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歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

ピスタチオを読む

2010年11月07日 | 読書 -books-
ひさしぶりに、思う存分、
何もしなかった!

がっつりぐだぐだ、寝てやったー!


という、だら~~んとした日曜日を過ごしました。


ひさしぶりに、

昼下がりの、金色の陽射しが射し込んで、静けさに満ちる部屋を、ぼーーっと、眺めたりして。

存分に、音楽を聴いたりして。

過ごしました。



あと、ひとつ本を読み終わりました。




梨木香歩:『ピスタチオ』(筑摩書房)


梨木さんは、今自分の“3本指”に入る、大好きな作家。

事物を捉える観察力が、現代作家の中ではずば抜けて長けていて、舌を巻きます。

見たもの・感じたことを言葉に変換するその描写力も。

使うべき言葉の選び方(また、その作業にとても神経を使っている、冷徹でストイックな姿勢)が
男勝りというか、ぜんぜん甘っちょろくなくて、
クールで、カカオ95%ばりにビターで、
そういうところにも、ビックリしながら、惹かれます。

そして、
物語の世界の、佇まいというか雰囲気、その全体が、
洗われたばかりのように さっぱりと綺麗で、
隅々の色彩までちゃんと、瑞々しく、美しくて。

特に、
自然の描写、
それと、
自然に対峙したときに受ける ある種の不思議な感覚、その描写において、
共鳴せずにいられないところも多いし、

「ああ、まさにそれ!」と、
自分が力及ばず言葉に出来ないでいたことを、パシッ!と、軽妙に言い当てていることもしばしばで、

「すごい、この人!」と
今のところ、毎度毎度、感服しています。


今回の『ピスタチオ』も、

キリッ!としていて
ファンタジックであるのに、リアルで、
とても澄んでいました。



この作家さんは、ブレが無い。


言葉を遣い、発信する という
自分の職業に ものすごく自覚的で、緊張感を持ってやっているんだなあ、っていうのが、
否応無しに、伝わって来ます。
プロフェッショナル・仕事の流儀。という感じ。



にしても、

「単行本で買う」なんて、
自分では滅多にしないことを、してしまいました。


滅多にしないことをしたのは、

待ちわびていた梨木さんの最新長編小説に、たまたま赴いた本屋で出逢ってしまった嬉しさと、
装丁(CDで言うと、ジャケット)が、美しかったから。

カバーの絵は、
小桧山聡子(こびやまさとこ)さんという方でした。
凄く心惹かれるタイプの絵です。


何かを買う時の極め手として、ジャケット(つまり、表紙のアートワーク)は、
自分にとって、絶対重要な条件です。
どんなに好きなアーティストであろうが、どんなに素敵な音楽が鳴っていようが、
“ジャケ”がどうしても気に食わなければ、買わないです。



そういえば、この前、この本と一緒に買ったのが、尾崎翠『第七官界彷徨』で、
そちらも、ジャケが極め手でしたなあ。


ああ、そうだ、
たまたまなので ビックリだったんですが、
『ピスタチオ』の主人公の名前も、翠でした。


読み終わってしまえば
「棚の肥やし」になってしまう、それは仕方ないのですが、

読み終わってからしばらくは、座右というか、目に見えるところに、立てかけて、
飾ります。


ふと目につくたびに、物語の余韻がすっと湧くのを、楽しむ。
表紙の「アート」に凝縮された紙数百ページの中に織り込まれた世界を、楽しむ。





俺の3本指の一人:梨木香歩さんは、
おすすめです。

今回の『ピスタチオ』も良かった。
けど、

やっぱり一番好きなのは:
『家守奇譚(やもりきたん)』です。

『からくりからくさ』とか『沼地のある森を抜けて』なども、好きです。(いずれも新潮文庫)

一番有名らしい、『西の魔女が死んだ』は、むしろ一番、ピンと来なかったかな。


でも、人それぞれの、趣味の問題。合う合わないの違いも。
出逢うタイミングの問題もあり。

人それぞれ。

他人のおすすめが気に入るかどうかって、難しい。

でも、たまにズドンと、来るときがありますね。


最初に手を取ったのが『西の魔女~』で、「うーん、、、だめだ」と離れて居た梨木さんに
振り戻り、そしてぞっこん、惚れ落ちたきっかけは、
友人のおすすめでした。ちなみに、『家守奇譚』でした。


