可能な場合もある。
 それなのに、話し合いで解決しようとすると、言語化できることだけでの解決になってしまう。
 しかも、言葉というのは手品を仕込むことができるから、手品のうまいほうが勝ちになってしまう。 ・・・
 話し合いで解決というのは、とんでもないな、というのが小学生のときの印象だ。
 そのときから、「うまく言えない」ということが気になるようになった。うまく言えないことの中にこそ、真実があると感じるようになった。うまくしゃべれない人に、とても魅力を感じるようになった。

 私も、旗色が悪くなると言葉(理屈にもならないような理由)で相手を言い包めがちなので、かえって「ほんとはそうなんだよね」と、この感覚はよくわかります。

 そして、もうひとつ、心当たりのある状況。

(p24より引用) 思わず口にしてしまった言葉は、本心であることが多いだろう。
 しかし、100%ではない。
 私の場合のように、心にずっと秘めていたことを叫んだとしか見えないが、じつは心の中にまったくないことだった、という場合もある。

 そう、不思議なことに、やりとりのテンションが高じてくると、思ってもいないことが口から出てしまうことはあるんですね。

 別の著書「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決」で頭木さんは、 “弱いもの” “小さいもの” に思いを致すカフカを紹介していますが、本書での基本的な立ち位置はその “弱者の視座” です。

 “弱者” は他の人々からの “親切” “配慮” を受けなくては暮らしていけない。
 そういった親切を受けると、弱者は感謝するが、親切をした側の人々にはいろいろなタイプがある。中には(無意識の中で)感謝を求める人いる。もし、弱者から感謝の言葉や態度がないと、親切をした側は、かえって不快に思ってしまう。だから、(弱い立場の人は)親切を受けたら感謝しなくてはならない・・・。果たして、そうでしょうか???。

 感謝することを否定するわけではありませんが、“親切は当然、感謝は不要(感謝の気持ちを表に出さない、感謝の態度を求めない)” という世界の方が本来的には望ましいのではないかと、頭木さんは思っています。そうですね、“感謝” は決して強いるものではないでしょう。

 こういった考え方は、 “弱者の思想” ではなく “人間の理想” なのかもしれません。

 

 

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琥珀の道(アンパーロード)殺人事件 (内田 康夫)

2025-02-10 14:07:21 | 本と雑誌

 かなり以前に読んでいた内田康夫さん“浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “シリーズ全作品制覇” にトライしてみようと思い始めました。

 この作品は「第35作目」です。今回の舞台は “岩手”

 「岩手」には以前勤めていた会社の地方拠点があったので、年に2回程度は出張に行っていました。行先は盛岡で、訪問先のビルの窓から岩手山の雄姿を正面に見ることができました。プライベートでも、学生時代に平泉中尊寺や三陸海岸の浄土ヶ浜を訪れたことがあります。

 ミステリー小説ですからネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、この作品は、シリーズの中で時折見かける「内田康夫さん登場版」です。

 今回は、そこそこの場面で内田さんが絡んでいるのですが、正直、あまり好ましい印象は抱きませんでした。どうも内田さん本人が一人で悦に入っているような書きぶりで、さらにラストでダメ押しもありとなると、これはもううんざりですね。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら”です。

 次は、36作目の「菊池伝説殺人事件」ですね。

 

 

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北の狩人 (大沢 在昌)

2025-02-07 20:21:44 | 本と雑誌

 このところ気分転換に読んでいるミステリー小説は、読破にチャレンジしている内田康夫さん “浅見光彦シリーズ” に偏っているのですが、時折、以前よく読んでいた大沢在昌さんの作品の中から未読作にもトライしています。

 先日、“狩人シリーズ” の現時点での最新作「冬の狩人」を読んみて結構面白かったので、今度はこのシリーズにも手を伸ばしてみようと思いました。

 というわけで、まずはシリーズ第1作目の本書を読んでみたということです。

 やはりこの作品も、主人公をはじめ彼を取り巻く登場人物のキャラクタ設定が絶妙ですね。それぞれにエッジが効いていて絵になる面々でした。ストーリー展開の幅も、荒唐無稽とまではいかない程よい広がりをキープしています。このあたりの塩梅もいい感じです。

 ミステリーテイストのサスペンス小説ですからネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、こういう作りの作品は完全に私の好みでした。

 次は “砂の狩人” 。ちょっと変わったタイトルですが、こちらにもトライしてみましょう。

 

