歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

[2013英国旅日記:10-1] the Moor ~嵐が丘~

2015年07月20日 | 英国 -england-
<2013年夏・イギリス旅日記>

 7月29日(月) 〜10日目〜



2泊したDalesgate Hotelを後に。




西ヨークシャーの「ムーア」へ、向かいました。



ムーア(moor)とは:
泥炭質の酸性土壌の原野で、ヒース(heather)などの低木や草ばかりが茂る土地のこと。
「荒れ地」とか、「荒れ野」とか、はたまた「湿原」とか「湿地」とか、訳されます。




こんな感じ。

『嵐が丘』の舞台:Haworthから程近い、“Wadsworth moor”、というところ。

見晴らしの良いところに車を停めて、ちょっと歩き廻ってみます。





まさに「嵐が丘」。

曇天と相俟って、荒涼と吹きすさぶ荒れ野原、、という感じ。




昨夜の雨の痕。




水はけが悪い泥炭質の湿地、という感じ。

そして、草。

広大な原っぱ。

見渡す限り、樹は無くて。


そして、



白い綿の花。



ぽつぽつ、点々と、辺り一面に。

荒涼としていて、物寂しいながら、幻想的な雰囲気。



辺りに人気も全然なくて、
車もほとんど通らない、電柱も電線も見当たらない、
音を立てるのは、びゅうびゅうと、うなる風ばかり。





昔からずーーーっとこの風景で、
昔からずーーっと、こんな風が吹く、こんな灰色の空の下で、
時に中世、映画で見るような恰好の騎士なんかが駆けていたり、したんだな、、、、

、などと想像してみると、不思議なタイムスリップ感に呑み込まれました。
先に訪れた廃墟の修道院と、同様に。





棄てられた柵。




花のまだ付いていない、ヒース。




赤く灼けた色の草。



はるか遠くに、風車。




そもそも、なんで「ムーア」に惹かれ、行きたかったのかというと:

現役の作家のうちで一番敬愛している文学者:梨木香歩さんが、何かの文献(たぶんエッセイ。失念。)で、
‘ムーアを歩きたいがためにトランクに長靴を詰め込み、、’ みたいなことを書いていて、、、、その内容はうろ覚えながら、そこに出てきた「ムーア」という言葉。その言葉の指し示す風景が、いったいどんなものなのやら、気になっていたのでした。
「ムーア」というその、イギリス独特の、イギリスらしい風景、とやらに。



だから、
ああ、これが、イギリスのムーアってやつか・・!と、
感無量だったのでした。

どうしても実感としてイメージしきれなかった未知なる風景に、ただ、今、立って居る、ということに。








どうやら、
ここらはもはや、どこまでも同じ風景っぽいので、ちょっと場所を変えてみたらどうだろう、と、
移動。




なだらかな坂道。





羊だけの国。




シンメトリカル羊。







草ばかりのムーア。

そして谷の川沿いに、緑がもこもこ。平らな畑。






ここは、西ヨークシャーデイルズの南端あたり、



“Holme moss”(ホルム・モス) の summit(山頂)。




細い塔あり。

ラジオのトランスミッターだそうです。




さっきのムーアよりも、緑が多め。






なだらかな曲線の丘が列なる、やわらかい風景。

これまた、イギリス独特の風景:dale(デイル)=谷です。




なだらか。
はるか峯の向こうまで、見通せます。

お、



kissing gate(キッシング・ゲート)。

遊歩道(foot-path)の入口です。
こっち側の階段とあっち側の階段が、一体となった、すこぶる機能的なデザインですね。


柵をまたいで、
ちょこっと、行ってみます。




草原。ふさふさ。

「あははは〜*あははは〜*」って、笑いながら駆け巡りたり、ときどき転げてみたりしたくなる感じです。ハタから見たら危ない感じです。





ヤナギラン。



ジギタリス(狐の手袋)。





石。



黒いナメクジ?




棄てられタイヤ。


ぴょんぴょん飛び跳ねたり、たまに寝転がって大の字になって、空を眺めたりしながら、
丘を転げ降りていきました。

が、

残した車が心配で、、、車が見えなくならないある程度まで行ったら、引き返します。




ムーア。荒れ野。
その植生から、「ヒース」と呼ぶ場合もあるらしいけど、ムーアとヒース、その違いがまだ、良く判らない、、、。

ロンドン郊外のHampstead Heath(ハムステッド・ヒース)も、そういえば、こんな感じの草原の丘が、ありました。
あそこも、とても気持ちよかった。
 (※そのハムステッド・ヒースの巻[2日目・その2]は、こちら>>☆☆☆



この、なだらかで、一面に広くて、目立ったものは何も無いし、花も少ないけど、
びゅうびゅうと、風が吹いている感じ。


一面に茂る草が、ただただ、吹かれている感じ。

余計なものが無い感じ。


「荒れ地」や「荒れ野」っていうのも、微妙にニュアンスが足りない気がするし、
ましてや「湿地」や「湿原」っていうと、全然イメージが違う。

“嵐が丘”とは、まさしく。言い得て妙だと思います。



ううむ。

好きです。







 >>続く。>>



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