第一印象で決まってしまうことって 確かに多いけど、
それを乗り越えての、
第二印象から始まる、ものすごい深い「大好き!」みたいなのって、ある。




残るもの

2010年10月24日 | 読書 -books-
久しぶりの、お休みの日曜日。



ということで

まことにお恥ずかしながら、

たぶん 一ヶ月ぶりぐらいに 部屋を掃除して、
掃除機をかけることができました。


まったく、自慢できることでは、ございません。。
とっても小さな部屋だから、やれば、ものの数分で終わる事なのにね、、。


スッキリ片付いた部屋、ったら。

まるで 別世界の 心地好さです!




前から、というか、常日頃から、
いつも心に引っ掛かっては居た懸案事項だったんだけど。

「いざ!今日こそ!」と 勇んで、一気に片付けすると、


正解ですね。


気持ちも なんとなく、おおらか~になって、
ため息すら 優雅~な感じで、
最近の焦燥感やら疲労感も、ポロッと。

今、ティーなんぞ飲んで、
どこぞの貴族のような、安穏な心地になりましてよ。


あ、

“貴族”って、でも、
「安穏」としているようで、
どこか うっすらと憂鬱で、
どことなく 色褪せた、擦れた諦め感というか、
ひと巡り済みの厭世観、みたいなものを、
表立たせない奥の基層に潜めていて、落ち着き払った構えの中に隠しているけれど
やはり薄く
哀しみのようなものとして滲み出てる

っていう、
複雑なイメージ。


っていうのを、超的確なひと言で表すと、

「アンニュイ」

まさにそれ、です。

貴族といえば、アンニュイ。です。






昨日は
スッキリと晴れた、満月だったな。

今日は、
深々と、宵からの雨の降る夜です。



夕方前の束の間、丸の内で、友人と会って、

久々に 新宿の、本屋に行ったりして。

しかし、町って、
居るだけで パワーが削げ落ちてく気が。。。

ほんとは 石けんだけ買いたかったんだけど、
目当てのものが無くて、結局石けんは買わないで、
本を、買ってしまいました。




雨がなかなか止まそうになくてアレだったのもあって、
久々に、カフェに寄りました。

で、雨宿りついでに 長居して、
買った本の一冊を、一気に読み上げました。


尾崎翠の『第七官界彷徨』(河出文庫)。




かなり、好きな感じでした。

自分が一番尊敬してやまない、川端康成に通ずる、

「日常の淡々とした流れゆく流れのままの、ほんの一部だけを、スパッと切り取った手法」、
その感じが。

それと、
回想シーンや神視点の登場人物の性格解説とかが、「無い」感じ。

周囲の人々のそれぞれの事象が並列して動いていって、絡むようで絡みすぎないリアリティがあり、
何ひとつもキレイに収束・解決したりすることなく(だって人生はその後も「解決」なんてせず、淡々と続いてゆくから)、
サッと、終わっちゃう感じ。

世界に引き込んでおいて、引き込んだまま、ザックリ突き放す感じ。


そういうのが、好きです。
そういうのに、リアルを感じます。

戦前って、そういう書き方が普通だったのかな。


最近のは、読者に優しすぎるというか、分かりやすすぎるというか、解説が多すぎる。




内容的にも、語りのテンション的にも、
自分の好みに重なるものが たくさん鏤(ちりば)められていました。

そして、
唐突な読後。

もやもやと、心に、ひっかかり、残るものがありました。

これは、「良かった」という証拠です。自分の場合は、ですけど。



感想は、まだちゃんとした言葉の形に成らないけど、
良かった。それは確かです。


表紙カバーの絵(=CD買うときのジャケットと同様、自分的には、購入か否かの決定打になるもの。)
が、また、
「これは好いぞ、」というもので。

いま改めて見てみたら、

『庭』
というタイトルの、
青木陵子さんという方の絵でした。





というわけで、

永らく放置していた「読書」というカテゴリー、

超久々に、使ってみました。


そういえば、これの前に読んだのって、何だったかな、、、

と憶い出したら、

湊かなえ『告白』



でした。

これは、最近、松たか子主演で映画にもされたやつですが、
、、良かった!