 

 

 

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食べてはいけない10大食品添加物 (渡辺 雄二)

2025-02-04 09:54:50 | 本と雑誌

 いつも行っている図書館の新着書の棚で目に止まった本です。

 ともかくタイトルが直截的でインパクト十分ですね。
 もちろん、どこまで事実なのか、科学ジャーナリスト渡辺雄二さんの取材内容をすべて疑うことなくして信じるというのも正しい姿勢ではないと思いますが、まずは、今後の検証を要するという前提で、気になったところをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、“添加物の定義” です。

(p152より引用)「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品 に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」(食品衛生法第4条) 

 すなわち、

(p152より引用) 添加物は、食品ではありません。食品は、炭水化物やたんぱく質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を含んでいて、私たちの体を育むものです。
 一方、添加物は食品を製造したり、保存するために使われるもので、業者にとって都合のよいものですが、消費者にはほとんどメリットはないのです。

と渡辺さんは総括しています。

 そして、添加物使用にあたってのバイブルである食品衛生法が食品行政の要であり、厚生労働省を中心とした当該法律の改正・運用/解釈により、私たちの “食の健康” 如何が左右されるというわけです。

 本書で渡辺さんが「特に避けるべき添加物」として列挙しているものを覚えに記しておきます。

  • 発色剤(亜硝酸Na(ナトリウム)):ハム・ソーセージ → 大腸がん
  • 合成甘味料(アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムK(カリウム):合成甘味料入り飲料(ジュース・缶コーヒー・ノンアルコールビール等の低カロリー・ゼロカロリー製品) → 認知症・脳卒中
  • 合成甘味料(サッカリンNa(ナトリウム)):寿司(ショウガの甘酢漬け)・歯磨き剤・ヨードうがい薬 → 発がん性
  • 合成着色料(タール色素(特に赤2)):紅ショウガ・福神漬け・菓子パン・チョコレート  → 発がん性・アレルギー
  • 防カビ剤(OPP・OPP-Na・TBZ):輸入かんきつ類  → 発がん性
  • 合成保存料(安息香酸Na):栄養ドリンク・清涼飲料  → 発がん性物質に変化
  • 酸化防止剤・漂白剤(亜硫酸塩):(輸入)ワイン・ドライフルーツ  → 頭痛・発がん性(肝臓)
  • カラメル色素:飲み物・菓子類等、多くの食品  → 発がん性
  • 改良剤(臭素酸カリウム):パン類(特に山崎製パン)  → 発がん性
  • 殺菌料(次亜塩素酸ナトリウム):魚介類・野菜の殺菌、居酒屋の天ぷら(キス等)  → 急性毒性

 渡辺さんが「危険」と説く根拠には、日本や諸外国にて実際の健康被害が発生し、その症状と添加物との因果関係が認められたものもあれば、かなり特殊な条件下の動物実験にて異常が見られた(だけ?)といったものもあります。
 その意味では、危険度の判断が分かれることもあり得ます。ただ、これらの添加物が日本で使用され続けている経緯や背景を踏まえると、渡辺さんの指摘どおり、決して “消費者優先” “健康優先” との基準で使用が認められているとは考え難いですね。

 食を扱う企業の経営姿勢や問題意識も様々ですし、通常流通している食品の中で “まったく添加物を使用していないもの” を見つけるのも容易ではありません。また、情報開示(表示)の方法が不十分で抜け穴があちこちにあるという点も否定できません。

 そういった環境の中では、要は、数ある自己の価値基準において「健康」という価値の重みをどう位置づけるかを明確にし、そのウェイトを踏まえ、入手しうる情報をもって “自分の判断で食品を選択することが重要だ” ということでしょう。

 

 

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日蓮伝説殺人事件 (内田 康夫)

2025-02-01 12:15:35 | 本と雑誌

 

 かなり以前に読んでいた内田康夫さん “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “シリーズ全作品制覇” にトライしてみようと思い始めました。

 この作品は「第34作目」です。今回の舞台は “山梨”

 「山梨」には、最近、今の会社の出張で太陽光発電設備の視察に行ってきました。
 プライベートでは、河口湖山中湖といった富士五湖あたりには家族ドライブで何度も訪れています。山中湖のほとりの「森のアルム」という可愛らしいカフェがお気に入りだったのですが、もう長い間顔を出していないですね。

 ミステリー小説ですからネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、なかなかの力作だと思います。ラストにずっと引っ張ってきた “謎解き” を残して収束させる構成も(少々強引なところもありますが、)秀逸です。

 とはいえ、本作、内田さんにしては珍しく舞台となった “山梨” にはかなり厳しい感想を開陳しています。「宝飾品業界の旧弊」にはじまり「チグハグな都市設計」「看板倒れの名物ほうとう」・・・、もちろん、物語の舞台設定上、意図的に大袈裟に描いているようでもありますが、どうやら以下のようなくだりをみると、そうとばかりは言えません。

(p491より引用) その皮肉な顔に、浅見は保守王国と言われる甲州の体質を見たような気がした。・・・どこかに浪花節めいた、しがらみの濃さを感じさせる。・・・あえて「正論」を通すことをしないのも、やはり義理人情のしがらみに自ら縛られているためなのだろう。 

という光彦の頭の中の思いは、まさに内田さんのそれなのでしょうね。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら”です。

 次は、35作目の「琥珀の道(アンパーロード)殺人事件」ですね。

 

 

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東京藝大で教わる西洋美術の見かた (基礎から身につく「大人の教養」) (佐藤 直樹)

2025-01-29 09:42:08 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで「東京藝大で教わる西洋美術の謎とき」というタイトルの本が目についたのですが、調べてみるとその本の前に同じ著者佐藤直樹さんが1冊上梓していました。

 私は “美術” 関係はまったくの素人なので、どうせなら “はじめの一歩” の本からトライしてみようと手に取ってみたのが本書です。

 入門書的な本だといっても「はじめに」によると、佐藤さん(准教授)が東京藝術大学で講義している「美術史概説」の授業をまとめたものとのこと。
 本書の冒頭、佐藤さんは “美術鑑賞への第一歩” としてその道筋をこう示しています。

(p2より引用) 時代順に作品を並べていく通史的な見方をとらない本書は、私の興味に「偏った」作品選択がなされています。バランスよく作品を知るより、個々の作品に対する具体的なアプローチを学んだほうが、実は美術鑑賞のコツを得るには手っ取り早いのです。通史を頭に入れるようなことはもうやめて、個別の作品鑑賞が全体を見通す力となることを感じてみてください。

 まずは、美的感覚に強いインパクトを与える “現物” にしっかり相対するということですね。

 ただ、このアプローチ方法は、私のような “本物のド素人” にはそれほど効果的でななかったようです。
 もちろん、それは “私自身の美術に向かう水準点” があまりに低すぎたことが原因で、本書の解説内容を徒に過小評価するものではありません。佐藤さんの指導内容を理解できたかといえばそんなに甘いものではありませんでしたが、それでも理解に至らずとも興味深く感じたところは多々ありました。
 そもそも本書は、東京藝術大学で実際に行われている講義に基づいて作られたものですから、ターゲットとなる対象者(読者)に、私はミスマッチだったということに尽きるのです。

 まあ、それでも正直な思いをいえば、超初心者も手にしうる入門編はやはり “誰でも知っている超ポピュラーな作品” を取り上げて、それを材料に専門的な知見を披瀝していただいたほうがありがたかったですね。

 そのあたりの期待もこめて、「東京藝大で教わる西洋美術の謎とき」にもトライしてみようと思います。

 

 

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おもかげ (浅田 次郎)

2025-01-26 12:09:52 | 本と雑誌
 
 いつも行っている図書館の返却本の棚で目に止まった本です。

 毎日新聞で連載された小説が単行本化されたものとのことですが、浅田次郎さんの作品を(映画化されたものではなく)「本」として読むのは久しぶりですね。「帰郷」以来だと思います。

 表紙の帯をみると、物語の主人公は「定年退職したサラリーマン」。まさに私もその時期を目前にしているということもあり手に取ってみました。
 とはいえ、舞台となった時代も含め、私は主人公そのままのような境遇でありませんから、展開されるエピソードや通底する心情に重なるところがそれほどあったわけではありませんが、あれこれと自らの思いと対比しながら読み進めると、やはりところどころ心に刺さるシーンはありましたね。
 