心に残るものがありました。

映画も、監督が『嫌われ松子の一生』(=映画館で初めて大笑い&大号泣してしまった衝撃の映画)の人ということなので、
うむ、間違いなさそう。、、って、とっくに公開終ってて、だいぶ出遅れておりますが、
いつか見てみたいと思います。


あ、もう一個、

桐野夏生『東京島』




これも、映画化されたやつですが。


読んでるときはまあ、エンターテインメントとして、面白く読んでた気がしますが、

読後、
「あ、そう。」という、
浅い気持ちしか残らなかったな。
なんか、、、作りものらしい都合の良い展開や環境設定とかに、
RPG(ロールプレイングゲーム)っぽさ(それは確かに面白くは、ある)なら感じたけど、
リアリティを感じられなかった。


後からネットで調べた、これの元ネタになった実話のほうが、衝撃的でした。




というわけで、

珍しく、読書記録でした。

今までで一番「凄い!」と思った川端さんのこととか、
梨木香歩さんとか、
また改めて、書きたいと思います。

たぶん、忘れかけた頃にね。



明日から、また怒濤の、現場仕事です、、、!






ばななの王国

2010年03月05日 | 読書 -books-
よしもとばななの『王国』三部作を読みました。

これ、
ばななさんの「ライフワーク長編」だそうです。

1作目は、なんと8年前。
それが、満を持して、3作同時に文庫化したばかり。

一気に読みました。



元々、学生時分から よしもとばななの小説は
だいたいは、好きで、
だいたいは、欠かさず読んできていると思います。

ただし、
いつも文庫化待ち。文庫になってから。

ちなみに エッセイのほうは、読みません。




ばななさんの小説は、

どっちかっていうと、スピリチュアル系に属すると思われます。後になるにつれ。

それに、物語の語り口も登場人物も 平易なんだけど、ちょっと変わってるので、
好き嫌いもあるだろうし、
当たり外れもあります。
全部が全部良い!って思うわけじゃありません。これはノグチの意見ね。


また、

ばななさんの小説は、どういうわけか、
読み終わってしまうと、話の内容をすっかり忘れてしまいます。
誰がどうしたこうした、っていう、話の中身:シチュエーションや、展開が、
すぽっ、と消えるんです。
登場人物の名前とかも。

読みながら頭で描き 見えていたはずのシーンも、
後になると、ほぼまったく憶い出せない。不思議と。


だけど、

読み終わった直後の

「読んで、よかった。」あるいは「うーん、違った。」

という
単純な“想い”だけが、残るのです。「読後感」というものでしょうか。


ただし、
これは、自分だけのことかもしれません。

そもそも自分の場合、本というものは、だいたい、
一回しか、通して読みません。二度三度と、同じ物を読みなおすことは滅多に無い。

そして、
ばななさんの作品は よりにもよって、
時間をかけずに さらーっと一気に読めてしまうように出来ているので、

物語の世界に浸る時間も、そのぶん、短くなるのです。

長篇の大作などを、何日もかけて、とぎれとぎれで読んでいると、
読み終わるまでの間は、しばらく、囚われますよね?
「ああ、この後どうなっちゃうんだろう、、続きが気になる、、」って。
それで、
現実生活でも なんとなくぼーっとしちゃって、浮き足立つくらい、
その世界に浸り切ってしまう。特に自分は、そう。


ばななさんの場合は、だから、
その「溜め期間」がほとんど無いわけので、
だからかもしれない、
すっぽり忘れてしまうのは。


でも、だからって、
ダメってわけじゃないんですよ。

だいたい、「よかった。」が、残るんです。

そして
「うーーん、違った。」も、たまにあるけど。




で、
今回、新しく出た、『王国』三部作。

上述の通り、延々と”文庫化待ち”をしていたので、
第一部の単行本が世に出た 平成14年から、
第二部、第三部と出ているのを尻目に、
全然、読んでなかった。

「なんで『王国』だけ、いつまで経っても文庫にならないんだろう、、」と、
待たされ待たされ、

ここまで来て、

忘れた頃に、

やっと 出逢えたわけでした。

それもまあ、
ものの2日で、一気読み。
(合計すると、12時間にも満たないんじゃないだろうか。)



それで、
さっき僭越ながら「当たり外れがある」って申しましたが、


この『王国』は、


大当たりでした!