 さて、読み終えての印象です。

 小説なのでネタバレにならないよう簡単に感想だけ書き留めておきますが、正直、読んでいて結構 “もどかしく” 感じました。
 主人公の夢か現かといった不安定な意識のなかで多彩な人物が絡んでくるのですが、そのせいもあって、各々のエピソードに流れる時間軸が一定しないんですね。ファンタジックなストーリー展開なので、ある程度の “混乱” は意図的なものだとは思いますし、ラストになると、それがパラっと解けて最終的には上手く収束していくのですが・・・。これも、ある程度、映像化を想定しているつくりなのかもしれませんね。

 ということで、期待値が大きかった分、ちょっと物足りなさは残りました。とはいえ、私の場合、手に取る小説と言えば、“ミステリー” に偏ってしまっている今日なので、今後ともこういったテイストの作品にも意識してトライしてみたいと思います。

 
 
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昭和歌謡史 -古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで (刑部 芳則)

2025-01-22 10:05:18 | 本と雑誌

 

 いつも利用している図書館の新着本リストを見ていて、何の工夫もないベタなタイトルですが、ちょっと気になって手に取った本です。

 歳をとるにつれて、自分の好みの音楽の原点は “歌謡曲” なんだと感じることが増えましたね。もちろん、昭和歌謡が生まれた当時は私の祖父母の時代ですが、私が幼いころは昭和真っただ中、テレビの “歌番組” の最盛期でしたから、本書で語られている時代感はよくわかります。

 その中から、特に印象に残ったところをいくつか覚えとして書き留めておきます。

 まずは、「第一章 昭和歌謡の夜明け―昭和三年~一三年(一九二八~三八)」、歌謡曲黎明期の代表的作詞家西條八十の気概を紹介したくだりです。
 芸術性を追及する詩を書いていた西條は関東大震災時の避難所で大衆に支持された歌の力に感じ入ります。
 芸術路線から大衆路線に舵を切った西條の代表曲のひとつが「東京行進曲」ですが、当時この曲が流行るにつれ非難の声が上がりました。

(p25より引用) それは昭和四年八月にJOAK(東京放送局)で伊庭孝が「民衆の趣味の堕落」だと痛罵したことにはじまる。詩人の室生犀星は「こうも詩を弄んでいるものもあるかと軽蔑した」と書き、白鳥省吾は「時代相の俗悪に帰した西條八十の押しの強さに呆れざるを得ない」という。
 しかし、西條の心は揺らがなかった。彼らと西條には、大衆から支持される作品を作るか、有識者から高評価される芸術作品を作るか、という意識の差があらわれていた。

 そして、戦時下、日本の流行歌も戦意高揚という国策に沿った泥流に文字通り流されていきます。
 「第三章 暗い戦争と明るい歌謡曲――昭和一六年~二〇年(一九四一~四五)」で紹介された、「露営の歌」「若鷲の歌」等で有名な当時の代表的作曲家古関裕而にまつわるエピソードです。

(p156より引用) しかし、内務省の検閲や軍部の意向があるため、古関も作曲をする上で工夫していた。古関は「あの時代はですね…大変でした。自分達の意志ではね、どうにもならない時代でした。検閲とか軍の掟が厳しかったですからね。歌手の方達もそうだったと思いますけれど。軍の命令は絶対でした」「自分の意志は捨てて、作曲していましたよ。僕も考えましてね、依頼されたものは勇ましい本筋である行進曲風と哀調を帯びた短音階物と、二種類作って出していましたけど」と語っている。

 こういった昭和初期の歌謡史の概観に続いて、私も同時代を経験した昭和中期以降の考察に刑部さんの論は進みます。

 その中で私が最も納得感を得たのが、「第七章 歌謡曲の栄光から斜陽―昭和五〇年~六三年(一九七五~八八)」において “昭和歌謡における編曲家の役割” に言及しているところでした。

(p316より引用) 昭和歌謡史を振り返ると、ともすれば忘れられてしまうのが編曲家の存在である。編曲家の大きな仕事は前奏、間奏、後奏など、歌唱メロディーではない部分を作曲することと、全体の楽曲に使う楽器編成のアレンジである。つまり、作曲された同じ曲であっても、編曲家の匙加減で、「演歌」、歌謡曲、フォークへと変幻自在にすることができる。

 “編曲” の二大巨頭として紹介されている萩田光雄さん、船山基紀さんが手がけた渡辺真知子さんの「迷い道」、久保田早紀さんの「異邦人」、あみんの「待つわ」とかの楽曲を思うに、編曲の影響の絶大さは、まさに得心がいきますね。

 あと、コラムで紹介された面白いエピソードの中で大いにウケたのが “国家的イベントにまつわる音頭の悲劇” です。

 昭和39年(1964年)の東京オリンピックに向けて作られ、三波春夫さんが歌って大ヒットした「東京五輪音頭」、その二匹目のドジョウを狙った “音頭モノ” が次々に登場しました。橋幸夫さん、三沢あけみさんによる「宇宙博音頭」(昭和53年(1978年))、川崎英世さん、小川真由美さんの「名古屋オリンピック音頭」(昭和56年(1981年))、五木ひろしさんの「科学万博音頭」(昭和59年(1984年))、さらには原田直之さん、菊池恵子さんの「ソウルオリンピック音頭」(昭和63年(1988年))???、すべて大失敗。
 真剣に企画した関係者の方々には失礼ではありますが、あまりにも安直!、この桁外れにズレまくったセンスは超絶でしたね。

 さて本書を読んでの感想です。

 刑部さんが「はじめに」で「本書は日本史の歴史研究者が書く初の昭和歌謡史本である」と宣言しているとおり、想像していたよりもずっと密度の濃い内容でした。まあ、正直なところ “歴史研究者ならでは” という驚きまでには至らないまでも、それぞれの歌とその当時の世相との連関といった歴史的意味づけの解説は、少々我田引水的なところも含めとても興味深いものがありました。

 ちょうどNHKで「第22回紅白歌合戦(1971年)」のデジタルリマスター版を録画していたので、今度ゆっくりと観直してみましょう。
 総合指揮は藤山一郎さん、トップバッターは、白組 “また逢う日まで” 尾崎紀世彦さん、紅組 “17才” 南沙織さん、お二人とも「初出場」です。

 

 

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讃岐路殺人事件 (内田 康夫)

2025-01-19 13:06:45 | 本と雑誌

 かなり以前に読んでいた内田康夫さん“浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “シリーズ全作品制覇” にトライしてみようと思い始めました。

 この作品は「第33作目」です。今回の舞台は “高松(香川)”

 勤務していた会社の四国での主要拠点は松山(愛媛)だったので、「高松」には出張では行ったことがありません。
 プライベートでは、私の出身が瀬戸内海を挟んで対岸の県だったこともあり、幼いころに祖父母と訪れた記憶があります。行先はお決まりの屋島と栗林公園だったと記憶しています。当時は、岡山の宇野から高松まで連絡船で1時間程度でしたね。いまから50年以上前ですから当然 “瀬戸大橋” はありません。
 瀬戸大橋ができてからは、福岡に行くとき飛行機の窓から何度か見ていますが、実際に列車に乗って渡ったのは、数年前に一度あるきりですね。

 さて、この作品、ミステリー小説なのでネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、シリーズの中ではちょっと変わった部類のテイストでした。光彦の身分のあかし方も初めてのパターンでしたし、謎解きのパートナーも “ヒロイン” ではありません。
 いくつかのお決まりの作法を封印したストーリー構成でしたが、読み終わった率直な感想をいえば、そういった新たなチャレンジは成功だったように思います。久しぶりに結構楽しめました。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら”です。

 次は、34作目の「日蓮伝説殺人事件」ですね。

 

 

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今すぐ使えるかんたん いちばんやさしい ChatGPT 超入門 (リンクアップ)

2025-01-16 21:36:21 | 本と雑誌

 

 いつも利用している図書館の新着本リストで目につきました。

 今頃感はありますが、“「ChatGPT」の超素人用HowTo本” のようなのでザっと眺めておこうと手に取ったものです。

 私の現時点での “ChatGPT” の利用法は、検索ワードをいれて参考になりそうなサイトを探すかわりに、Geminiと併用しながら、知りたい内容を自然文で尋ねるといった程度です。

 本書では、その程度の使い方から「第3章 ChatGPTを使って仕事や創作の作業を効率化しよう」「第4章 ChatGPTを使って成果物や生活の質を向上させよう」といった章立てで、無料版で対応できるもう少し進んだ使い方を紹介してくれています。

 ともかく、実際に入力する「プロンプト」と、それにより出力される「回答」が具体的に示されているので、まずはすぐChatGPTを使ってみることができます。

 どうして、そういう回答が出力されるのかといったAIの原理や仕組みについては、私のような素人にとって、いくら分かりやすく?解説されたとしても絶対に理解できませんから、こういったちょっと物足りない程度の「How To本」が身の丈にあっているようです。