野口的には、ですが。

そして今回は珍しく、かなり内容もちゃんと覚えてます!登場人物の名前も。
長編だったせいもあると思うけど。読み上がり直後だからってのもあるけど。


ちょっとだけざっくり、話のさわりだけを言うと、

山で 魔女的なおばあちゃんと暮らしていた雫石(しずくいし)っていう女子が(変すぎる名前です)
あるきっかけで 都会に降りて来るんですが。


山での生活の感覚とか

自然との付き合いかたとか

モノとの付き合い方とか

あと
現代の都会の生活で「ん?」って首を傾げる点だとか

随所に出て来る スピリチュアルっぽい台詞なども

結構 高確率で「あー、わかる!」っていう感じで、
入って来たんです。

このブログでも書いているような想いと 合致するようなことがあったりして。

今までのばなな作品の中で、一番自分に近づいてくれたものだった気がします。
(なんか、上から目線的な言い方ですが)


例えば、
一応 “恋愛関係”を軸に語られたフレーズでありながら、
でもそうじゃない、仕事の関係、あるいは友人関係とかにも 当てはまるような
ハッとする名言があったりとかで、

とにかく、

“今の自分”に すんなりフィットするキーフレーズだらけだったのです。
(この、“今の自分”っていうのが、たぶん重要。8年前じゃ、まだまだだったはず。)

それで、
読みながらもう、
「これは、私のための物語だ。」なんて、何度も、うっかり、思い込めたほど。
「ばななさん、よくやった。」って、なんでか上から目線。


なんせね、
「庭」や「山」や「都市への違和感」なんかが出て来るんですもの!





人との出会いが一期一会であるように
『本との出会いも一期一会』と言いますが。

ほんとに、そうですね。

その瞬間だからこそ出逢えた ということに、
すでに意味がある。


たまたまその日、ちょっとお金もあって、
気持ちも、新しいことを求めて、上昇気味で、
でもたしか本当は、全然別の本を探しに 本屋に入ったはずだったんだけど、

向こう(本)も たまたま
新しく刊行されたばかりで 店先に広くどどーんと並んでたから、


運良く、ばったり 出逢えた。

「今の自分にぴったりだ、これ!」
っていう、絶妙なタイミングで。

たぶん
このタイミングを逃すと、どんな良作でもしっくり来ないっていう、
残念な出会いに終わってしまう場合もあるから、


まったく、ラッキーでした。
すれちがいにならなくて、よかった。


何か 答えが欲しいときは

外の世界に ちゃんと体を向けて
「自分はこういうものを望んでいる」という意思の目を光らせて、
能動的に 動けば動くほど、

ちゃんと答えは、返って来たりするもんだ。

スピリチュアルだね。





そして素敵なポイントがもう一点。

この『王国』の三部作は、全部足しても、1、048円!
良心的!


そういえばこのところ、とかく売り払う方、捨て去る方に
専念してた気がするけれど、

久しぶりに、ちゃんと“お買い求め”した本でした。

そして、良い出会いだった。
大事にしようと思います。




自然との付き合い方とか

人との付き合い方とか

仕事との付き合い方とか

都会、街との付き合い方とか

そういうものに ひとつ明るい道筋が欲しい人は、
読んでみて、損は無いと思います。下手なハウツー本とかより良い。
安いし!
野口は、おすすめします。


もちろん、趣味の違いとかあるから、私個人の意見ですが。

でも、「物語」というかたちで産み落とされたものは、
色んな普遍的なキーワードが含まれているから、

こちらにその意思さえあれば、何かを感じ取ることは出来るし、しやすいと思います。

よほどの駄作でない限り。(←辛口)





ネットで調べると あらすじとかも うっかり目に入って来てしまうので、
できれば、
本屋さんに行って、裏表紙の概要も見ないで、おそらく並んでるであろう三冊、
ぱぱっと重ねて、
一気にレジに行く事をおすすめします。



『王国 その1:アンドロメダ・ハイツ』




『王国 その2:痛み、失われたものの影、そして魔法』




『王国 その3:ひみつの花園』





そうそう、

今日は20度まで行くあたたかさでした。

突然あたたかすぎて、沈丁花だの、排気ガスだの 工事のけむりだの、
ペンキの香りだの、洗剤の芳香剤のにおいだの、
ファーストフードだの、

いろんなにおいがごっちゃになって、おかしな濃度になってた。


でも、
あたたかくって、よかった。





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