 この手のツールは、ともかく触ってみるのが一番なので、その点では即活用できる手ごろな入門書ですね。

 

 

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男のおばあさん ~楽しく年をとる方法~ (永 六輔)

2025-01-13 11:41:52 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の書架を眺めていて目につきました。

 永六輔さんのエッセイは、今までも「伝言」「芸人」等を読んでいますが、ほのぼのとしたユーモアと鋭いウィットとがとても楽しいですね。

 本書は、TBSのラジオ番組「永六輔の誰かとどこかで」での話題をもとに書籍化したものとのこと。お年を召してもなおてんこ盛りの “永さん節” の中から、特に私の心に響いたところを覚えとして書き留めておきます。

 まずは、永さんがラジオとの関わりを語っているくだり。
 本書で転載された「永六輔の誰かとどこかで」という番組は46年も続いた長寿番組です。永さん自身、ラジオ番組との付き合いはなんと65年にもなるそうです。

(p135より引用) 毎日やっているっていうことは、怪我をしても、入院しても、何してもやっている。・・・
 そのくらい、ラジオに毎日関わって仕事をしてきたということが、僕にはプライドなんですね。ありがたいことに、僕のプライドであると同時に、ラジオはそれができるんです、機能として。
 だったら、ラジオの仕事を選んだ以上、ラジオの周りを流れている風を、きちんと流すべきだと思うんです。

 今でも “ラジオ番組” にはパーソナリティや番組そのものの “色” や “香り” が感じられるものがいくつも残っていますね。

 当時のラジオ関係で、もうひとつ。永さんの盟友小沢昭一さんとの思い出。

(p218より引用) 小沢さんに最後に言われたのは、「ラジオをやめるな」でした。
「言ってることがわからなくても、声が出なくても、あなたがマイクの前にいるってことが伝わればいいんです。
 いいですね、ラジオをやめないで」 
 初めて、小沢さんの前で泣きました。

 そして最後に、永さんが、病院での「お見舞い」を話題に、見舞い客の “スマートな振る舞い” を紹介しているところ。

(p141より引用) ちなみに、日本一のお見舞いは、僕は、ピーコでしたね。
 時間が短い。通り過ぎて行くみたいに。
「お座りなさいよ」「じゃあ、ちょっと」とか、「お茶は」「いや、お茶なんか」、そういうやりとりもなくて、病室を通り抜けて行きながら、窓を開けて風を通して、挨拶も全部すませて、いなくなっちゃったの。
 だからって、誰もがそれがいいとは言いません。
 言わないけど、それの似合う人がいい。研ぎ澄まされたムダのない言葉遣いをふだんからしている人は、やっぱりうまい。
 ふだんが、やはり、こういうところにも出てきますね。

 “粋” ですね。ただ、これも自分と相手が似たような価値観を共有してこそでもあります。
 そういう “友” をもっていることが、また素晴らしいですね。

 

 

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横浜殺人事件 (内田 康夫)

2025-01-10 19:49:48 | 本と雑誌

 かなり以前に読んでいた内田康夫さん “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “シリーズ全作品制覇” にトライしてみようと思い始めました。

 この作品は「第31作目」です。今回の舞台は “横浜”

 「横浜」は、プライベートでは何度も訪れていますが、最初の社宅が南区にあって数年住んでいましたし、その後も中華街そばのビルでの勤務経験もあるので、私にとっては殊更馴染みのある土地柄です。
 まさに “横浜” ならではとしか言い様のない唯一無二の風情が感じられる街なんですね。

 さて、そういった異国情緒溢れる横浜にまつわるエピソードを盛り込んだこの作品、ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、今一つ私には合わなかったですね。

 ちょっと変わった “誘拐” の設定には工夫を感じましたが、このシリーズには珍しく物語の流れ自体が澱んでいました。そもそも起こった事件の必然性に納得感がなかったというのが最大の要因でしょう。加えて、ラストのキレもなく、いかにも消化不良の出来だったように思います。

 私の大好きな街のひとつである “横浜” が舞台だっただけに、何とも残念でした・・・。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら”です。

 次は、32作目の「金沢殺人事件」ですが、出張した場所絡みで一度読んでいるので、33作目の「讃岐路殺人事件」に進みましょう。

 

 

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